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元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る  作者: Hatsuenya


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元魔王な令嬢は、畑仕事にせいを出す

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 前回の翌朝、イカロスの巣穴を後にベルリーナ達は、王城に帰ってきました。



 イカロスの巣穴から帰ってきた私を待っていたのは、魔法薬材料採取係栽培部門の面々だった。

 このままでは、私が留守の間にキープしておく薬草の栽培が間に合わないので、魔法省の畑に私専用の畑を作るらしい。

 公爵邸では、朝夕に種を植え直して、更に王城でも毎日種を植えて作物を育てるのね。ちょっと大変じゃない?


 更に、「これも植えといて下さいやし」と、ガイが私に差し出したのは、人参果だった。私は、思わず何処かに投げてしまいたい気持ちを押さえて、それを受け取った。

 赤ん坊みたいで、気持ち悪いのよ、これ。

 大体、あいつは今では橘の木になった癖に、何で今さら人参果を生らすのよ。いい加減にして欲しい。


 

 王城の薬草園は、広かった。で、私の為に『用意したんだよー』と、魔法薬剤師長のお祖父様が言った区画も、ただっ広かった。流石に5歳児の私には、この区画を全部耕す事はムリです。


「大丈夫です。その為の我々ですから」


 魔法薬材料採取係栽培部門の皆さんが、横に並んで、一斉に走り過ぎるかの様に畑を耕していった。流石、プロ。ガイの元同僚だけあって、やる事が尋常では、ない。

 私は、自分のちっちゃい黄色いスコップを持って、ちょっと穴を空けては、私の横をパタパタと飛んでいるイカロスが持つバスケットの中から種を1つずつ貰って、植えていった。

 魔道具製作部長から、王城に私の畑が出来たお祝いに、魔法の『ぞうさん如雨露』を貰った。ピンクの可愛いぞうさん。5歳児に丁度いい大きさのぞうさんの額には、青い魔石が付いている。私の魔力をそれに通すと、水がジョロジョロとずーっと出てくるの。


 やっぱり、私の最大のライバルは、部長よね!

 ネズミ型の探し物探知機(私は、犬型で作って、勝手に持ってきてくれる様に改良したい)に、永久機関のぞうさん如雨露。

 どちらも、役に立つ上に可愛すぎる。


 部長は、いつも、私に教えて教えてって言うけれど、今の私では、部長に太刀打ち出来ない。悔しい~。


 悔しさをバネに、私はただっ広い畑の間をスキップして歌ってまわった。

 

「おい、主。後ろを見てみろ」


 イカロスに言われるがままに、私が後ろを振り返ると。


 いつか見た光景が……いや、現実逃避は、止めておこう。ダメよ、ベルリーナ。しっかり、現実を見るのよ。


 口を開いてギチギチ笑っている、あの雑草が生えていた。イカロスの巣穴、再び。

 生えてしまった雑草は、嬉々としてやって来た魔法薬材料採取係の方の皆さんが、刈り取ってくれた。ありがたい。


 殺伐とした心からは、殺伐としたものしか生まれない。


「主、お前、疲れてるのでは、ないか。少し、休憩をせい。自分が、まだ5歳児だと言う事を忘れるな。焦るんじゃないぞ」


 イカロスが、そう言ってくれたお陰で、頭が冷えた。20も年上の大人と、張り合ってどうするの?ベルリーナ。

 むしろ、教えを乞えば良いのだ。先達の知恵を元に、新たなる物を産み出せば良いのだ。その内、考え付くだろう。

 今は、目の前の事に集中しよう。


 何故か作られていたガゼボに、果実水とクッキーが用意されていた。ぼーっと、辺りの薬草園を見回した。緑の葉や、ハーブの小さい花が、可愛らしく咲いている。色々な薬草の香りが、鼻腔を擽る。

 私は、何の為に薬草を育てるのか。それを常に忘れては、いけない。心も新たに、種を植え、水をやり、歌を歌って植物を慈しみ、育てるのだ。

 これは、私の、人々への愛だから。


 休憩した後の私は、生まれ変わった様に、心が澄んでいた。

 1つ1つ丁寧に種を植え、ぞうさん如雨露で水をやり、薬草園の真ん中で歌を歌った。緑けぶる美しい大地の歌。私達の国の歌。

 心を込めて、草木の為に歌うのだ。


 植え直したお陰で、心の整理も付いた。残るは、橘の木の実を植えるのみ。

 橘の木は、私に自分の子供を託したのだ。私の側に、その子が自分の代わりに居れるように。

 そう考えると、人参果も、少し愛おしい。少し、ほんの少しだけだけれども。栽培係の人達と相談して、人参果を植える場所を決めた。

 土を掘り起こし、人参果を埋める5歳児は、端から見ると、おそらくシュールだ。この子の芽が出て大きく育ったら、この子の親の橘の様に、その幹にあいあい傘を書こう。傘の下には、今度は私とライ殿下の名前を書くのだ。


 育て育て大きく育て。この子の親が、前世の私と勇者の愛の証であったように、この木が、私とライ殿下の愛の証となるのだろう。





「ベル、ナイフを持って歩くと危ないぞ。私が、持ってやろう。で、これをどうするのだ?」


「新しく植えた木の幹にあいあい傘を彫ります。ライ殿下。そして、私とライ殿下の名前を彫ると、この木は、私達の愛の証となって、私達の愛と共に成長します」


「愛を育てるんだな。ベルの家にある橘の木の様に……こいつも、我らの後を走って付いて来るのか」





 橘の木は、自分が家から出ると怒られるので、自分の代わりに王城に分身を送りました。これで、ベルリーナに何かあった時には、すぐに駆けつけれる筈です。

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