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昔々、ある所に魔王が住んでいました

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、ベルリーナの前世の魔王が登場です。



 近衛兵とグレゴリー兄様によって、私はライ殿下のいる部屋に連れていかれた。

 ここからは、捜査に関しては私の出る幕は無いらしい。


 部屋にいたライ殿下は、すっかり疲れていた。私だって、疲れていた。

 殿下は、ソファーの上に靴を脱いで上がり、足を抱えて座り込んだ。


「行儀、悪いのはわかっているんだが。でも、もう無理。心が、何か重い」


 私も同じ様にソファーの上で足を抱えて座り込んでみた。2人して両側から肩をくっ付けて寄りかかり、頭をコテンと傾げて繋げてみた。


「ライ殿下、私も、心が重いです」


 こうやって、2人してくっついてると、何だか安心する。


「せっかくだから、昔話をしましょうか、殿下」


「ああ、いいな。何だか、ベルの声を聴いていたいんだ」


----------------



 昔々、ある所に魔王がいました。


 魔王には、沢山の手下がいました。


 何故かというと、魔王の魔力が溢れ出すと、勝手にポンポンと産まれてしまうのでした。彼らは、魔獣と呼ばれました。彼らは、魔王の言うことは聞きましたが、好き勝手に生きて、いつも、すぐに何処かに行ってしまいました。


 時々、魔王が、何か暇になって、こんなのがいたら面白いな。と考えると、ちょっと特別な手下が産まれました。彼らは、魔物と呼ばれて、魔王の周りをうろうろして生きて、魔王の言うことを、何となく聞いていました。


 沢山の手下を産むと、魔王は忙しくなり、魔王の用事を手伝う、考える事が出来る手下の、魔族を産む事にしました。

 

 でも、魔王は孤独でした。何故なら、全ての手下は魔王から産まれた自分の分身で、誰もが、魔王に対して

「うんうん」

と言って、ひたすら魔王の言うことを聞いて、実行する事しかしてくれません。


 魔王が産まれてすぐの頃には、まだ先代魔王の分身である爺やがいました。爺やは、先代の魔王の知識や、色んな事を教えてくれました。その中には、見たこともない異世界という国の知識もありました。


 ですが、やがて爺やは、先代の残した魔力が尽きて消えかけ

 慌てた魔王は、爺やに


「どうか、私の魔力を受けて、このまま生きていてくれ」


 と、頼みました。

 ですが、爺やは首を横に振りました。


「私が貴方の魔力をもらってしまうと、先代魔王の魔族の私ではなくなり、貴方の魔族へと変わってしまいます。そうすると、私は別の私になってしまうので、嫌です」


 そう言って、静かに微笑んで消えてしまいました。


 魔王は、考えに考え、爺や程の知能のある魔人を産みました。魔人達は、知能はあるのですが、『魔王、魔王』と魔王の周りをうろうろして魔王に仕え、心は魔王に繋がってました。


 誰もが爺やの様に……魔王とは別の存在には、ならなかったのです。



----------------



「魔王は、友達が欲しかったのか?ベル」


「多分、そうだったんでしょうね、ライ殿下」


「それで、孤独な魔王はどうしたんだ?」




----------------



 魔王の心は、ドンドン沈んでいき

 毎日を、ただ生きていました。


 そんなある日の事でした。魔王の城に勇者の一行が、やって来たのです。


「悪の魔王め、お前を成敗しに来た!何処にいる!魔王め!」


 魔王城の大きな扉を大きな音を立てて開き、勇者は、魔王に言いました。


「悪、では無いけど、私が魔王です」


 どうでもよかった魔王は、このまま成敗されても良いと思い、物憂げに玉座に脚を組み、玉座の腕の片方にしなだれかかって、頬杖を付いて、言いました。


「え!?……いやいや、ムリムリ。俺、帰るわ」


「で、殿下!?いや、もとい、勇者様!?」


 真っ赤になって、慌てて帰ろうとする勇者を、必死に、白い服を来た女の人や彼の手下達が引き留めました。


「いやいや、ムリだろう?

 あんなに美人で艶っぽくて、物憂げに流し目とかされて、もう、唇なんかサクランボみたいにツヤっツヤで食べちゃいたくなるし、白くて細い首とか半分はみ出しそうにはち切れた胸とか、かぶり付きたいし、あの白い太腿に綺麗な脚!

 俺に、どうしろって言うの?

 これ以上近づいたら、ベッドに連れ込んで、押し倒して、子作りしちゃうよ!?」


 錯乱気味の勇者を、彼の手下達が抑え込み、白い服の女が、手に持っていた杖で勇者の頭を叩いた。


「魔王、あなた何て格好してるの!?ちょっとは恥ってものがあるでしょ?」


 魔王を振り返って、そう言う、その女も錯乱気味のようだ。


「ふむ、これは私の死んだ爺やが気に入っていた、SMという国の女王の衣装で、ボンテージ服と言うのだそうだ。中々、気に入っておるのだが」


「破廉恥よ!恥を知りなさい!下着より、肌が露出してるじゃない」


「人間の服装は、よくわからないが、これではダメなのか?」


 魔王は立ち上がり、勇者やその手下達に近付いて、話を振ってみた。

 男達は皆、顔を赤らめて魔王の全身を見つめ、プルプルと顔を横に振って言った。


「「「いえ、そのままで結構かと……」」」


「これだから、男は~~~!!!」


 白い服の女は、地団駄踏んで、男達をねめ付けた。


「で、子作りをしに来たのか?勇者。それは、初めての経験じゃ。ベッドに行けば良いのか?」


「いや、その、俺も初めてなので」


「手下どもよ、勇者の同行者には、ご馳走を用意して歓待しておけ。では、勇者。ベッドに行こうぞ」



----------------



「ちょっと待った~!ちょっと、ちょっと待ってベルリーナ嬢!その話は、5歳児にまずいから」


「ふむ、メナードが慌てるとは、余程まずい話とみえる」


「大丈夫です、ライ殿下。5歳が話す5歳向けの話ですから」


「その後、どうなるんだベル?」


「魔王と勇者は結婚して、勇者のお付きの一行達に魔王の角を1本与え、それを魔王討伐の証拠として国に持ち帰らせ、勇者は帰らぬ人となったと王様に報告して貰ったそうです」


「めでたしめでたしだな、ベル」


「ですが、勇者は人間ですから、やがて歳をとって死んでしまい、それを悲しんだ魔王は、子供達を残して死んでしまうんです」


 そう、私の前世の魔王は、悲しくて勇者が恋しくて死んでしまったのだ。


 歳を取った勇者は寝たきりになり、嫌な夢を見ると言い、よく眠れなくなった。

 心配した魔王は、夢の中に入って彼に寄り添う為に魔物を産み出した。彼の好きだった小鳥の姿を模して作り、魔王の髪の色と同じ闇色の羽を持つ魔物。それが、私(魔王)の、モルペウス。


「では、私はベルを残しては死ねないな」


「私もライ殿下を残して死ねないです」


「止めてください!まだ5歳なのに、死ぬ死ぬって。お二人は、アンナがお守りしますからね!」


 アンナが叫んだ。ネトラスがしくしく泣いている。


「私は、今度の事件で、自分がいつ死んでもおかしくないと言うことがわかった。アンナ、心配しなくても、私は一生懸命生きていく。まだ5歳なんだし、ベルを嫁にして、バンバン子供を作るのだ」


「まあ、ちょっと、最後の部分は大人になってからしていただくとして……。

 今回は危うい所でしたが、殿下達は、我々、近衛師団がお守りしますとも。ドンと任せてください。だから、アンナもネトラスも泣くなよ」


 エディが、自分の胸を叩きながら言った。


 殿下と私はニッコリ笑って、お互いに抱きついた。


「ライ殿下、ただいまのキスを忘れてました」

 

 そう言って、私が殿下の頬にキスをすると、殿下も赤い顔をして小さな声で「おかえり」と言って私の頬にキスをした。


 殿下は、私を残して死なないと約束してくれた。今は、ただ、それだけが嬉しい。私達は、確かに、今、ここにいるのだ。





 


 ちょっと終わりっぽくなってしまいましたが、まだまだ続くよ o(*≧∀≦)ノ


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