王城には、隠された通路が付きもの
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回もメインストーリーです。ベルリーナは、まだひたすら、お鼻をくんくんしてます。
事情聴取を終えたのか、叔父上が殿下の寝室にやって来た。
グレゴリー兄様と叔父上、副団長の3人が、私が嗅ぎ当てた事を話し合った。
私が引き続きいろんな場所をくんくんと嗅ぎ回っていると、叔父上が私に声をかけた。
「どうした?まだ何か臭うのか?」
「叔父上、この辺りから、あの死体と同じ匂いがする」
壁にある薔薇と小鳥模様の腰板の一部から、あの死体の嫌な匂いが微かに漂う。
「あー、きっと隠し通路だな、ベルリーナ。王族の部屋にある緊急時の脱出通路だ。国王から聞いて調査許可を貰ってきた。やはり、ここから入り込んでいたか」
この部屋は、代々、第一王子が使用する部屋で王城の外へと続く隠し通路があるらしい。
「こんな事件があった後だ、この隠し通路も閉鎖される事になったし、一緒に入ってみるか。通路の中でも、くんくんして良いぞ?」
また、人を犬か何かの様に言う。その言い方!だから、お嫁さんが来ないんだよ。プンプン。ええ、くんくんしますけどね。
私がくんくんしないと、わからない事もあるじゃない?
「便利だな~。なあベルリーナ、魔力を追跡する犬みたいなのって作れないのか。紙ひこうきとか言うやつみたいに。あれは、手紙を送る相手を特定出来るだろ?」
「叔父上、5歳児に頼らないで下さい。……あー、遺留品に犯人の髪の毛でもあれば、紙ひこうきにそれを貼り付けて指標に使って、なんとか?作れるかな?紙ひこうきは、重いものは運べないので」
今回は、無理だろうけど。犯人の死体が既にあるんだから、そんなもの仕込んでも、役に立たない。何処にも飛んでいかない紙ひこうきが出来るだけ。
話をしながら、叔父上は壁の腰板にある薔薇や小鳥の彫刻を幾つか順番に押し込んで、腰板の下部分を開いた。
近衛兵が先ず屈んで短い階段を降りて通路に入り、その後をランタンを持った叔父上が続く。次に私を抱っこしたグレゴリー兄様、ランタンを持った副団長、更に近衛兵。人が1人しか通れない様な通路を、6人が1列になって歩いていく。
「どうだ、ベルリーナ?何が臭う?」
「うーん、さっきの魔族の匂いと、あの死体の嫌な匂い。もう1つ、気持ち悪い位嫌な匂い。後、ちょっと古い匂いだけど、国王陛下とライ殿下の魔力にちょっと似た感じの匂いがする。王族って事かな?ちょっと淀んで病んだ感じだけど、以前は、その人がここをよく通ってた?」
何だか嫌な匂いがきつい場所がある。くんくん。この壁の中から、匂いが漏れだしているらしい。
「叔父上、ここ。ここ掘って、ここ。スゴく嫌な匂いがする」
「あー、待ってろ。ここか?あー、何か壁の一部が剥がれそうだな。暗くて見えにくいが、よく見ればここだけ新しく塗り直してある」
グレゴリー兄様の腕から乗り出した私が壁をペンペン叩くと、叔父上が腰に付けていた剣を抜き、剣の柄で壁を崩し出し、やがてボコッという音がして穴が空いた。
チッと言う舌打ちを叔父上がすると同時に、私の目がグレゴリー兄様の手に覆われた。
でも、その一瞬で見えてしまった。男が、壁に塗り込められていた。
叔父上は、副団長を殿下の寝室にとって帰し、列の一番後ろに付いていた近衛兵をその場に残した。
「出口まで行くしかないな、流石にもう何もないといいが」
叔父上がそう言うと、グレゴリー兄様は私を隠すように抱き抱え直し、私達は先を急いだ。
先頭の近衛兵が通路を終えた先のドアを開けると、物置の様な場所に出、そこを抜けると今度は草の繁った裏庭の様な所に出た。
「ああ、ここに出るのか」
私達が出てきたのは、城の壁と背の高い細長い塔に隣接する物置小屋だった。叔父上は、ここが何処なのか、わかっているらしい。
「次のヒントは、この塔に住んでいる人物だな」
塔の入り口には、二人の衛兵が立っていた。
時々、近衛兵の存在を忘れそうです。
魔術師団副団長も、影が薄いです。彼は、普段から影が薄いようです。前回から出てきているのに、一度も台詞のない程の影の薄さ。作者でさえ存在を忘れる程です。ゴメン!