元魔王な令嬢は、町娘になってみる
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、皆で町にくり出します。
次の日、早朝からワイバーンを空の散歩に連れ出したひいお祖母様達は、城に戻ってワイバーン達に昼寝をさせ、私達と一緒に王都の町に出掛けることになった。
今日の私は、町娘の格好です。いや、そんなにいいもんじゃあないな。町のチビッ子の服です。
短いめの緑のギンガムチェックのワンピースにエプロン、短い編み上げ長靴。髪にはバブーシュを巻いてみました。
「ベル、いつもの銀色の髪も美しいが、赤茶の髪も似合うな。どうやったんだ?
町娘の格好も、凄く可愛い。エプロンドレスのベル、やはり良いな」
「そう言うライ殿下も、何か格好良くて可愛いです」
会うなり、ライ殿下が抱きついてきた。ライ殿下は、シャツに半ズボン、短い長靴、ベストに帽子。
ライ殿下は、町の貴公子だ。格好良さと高貴なオーラが滲み出てて、町の子供に見えない。
困ったわね。
実は、昨日、バブーシュを手下にしたのだ。ワンピースと揃いの布をもらい、バブーシュを縫い、後ろに来る部分に赤茶色で蘭のはなの刺繍をした。蘭の花は、よく見ると顔のようになっている。
『お前が巻いた髪を、刺繍と同じ色にしなさい』
まあ、ちょっとお手軽な手下だけど、中々、重宝だと思う。
同じ様に、お兄様には、バンダナを。実は、こっそりニコちゃんマークが入っているのだ。
私とお兄様の銀の髪は珍しい。銀髪は、イースタン公爵家の髪の色だ。髪色を変えなければ、すぐに正体がばれてしまい、誘拐犯に狙われやすくなる。
「ライ殿下、実は、頭にこのバブーシュを巻くと髪の色が変わります。昨日、作りました。ライ殿下の分のバンダナもありますけど、使いますか?」
「茶色のバンダナだな。何色の髪に変わるんだ?」
「この刺繍の色で決まるんです濃いグレーになります」
帽子を取ったライ殿下に濃いグレーの色で刺繍をした茶色のバンダナを巻いた。帽子を被っていない町の男の子達が、よく巻いている様に頭頂部を包む巻き方だ。ライ殿下の髪は、すぐに濃いグレーに変わった。
「濃いグレーの髪の殿下も、素敵です」
「あーっ!また、ちょっと目を離した隙に、新しい手下を作ってる。見せて、見せて。うんうん、へーっ。こうなってるのか。帰ったら、早速、作ろうっと」
イチャイチャして楽しんでいた私達の目の前に、魔道具製作部長が現れた。部長は、私のバブーシュや殿下のバンダナを、触ってじっくり見た後に、ニヤッと笑って私に返した。
いつもながら、私の適当な力業魔法で作った手下を、皆が作れるように魔法陣に書き換えて、同じ手下(魔道具)を作る手腕が素晴らしい。
「これ、諜報部門が喜ぶよね」
まあ、確かに。
「僕の髪も薄紫だから、目立つんだよね~。これがあると、超便利」
いや、別に大人はいいんじゃないかな。大体、学生の頃から叔父上と一緒に町をウロウロしてたって聞いてたし、今更だと思う。
さて、お土産を買いに町に出発!ひいお祖母様とひいお祖父様は、最新流行のスイーツや評判のアルコール類。お酒や日持ちするスイーツは、持ち帰って、料理長に作り方を研究してもらうそうだ。
「辺境では、最新流行のスイーツは、手に入らないのよ。だから、たっぷり食べて帰るわ」
「酒も、同じくだな」
ひいお祖母様の言い分はもっともらしく聞こえるが、ひいお祖父様は、持って帰る酒の分量を減らさないと、ワイバーンが、運ぶのに大変そうだ。
「アルダン達は、何を買うか、もう決まっているの?」
「妹達には、最新流行の髪飾りと帯剣飾りを。弟達には、これまた流行りのリボンと本を頼まれた」
あれ?何かごっちゃになってない?
「妹達には、最新流行の髪飾りとリボン。弟達には、帯剣飾りと本では、ないのか?」
「いや、合っている。上の妹は、おしゃれが好きなんだが、下の妹は剣が好きなんだ。だから、武器を買ってきて欲しいと言われたが、武器はうちの鍛冶屋が打ってくれるしな。キレイな帯剣飾りを買ってやろうと思っている」
ライ殿下が聞くと、アルダンは、うんうんと頷きながら、腕を胸の前で組んで宙を見た。中々、良いお兄ちゃんだ。うん。
「上の弟は、綺麗なものが大好きなんだ。髪を長く伸ばしていて、いつもリボンで結っている。流行りのリボンって、どんなのかな?俺にはさっぱりわからんが、店員に聞けば、分かるだろう。下の弟は、冒険小説が好きなんだが、どんなのが流行っているんだろうか」
「冒険小説なら、ゴンザレスに聞けばいい」
真っ先に本屋が見つかった。ゴンザレスが、任せろ!と言う風に肩で風を切って、本屋に、入っていった。
「ひいお祖父様、そのお酒、全部担いで他の買い物に行くんですか?」
「まあ、これ位は何ともない。いつものことだ」
「酒屋に城まで持って来て貰えば、よいのに」
「そんな事をしたら、酒屋に筋肉が増えるだけで、わしにはいっさい筋肉が増えないからな。勿体ない」
トレーニングだったのか……。




