冷徹魔王は、娘に会いたい
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ついに、ちょこっとだけ出ていた、ベルリーナのパパのイースタン公爵、別名『冷徹魔王』の単体出演です。
イースタン公爵side
私の名前は、ハロルド・イースタン公爵。魔法省長官だ。何故か、部下達からは、冷徹魔王と呼ばれているようだ。
そして、何故か、暑い日は私の執務室に出入りする部下が多い。皆、一様に、空中を遠い目で見つめ、幸せな顔をする。
逆に、寒い日は用事があっても中々部下が来ない。イライラするが、静かで良い。
今日は、昨晩起こった第一王子襲撃事件で夜中から詰めている。事件のせいで皆が忙しく、気温に関係なく静かでありがたい。まだ事件の全容が掴めていなく、調査中なので、報告が上がってきてないのだ。
まだ5歳である私の娘まで、第一王子の為に、王城に連れて来さされた。健気な娘は、夜中なのに眠がりもせずにきちんと起きて、私と一緒に馬車に乗り登城した。
こんな夜中なのに長い距離を歩くのは可哀想だと思い、娘を抱っこして城内を歩くと、1人で歩くから大丈夫だと言う。
いくら殿下の婚約者だからと言って、こんな小さな子供を夜中に呼びつけるとは!
まあ、呼びつけたのは私の妻だが。
私の妻リリアーナは、城一番の魔術医で、美しく聡明、可愛く優しく、時には凛として厳しく素晴らしい人だ。そして、夜の寝室では……
どうも、殆ど眠ってないからか、思考が何処かに飛んでしまい勝ちだな。
茶でも飲んで、落ち着くか。
さて、私の可愛い可愛い娘のベルリーナは、殿下と一緒のベッドで一夜を明かしたらしい。まだ5歳の娘をたぶらかし、抱き合って眠るなど、いくら同じ5歳の子供だとて、許せない!私だって、ベルリーナをこの手に抱いて眠りたいんだ!……ベルリーナが風邪を引くから駄目だと皆には止められているが。
そうだ、この書類の山を速く処理して、ベルリーナの様子を見に行こう。そして、妻も誘って親子3人で昼食を食べよう。
そう考えながら、私が山の様な仕事をこなしていると、覚えのある魔力が漂って来た。
私が思わず顔を上げると
ゴンっ!
何かが私の額にぶつかった。痛い!かなり、痛い!
この魔力は、あいつだ!ガキの頃から、妻の弟と一緒に、よく阿保な事をして私をイラつかせてきた、あの、魔道具製作部長のレザリス・グローナ!
私の机の上には、紙で出来た妙な鳥の様な物が落ちている。
執務室は、ドアも、窓でさえ厳重に鍵がかかっている。一体、どんな魔法を使った?
紙の鳥もどきは、勝手に開き、1枚の手紙となった。
中には私の娘を賛美し、あまつさえ娘を自分の元に置きたいと言う、そんな阿呆な内容が書かれていた。
許せん!
もうそろそろ30歳も近いくせに、あの男は何を考えているのだ!
黙って澄ましていれば、見てくれが良いから女達からモテる様だが、やつをよく知った部下達からは『あの変態を何とかしてください!』と苦情も出ていることだし
これを機に、昔のように
お尻ペンペン、してやろう
首を洗って待っていろレザリス!
…ついでに、ベルリーナに会いに行くのも良いな…
行け行け、冷徹魔王。発進だ!
元魔王な令嬢のパパは、やっぱり、魔王でした。
暑い夏に側に1人いると、便利な人です。




