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元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る  作者: Hatsuenya


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伝説の勇者の剣は、就職活動をする

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


隠し部屋から帰って、すぐ後の話になります。



「エルディアナ~。戻ったぞ~。はい、お土産な」


 ひいお祖父様は、ひいお祖母様の執務室に来るなり、そう言って剣を二振り差し出した。


「タンディン、説明」


 ひいお祖母様は、書類から顔を上げ、ひいお祖父様を見た。


「こっちの大剣が、『伝説の勇者の剣アポカリスト』、こっちのダガーが『名無しの剣』だそうだ。隠し通路の先の隠し部屋で見つけた」


「そう、それで?」


「隠し部屋は、伝説の勇者ゴリアドスの博物館だった。彼の残した書物や魔道具、魔生物とかいう奴がいた。剣が説明をしてくれた様だが、残念ながら、私では魔力が足らなくて剣の声が聞こえなかった。詳しくは、ラインハルトかベルリーナに聞いてくれ」


 ひいお祖父様は、ライ殿下と私に丸投げした。ポイッ。


 チッ。ひいお祖父様め。


「とにかく、皆、疲れている様だから、会議室に行きましょう。メグ、お茶とお菓子を用意してちょうだい。子供達には、果実水もね」


 ひいお祖母様は、きちんと気配りが出来るから、ひいお祖父様より偉いと思う。



 会議室は子供用の椅子がないので、椅子の上にクッションを置いてもらおうとしたら、お兄様に抱っこされた。


「お兄様も、疲れているでしょう?私は、クッションの上に座るから大丈夫」


「疲れているのは、ベルリーナだろう。大活躍だったからね」


 まあ、確かに活躍しました。うん。

 周りを見回すと、ドワーフ達は、椅子の上にクッションを乗せてその上に座っており、アメリアは、いつも通りセルマンの膝の上に座らされている。


「では、ラインハルトは、ひいお祖母様の膝の上にいらっしゃい」


 ひいお祖母様は、ライ殿下を抱っこして自分の席に戻った。

 ライ殿下も、私とアメリアと同じ様に釈然としない顔になっている。

 私達は、もう5歳なので、お膝抱っこで座らされるのは、ちょっと悲しい。

 そう言う話をすると、お兄様は悲しそうな顔をした。


「急に大人になられるのは、お兄様の方こそ悲しいからね。もうちょっと、このままでいて欲しい」


 そんなものなのか。


「では、このままで話を進めよう。おそらく、今回の事を一番わかっているのは、ベルなので、ベルが説明してくれるか?」


 ライ殿下に促されて、私が状況を説明した。


「まあ、何があったかは、わかったわ。で?『アポカリスト』と『名無しの剣』、あなた達の話を、聞こうじゃないの」


 ひいお祖母様の言葉と共に、ひいお祖父様がアポカリストを持ち、もう片方の手でアポカリストの刃を軽く殴った。ゴンっ!

 ひいお祖父様にしては、軽く。


『痛っ!な、何をする。

 わ、我こそは、伝説の勇者の剣アポカリスト。手にとって、とくと見よ』


 もう、威厳も何もあったもんじゃないわよね。よく考えたら、『伝説の勇者が使ってた剣』というだけで、アポカリスト自体は、どんな能力が有るわけ?


「アポカリスト。アポカリストって、どんなことが出来るの?」


『よくぞ、聞いてくれた。ベルリーナ嬢。

 我は、とにかく丈夫、錆びない、切れ味バツグン、持った時のバランスも素晴らしく、軽くて長持ち。そして、知能が高い。

 特に、普通の剣だと魔力を流すと壊れやすくなるが、我はその点、魔力を流す事を前提に作られておる』


「どういう事?」


「ベルリーナちゃん、それはね。剣に魔力を通して戦うという、戦い方があるんだよ。例えば、剣に氷の魔力を通すと、氷の魔術を使える剣に。炎の魔力を通すと、炎の魔術を使える剣になるんだ。

 確かに、アポカリストは貴重な剣だよね」


 部長が、うんうん頷いて言った。ドワーフ達の目が爛々と輝いた。


「俺らにも、見せてくれ。ほう、これは、かなりの名剣だな。さぞかし名のある名工が打ったと見える。どうだ?イグナート」


「確かに、普通の剣として使っても、素晴らしい切れ味、バランス、重さ……は、持ち主によって変わるんだっけ?とにかく、錆が出ないのが良いよね。ジョンブル」


 ジョンブルはイグナートに、イグナートは、ひいお祖母様にアポカリストを手渡した。


「でも、残念ながら、私は剣を使わないのよ。剣を使うより、魔法を直接使った方が、私は速いもの」


 ひいお祖母様にそう言われ、アポカリストはガッカリしているよう。心なしか、剣の刃の輝きが少し曇った気がする。


「タンディンは、剣に魔力を込めるより、身体強化に魔力を全部使っているし。魔力も普通よりは多いけど、アポカリストの声が聞き取れるほどでは、ないのよね」


 確かにひいお祖母様の言う通り、ひいお祖父様にはアポカリストを使えないわね。


「ねえ、アポカリスト。王族じゃないと、駄目なのかな」


 部長が、アポカリストを手に取って眺めながら聞いた。


「いや、王族だと魔力が多い者が多いから、『王族を呼べ』と言っただけだ。何しろ、私の元々の持ち主である伝説の勇者は、平民だったしな。

 私には、身分のこだわりは、ない」


 その言葉を聞いて、部長は、ニッコリ嬉しそうに笑った。


「だったら、丁度いい奴がいるよ。常に前線で闘う魔術師団長アルジャーノン。剣に魔法を流して闘うんだけど、魔力が多すぎて剣がもたない奴。剣をしょっ中壊しては、僕の所に新しい剣を持ってきて、魔法用の剣に改造しろって煩くて。

 丁度いいから、アルジャーノンの剣になってよ。あいつなら、ベルリーナちゃんの叔父さんだし、魔力は、たっぷりあるから君と話も出来るよ」


 ああ、叔父上ね。叔父上、魔力多いもんね。


「そうね。まあ、アルジャーノンなら、アポカリストを悪用しそうにないわね。うん、良いわね。彼は今、王都にいるけど、どう?アポカリスト」


「魔術師団長ですと!?勇者にも劣らぬ職業では、ないではないか。是非、宜しくお願いする」


 部長と、ひいお祖母様の言葉に、アポカリストは前のめりに、喜び勇んで答えた。






「イグナート、俺らもいつかは、アポカリストの様な名剣を打つぞ」


「いいねージョンブル。名前は、どうする?」


「『深淵の剣』なんてどうだ?格好いいだろう」


「え~?ラインハルト殿下に持ってもらって『破邪の天使の剣』なんて、どう?ジョンブル」





 とりあえず、アポカリストの就職先は、決まったようです。さて、剣の話は、次回も引き続きます。

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