元魔王な令嬢御一行、辺境砦に辿り着く
読みに来て下さって、ありがとうございます。
そろそろ、辺境砦に到着します。
空を飛ぶイカロスの上で、私達は色んな話をした。一番前に私とライ殿下、その後ろに少し離れてアメリア(ライ殿下とアメリアがくっつくのをセルマンが嫌がったので)とアメリアを自分の足の間に座らせて後ろから支えるセルマン。
「そう言えば、町の聖女の件は、どうなってるんですの?」
アメリアが、言い出した。私達が町で会った、聖女と名乗る少女の事は、情報が少なすぎた。
「大教皇に問い合わせたが、噂しか知らないと言われた。教会の者では、ないらしい。教会も、調査中らしい」
「そう言うわけで、町の聖女の一件は、魔術師団長である叔父上に、まるっと丸投げしてきました。帰る頃には、情報も集まっていると思います」
ライ殿下の教会での調査結果の後に、私が話を繋げた。
町の事なんだから、騎士団の管轄なんだがとか何とか言いながらも、魔術に関する事でもあるので、この件については、叔父上も引き受けざるを得なかった。
まあ、何となく変な犯罪臭もするので、私達が探るよりも、大人達が探るべきだわ。
私達は、忙しいしね。
「何となく、釈然としなくて、気持ち悪いのよ」
アメリアは、そう言うが、私達には私達の、大人には大人の仕事があるのだ。彼らに任せておけば良い。がんばれ、大人。
「そう言えば、アルダンは、最後の1つのお土産を手に入れられたのかしら」
「手に入れ損ねたと言う話だったので、帯剣飾りは、私からプレゼントしておいたわ、アメリア。今回の辺境への旅では、アルダン達には、お世話になっているもの」
「何をプレゼントしたのだ?ベルリーナ」
ライ殿下が私に尋ねた。
「魔道具製作部長の助手のジョッシュさんから飾り紐の作り方を習ったので、飾り紐を作って、ジョッシュさんに手伝ってもらって、紐を花の様に結んで魔石ビーズの残りの1つを付けました」
「それは、何か効果があるんじゃないのか?」
さすが、ライ殿下。鋭いです。
「持ち主の危機に、1度だけ、光って目潰しになります」
アルダンさんが、妹さんの帯剣飾りだと言っていたので、ちょっと護身用に仕込んでみました。
「まあ、その程度なら、問題ないだろう。ムリは、するなよ。ベル」
ライ殿下は、最近、私が働き過ぎなのではないかと、心配している。そう言うライ殿下こそ、まだ5歳なのに、王太子教育だの、王妃様と一緒に孤児院の慰問だのの公務をこなしている。私より、ライ殿下の方が忙し過ぎなんじゃないのかな?大丈夫かな。ちょっと心配。
「まあ、皆、辺境に行く為に、忙しくしていたようだからな。今の内に、我の上で昼寝でもしておけ。辺境の砦に着くまでに、後、何時間か、かかる。着いたら、我が起こしてやるから安心して寝ておれ」
イカロスが、そう言ってくれた。白じいは、とっくに丸くなって眠っていた。猫は、よく眠るもんね。そう、一瞬、白じいの元の姿が見えた気がしたけど、気のせいよね。白じいは猫~白じいは猫~。
私達は、横になって、少し眠ることにした。イカロスの背中は、結構広い。私とライ殿下は手を繋いで並んで寝転がり、セルマンはアメリアに腕枕をして、抱っこして寝転んだ。
ライ殿下がセルマンの真似をして、私に腕枕をしたがったが、
「大きくなったら、腕枕してくださいね。今は、手を繋いで眠りたいです」
と言っておいた。ライ殿下の腕が痺れたら、大変だもの。大人になってからの、お楽しみよね。
クスクス笑いながら、私と殿下は顔を見合せて目を瞑り、いつしか私は眠ってしまった。耳をイカロスの身体につけると、イカロスの体温と翼を動かす音を感じた。
「おお、間もなく砦に着くようだ。皆、そろそろ起きよ。夕焼けがきれいだぞ」
寝ぼけ眼で、私がうっすら目を開けると、夕日の向こうに、町が見え、町の向こうの木々の奥にポツンと砦が見えた。
その美しさに、一気に目が覚めた。
町や砦が夕日に映えて、とても綺麗。
私はライ殿下と顔を見合せ、お互い、にっこりと微笑んだ。イカロスの上に乗り、空から見た夕日は、私達の心の中に残るだろう。また1つ、思い出が増えた。
「ああ、外の世界は、美しいのぅ」
白じいが、涙を浮かべながら、夕日を見ていた。
「空から夕日を見たんじゃから、空からの朝日も見てみたいのぅ」
「白じい、夜空もきっと、綺麗よ。一面の星の中を飛ぶイカロス」
「私は、夜の海を見てみたいな、ベル」
「夜の海は綺麗だぞ。主に亭主。頭上に星空。海の上にも星が映って見える。まるで星の海の中を飛んでいる気がするぞ」
イカロスは、1人で飛ぶことに飽き飽きしています。誰かと、思いを分かち合いたい。世界は、こんなに綺麗なんだと、一緒に語り合いたいです。




