表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/111

魔術師団長は、思案する

 読みに来てくださって、ありがとうございます。


 メインストーリーですが、またもやベルリーナは出ません。メインストーリーの主役は、魔術師団長なのでは?と思い始めてきました。



  魔術師団長アルジャーノン・マクリスター side



 今回の事件の関係者一同は、現在、王城に留め置かれている。

 王兄殿下の元婚約者であり、第一王子の教師ロザンナ・アガット伯爵令嬢もまた、留め置かれている1人だ。


 ああ、家に帰りたい。姉さんの所でも、いいな~。公爵家の晩餐、旨いんだよ。むちゃくちゃ魔力が回復するし。気力だって、充実するし。姪っ子も可愛いしな。甥は、まあ、まあな~……。考えないでおこう。

 この後、報告にかこつけて、公爵家に寄ろうかな。うん、寄ろう。

 そうと決まれば、さっさと、アガット嬢の話を聞いて来るか。


 アガット嬢は、王太子妃教育を受けた女性だ。そして、その教育を受けたが故に、婚約破棄後、下手な貴族との結婚が出来なくなってしまった。

 年頃の高位貴族の大抵には婚約者がいたし、下位貴族では、彼女の知る王城についての知識を利用しようとする輩が多すぎた。かと言って、誰かの後妻にするには、王家の責任問題が有りすぎた。

 そして、本人の希望もあって彼女は文官となり、第一王子の教師となって、現在に至る。


 まあ、仕事ばかりしてた上に、貴族の次男三男なので嫁を貰い損ねてる俺や俺の友人達も、他人の事は言えないけどな。




 魔術師団の取調室の一番上等な部屋でアガット嬢の取り調べは、行われた。

 勿論、副団長と文官も同席している。そして、何故か魔術医の俺の姉リリアーナもいた。

 

「女性の取り調べなんだから、女性の捜査官が付くのが普通だけど、彼女達は忙しそうなので、私がかって出たのよ。私にも権限は、あるしね」


 まあ、死体も出たしな。隠し通路も捜査現場に加わったしな。


「ロザンナ・アガット伯爵令嬢、再度の事情聴取で申し訳ない。新しい事実が出てきたので、正直に答えて欲しい」


「何なりと、どうぞ」


「前回の取り調べでは、『ここ何年かヴィヴィアン嬢を見かけた事はなかった』と言う話だったが、『ヴィヴィアン嬢が、アガット伯爵令嬢に会いに行くと言っていた』と言う他の者の証言が出てきたんだ」


「会っておりません。あの卒業記念パーティー以降、見かけた事もありません。まあ、見かけたとしても、頭が拒否反応を起こして見えてなかったのかも知れませんが」


 ツンと頭を上げて、アガット嬢は言いきった。


「頭で思い出したが、夢の中ならどうだ?」


 アガット嬢は、訝しげな表情をして、俺を睨んだ。


「夢と言うのは、プライベートなものじゃないかしら?何故、あなたに私の夢の話をしなくてはならない……ああ、確かフィリップス殿下のご病状は『長期に渡る精神干渉による精神異常状態から来る錯乱』?だったわね

 ああ、そういう事。あの病状の発表は、てっきり醜聞を避ける為の誤魔化しかと思ってたわ」


 彼女は、「ふーん」と言って納得したかの様に、俺を見た。


「それが、ヴィヴィアンの能力だったのね?魔術師団長」


「ノーコメント。アガット嬢、捜査に協力を、お願いする」


「わかりました。でも、どうやら私も、魔術医に診てもらった方が良いのかもしれないわ。確かに1度、私の夢の中にヴィヴィアンが出てきたわ」


「アガット嬢、その内容を、お聞きしても?」


 面白い話じゃないけどと、彼女は、そう言いながら、夢の話を始めた。


 その内容は、アガット嬢が一方的にヴィヴィアン嬢に責められたと言う話だった。


「彼女の子供を返せだの、その子供に悪い事を吹き込むな、誑かすなだの。また、私の事をタチの悪い泥棒ネコだとか。

 延々、夢の中で罵られて、とんでもなく疲れる夢だったわね

 起きた時には、私、どれだけ精神的に疲れてて、こんなとんでもない夢を見たのかしらと、悩んだわよ」


 そう言って、アガット嬢は溜め息を吐いた。


「まさか、これが精神攻撃だとは、思わなかったわ。彼女が私に一体何をしたかったのか、謎だわね」


 アガット嬢は、目をすがめて、眉根を揉みながら視線を下に向けた。


 どう聞いていても、精神干渉をした側の筈のヴィヴィアン嬢の方が、錯乱しているかの様に思える。


「それにしても、魔術師団長。もう、こうなったら、私も協力を惜しまないつもりよ。まったく、フィリップス殿下はともかくどうでも良いけど、私の可愛い生徒の第一王子殿下にまで手を出すなんて、許せない!一刻も早く、犯人を探し出して下さいませね!」


 フィリップス殿下は、どうでもいいのか。ちょっと不憫な気はするが、まあ、精神干渉を受けていたにしても、他の女との間に子供を作っちゃったもんな。しょうがないか。うん、王兄殿下は放っておこう。





「で、どうだった?彼女は嘘つきだと思う?姉さん」


 アガット嬢が部屋から退出し、副団長と文官がお互いの調書を擦り合わせている間に、俺は姉に聞いてみた。


「『姉上と、お呼び』と、いつも言ってるでしょう。

 彼女、嘘は吐いてないみたいよ?ひたすら憤っていたわね。アガット嬢の最後の方の魔力と精神の乱れは、そのせいね」


 俺は相手の精神状態を何となく感じとる事が出来るが、姉は相手の精神状態と魔力の乱れを正確に感じとる事が出来る。

 こう言う時の姉は、頼れる存在だ。


 普段は、むちゃくちゃ怖いけどな!






「ところで姉さん。晩ごはん奢って?」


「は?」


「疲れたから、公爵家の美味しいご飯食べたいな」


「……お前は、早く、嫁を、お貰いっ!」




 何だかんだ言っても、姉に甘える弟な魔術師団長でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ