5歳児なので、お家に帰ります
読みに来てくださって、ありがとうございます。
今日も、今回の見処シーンを頭に浮かべて、それを励みに、話を進めて行きたいと思います。
いまいち釈然としない部長が、魔力を『ネコてるてるぼうず』に詰め込んで完成させた後、私のお迎えがやって来た。父上である。
「さあ、家に帰るぞ、ベルリーナ」
抱っこしようとした父上の手から、私は何とか逃れることに成功した。何故、5歳にもなって、抱っこされてお家に帰らねばならないのか。
「父上、抱っこは不要です。ベルリーナは5歳の淑女ですから」
ふんすふんす。ちゃんと、歩けますからね。朝の二の舞は、ごめんです。
ショックを受けている父上を尻目に、私は叔父上を見た。
「叔父上、ライ殿下に、私の代わりになる護衛を付けるということでしたが、その人達は、どうなってます?」
叔父上は、部長の後ろ襟を引っ付かんで私の方に差し出した。
「これだ。人員が中々用意できなくて困っていたが、丁度よく暇そうだし、こき使ってしまおう。魔力だけは、俺と同等だ」
「アルジャーノンは、いつも、親友への扱いが酷いよね。横暴だし。義兄のイースタン公爵に似たんじゃないの?でも、まあ、今は暇だから、いいよ。殿下に張り付いてれば、いいんだよね?
殿下の『てるてるぼうず』をじっくり観察する事にするよ」
「義理の兄なんだから、似るわけがないだろう?とんでもない」
これだから、とか何とか言いながら、叔父上は、部長をライ殿下に張り付けた。
父上からは、冷気を感じる。
私の魔力が漏れるのは、父上に似たのでは?髪の色も、目の色も同じだし。
大人になったら、父上の様に、美しき魔王になって、一睨みで敵をやっつけるのだ!えい!
「どうしたのだ?帰るのが嫌なのか?ベル。やはり、私と一緒に王城で暮らして「家に連れて帰ります」」
殿下、ちっ!て言っては、いけません。
父上も、殿下が風邪を引いてしまいますので、冷気を抑えて抑えて。
私は、父上の脚を軽くテシテシ叩いて気を落ち着かせた。
「殿下は、新しい部屋の準備が出来たという事なので、今からそちらにお引っ越しですよ」
アンナが、ネトラスと一緒にテーブルの上を片付けながら言った。
そうか~。前の殿下の部屋は、隠し通路が他の人に見つかっちゃって、危険だから使えない。この部屋も、取り敢えずの緊急用のお部屋でしたね。
「ベルは、明日も登城するのだな?公爵」
「毎日、登城する事になっております。私と共に」
父上が、ニヤリと笑って殿下にそう言った。最後の言葉は、父上の威嚇ですかね?それとも、顕示欲とか言うやつ?
「ライ殿下、私は家に帰って私の庭の世話をしなければなりません。そうだ、桃やリンゴが実ったら、ライ殿下に持ってきますね」
私が殿下にそう言うと、父上の従者にこっそり紛れていた公爵家の庭師のガイが、うんうんと満面の笑みで頷いていた。
何で、あんたは、そんな所にいるの?うちの庭師だろうが。
「桃やリンゴには、季節外れだろう?それに、庭の世話は庭師がするのでは?」
「ライ殿下、家の桃とリンゴは、何故か年中、木になってます。私が毎日水をやって、歌を歌って育てているので、とっても美味しい実がなるんですよ。まあ、妙なのも出来ますが」
「……ああ、あれか」
あれですよ、殿下。手とか足とか、顔とか生えてるやつです。
それで迎えに来たのか、ガイ。私が家に居ないから、ラディッシュマンドラゴラ達が生えないんだな……。こんな所で何をしてるのかと思ったよ。
うちの公爵家の収入源だしね。死活問題かも。ライ殿下とさよならするのは、お名残惜しいが、早く帰らねば。
私は、殿下に抱きついて、頬にキスをする。照れて赤くなりながらも、殿下がキスを返してくれる。おでこをくっ付けて、2人してクスクス笑う。
「さよなら、ライ殿下。また、明日」「さよなら、ベル。また、明日」私達2人の約束は、明日に続く。
「ベルリーナお嬢様~~早く帰らないと、植物が明日の朝までに実りませんよー」
「は!ガイ、抱っこよ、抱っこして!急いで帰るわよ」
父上抱っこはダメなのに、手下(庭師)の抱っこでダッシュはOKなベルリーナ。