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第一王子の夢の中にいた何か

 読みに来てくださって、ありがとうございます。


 メインストーリー?進行させます。(私にとっては、いつものわちゃわちゃコメディがメインですが)



 私達の昼食後、魔術医の私のお母様が再びライ殿下を診察に来た。魔術医の仕事には、人の体内の魔力に関する治療以外に、人の心のケアも含まれるんだって。

 お母様の許可が出た所で、いよいよ、殿下に昨夜起こった事件についての事情聴取が行われる事になった。


「じゃあ後でね、ベル。行ってきますのキスは、ない?」


「今はムリですが、ただいまのキスなら出来るかも知れませんよ」


 不安そうだけど、空元気を出してがんばって私に笑いかける殿下を見ると、それ位しても良いかも?という気がする。


 事情聴取に当たって、魔術師団長の叔父上と何人かがやって来た。私は、叔父上と一緒にやって来た魔術師団副団長に部屋から連れ出された。

 部屋の外には、私の父上の従兄弟のグレゴリー兄様が待っていた。彼は、魔族や魔物の研究家で魔術学院の研究室に勤めている。


「やあ、久しぶりだね。私の可愛い妹弟子」


 実は、私とグレゴリー兄様は、私の曾祖父--グレゴリー兄様にとっては祖父である--魔族・魔物研究の第一人者ミルティア前侯爵の弟子なのだ。


「グレゴリー兄様は、どうしてここにいるの?」


 私はグレゴリー兄様に手を引かれ、魔術師団副団長と3人で一緒に廊下を歩いた。


「昨夜の第一王子殿下に起こった事件の遺留品について、調査するように呼び出されたんだ。

 そう言えば、ベルリーナは、その第一王子殿下と婚約したんだってね、おめでとう」


「ありがとう、グレゴリー兄様。でも、ひいお祖父様は、どうしたの?いつもなら、こんな時は喜び勇んで飛び込んでくるのに」


「先日、町で魔族の遺留品が見つかったので、お祖父様は張り切って引き取りに行ったんだが、ぎっくり腰になってしまってね」


「そんなに重かったの?」


「いや、珍しい物だったんで、思わず小躍りして、腰に来たんだそうだ。まったく、小さな箱を握りしめ担架に乗せられてお祖父様が帰ってきた時は、何事かと思ったよ」


 ダメダメですわね、ひいお祖父様。


「ところで、私達、何処に向かっているの?グレゴリー兄様?」


「殿下の寝室だ。さあ、ここが事件のあった部屋だよ」


 グレゴリー兄様がそう言うと共に、副団長がドアを開けてくれた。


「ここが、ライ殿下の寝室なのね!ライ殿下の良い匂いがする!」


 私が部屋の中に入るなり、部屋の匂いをくんくんと嗅いで嬉しそうにそう言うと、副団長がおののいた顔をして、一歩後ずさった。

 何か、失礼だわ、副団長って。


「相変わらずだね、ベルリーナ。ああ、スレイン魔術師副団長、彼女は、魔力や人間の本質を匂いで感じるんだ。魔力が強い人には、時々そんな人がいるんだよ」


 うちの一族には、私みたいに魔力の匂いに敏感な者が、珠に生まれるらしいです。

 前世、魔王だった時からそうだったので、私がもっと小さかった頃は、他の人も皆、そうなのかと思ってました。

 因みに、私と戦った勇者もとても良い匂いでした。そう言えば、彼もまた匂いに敏感でしたね。


 ベッドの天蓋を支える柱からぶら下がる焦げてボロボロになり千切れかけた恐らく紫だったリボンに、白っぽい布が引っ掛かっている。

 てるてるぼうずのベラの残骸。私とライ殿下の楽しかった昨日の欠片。


「他には、どんな匂いがするんだい、ベルリーナ?」


「アンナとネトラスの匂い。結構良い匂いなの、私は2人とも好きよ。そして、腐ってどろどろした酷く嫌な匂い!あの黒い布の下からする!……あれは、小さな鳥籠?ランプ?微かに魔族の匂いがするわ、グレゴリー兄様!」


 グレゴリー兄様に手を繋がれたまま、私達は鳥籠だかランプに出来る限り近づいた。

 ランプだった。だが、おそらく、用途は限りなく鳥籠に近い。魔族を閉じ込めておく物だ。


「グレゴリー兄様、ランプ?に魔石の粉がこびり付いてる。これはおそらく、ここには……魔族が閉じ込められていた?」


 その場にいた全員が、ビックリして私とそのランプを見た。


「ベルリーナ、何の魔族だったか、わかるかい?」


「このランプの大きさからすると、妖魔?かしら?どう?グレゴリー兄様?」


「多分、そうだね。魔道具にはそこまで詳しくないけど、このランプの様な物が、何かを小さくして閉じ込める能力を持ってないのなら、おそらく、妖魔かもしれない。他には?どんな匂いがする?ベルリーナ」


「精神を操る類いの匂いがする。ライ殿下が、嫌な夢を見てよく眠れなかったって言ってたの。そうすると、夢魔の類いかな」


「インキュバス?ナイトメア?獏の類い?」


 グレゴリー兄様が、私に問いかけた。


 人の夢を食べる魔族は色々いる。だが、この魔族の匂いは、他の人が誰かに見たい夢を見せる、人に夢の中で欲望を叶える類いの匂い。


「モルペウス?かしら」


 そうだ、モルペウス。この匂いは、あの子に違いない。

 だから、あの時、私は殿下の夢の中に入れた。モルペウスが、私を夢の中に入れてくれた。そして、私の願い……ライ殿下を守る事を叶えてくれた。




 ここでのモルペウスは、ギリシャ神話のモルペウスとは違い、ベルリーナが前世で産んだ元手下です。手の平大くらいのサイズになります。

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