元魔王な令嬢は、優雅な朝を満喫する
読みに来て下さって、ありがとうございます。
ベルリーナ、絶不調です。
おはようございます。ベルリーナです。殿下の薔薇のお陰で、危機を脱して、無事に朝を迎える事が出来ました。
ライ殿下、ありがとう。そして、薔薇よ、ありがとう。
薔薇に感謝をしつつ、朝のお茶をいただきました。薔薇の花ティーです。
「ベルリーナ、今後は考え無しに、実験はするんじゃないよ」
はい、お兄様。重々承知しています。もう、本当に反省しています。うるうる。
「ところで、どうして朝から薔薇ティーなんだい。一体、どんな効用が?」
「鎮静作用です。免疫力も高めてくれるそうです」
表向きは。
朝起きたら、薔薇の花に『ちょっと昨日の花の残り香と体内で戦ってくるから、自分をお茶にして飲んでくれ』と言われましたが、お兄様には、どう説明してよいやら、わかりません~。
白じい曰く『私の体内で所有権を争っている』と言う事らしいです。
一見、優雅に、薔薇の花ティ-で1日が始まりました。
が、私の身体の中で何が行われているかは、知りたくもありません。世の中には、考えては、いけない事が、沢山ありすぎます。
「魔力風邪は、随分良くなったみたいだけど、今日1日は、安静にしておいてちょうだいね」
お母様の診察も終わり、私はもう1日ベッドの中の住人になる事が決定した。王城では、ライ殿下も魔力風邪を引いているらしい。
うちでは、私の魔力が狂ってだだ漏れて、とんでもない植物が生まれたけれど、光の魔力を持つライ殿下の場合、どうなってしまったのか、ちょっと気になる。
ライ殿下、大丈夫かな?
とりあえず、お手紙を書いて紙ひこうきを飛ばしてみた。
紙ひこうきは、私が折り終わった途端に、消えてなくなってしまった。素早すぎる。どうやら、まだ魔力暴走が止まっていないらしい。
王都内で紙ひこうきが飛んでもないスピードで飛んでいったと言う苦情が、出ないことを祈ろう。つるかめつるかめ。
荒れ狂う私の魔力は、所構わず暴れた。ガイとミルカは、かかしのセバスと共に庭にやたら生えまくる雑草を退治し、イカロスまでもが総動員されたらしい。
「頼むから、大人しくしてさっさとその風邪を治してくれ」
とうとう、イカロスからも苦情が出た。すいません~。庭の雑草達はいつもより狂暴で、魔力に満ち溢れているんだそうだ。
「うちに生えてた雑草よりも、とんでもないぞ。いっそのこと、草食魔獣を連れてきて片っ端から雑草共を喰わせて、魔獣牧場を作った方が早いかもしれん。一石二鳥じゃぞ」
いやいやいやいや、公爵家の庭で魔獣牧場とか、ちょっとダメでしょう。
ただでさえ、時々、魔境になっちゃう庭があるし、その上、魔獣まで飼いだしたら、もう、魔界では?
いや、辺境でならOK?
「こら、真剣に考えるで、ない。いくら主でも、魔獣を飼い慣らす事は、出来まい」
いや、ちょっと考えちゃっただけよ?本当に作るわけないじゃない。ウサギの魔獣牧場とか、ちょっと想像しちゃったけど。
もし私が死んじゃったら、魔獣達が暴走しちゃうわけで、そこいら一帯が廃虚と化すわよね。うん、却下。
「ちょっと病気をすると、ろくな事を考えぬな。それはそうと、主の亭主も魔力風邪だそうだな。どれ、我が、主の代わりに見舞いの品でも持っていってやろうか?」
イカロスが、自分の尻尾をパタパタして、上機嫌で言った。
悪くない提案よね。
「庭の薔薇のやつが、是非とも自分の花を持って行けとうるさいのじゃ。なんでも、主の亭主に、主の夢を届けたいらしい。そして、悪夢を祓ってくると言っておる」
魔力が荒れると、悪夢も見やすいのかな?良くわかんないけど、お見舞いにお花は、丁度いい?病人には、薔薇の花なんかの匂いのきつい花はダメだって言われるけど、今回ばかりは、仕方ないよね。
「とりあえず、亭主の様子をちょっとばかり、見てきてやる。大人しくして、待っておれ」
こうして、イカロスは薔薇の花を口に咥えて、王城まで飛んで行き、私は1人寂しくベッドの住人となった。
その頃、王城でとんでもない事が起こっているとは知らずに。
「つまんないよーつまんないよー」
「おお、主。こう言う時こそ、生き字引きたるわしの出番じゃな。良く眠れる話をしてやろう」
「え?どんなお話?わくわく」
「1代目国王のバーソロミュー1世は、3人の子を儲け、第一子のオータム-ンは、メンデュームとアンジェ、マージニア、メノーサと言う子供がおり、第二子のセンジュームには……」
「……グーっ」
白じいの知識は、多岐にわたりすぎて、時折、聞いているだけで眠ってしまう内容も多いようです。




