元魔王な令嬢は、太っ腹な龍に感謝する
読みに来て下さって、ありがとうございます。
皆で、もうちょっと、宝探しします。
今日の遅めのお昼ごはんは、スープとホットケーキにハムとチーズにハチミツをかけて2つに折って挟んだやつ。え?と思ったけど、意外に美味しかった。
今から帰ると、流石に夜間飛行になるので、今日はイカロスの巣穴にもう一泊する事になった。
「何なら、もうちょっと宝探しするか?お前達が欲しいものを1人1つずつ、やろう」
えっ!?イカロスったら、太っ腹~。
「本当か?では、私は私の目の色と同じ色の小さな石が欲しい。ベルに、ビアスにしてプレゼントしたいのだ」
あ、それ、いいな。素敵。ライ殿下の瞳と同じ色の石のビアス。
「では、私には、私の瞳と同じ色の小さな石を。私からライ殿下に、お揃いのピアスのプレゼントをしますね」
色違いでお揃いのピアス、素敵よね。指輪は、すぐに小さくなってしまうけど、ピアスなら大丈夫。
「じゃあ、僕もベルリーナちゃんの瞳と同じ色の石をもらって、お揃いのピアスにしようかな~」
「部長は、叔父上とお揃いにすればいいじゃない」
何故、部長が私の瞳の色のピアスをするの?叔父上と仲良しなんだから、2人でお揃いにすればいいのよ。
すぐに、私と殿下の間に入って来ようとしないで欲しい。寂しんぼさん、なのかな?
「部長は、異次元収納袋なんてどうだ?いつも大きなカバンを持って歩いているからな。そこに、魔道具を入れて持ち歩けば、楽チンだぞ」
イカロスが、しょげている部長に言った。異次元収納袋、そんなのまで、この山の中に眠っているのか。
「ダンジョンでラスボスのアルバイトをした時の戦利品だな」
「では、あっしには、ここいらの植物を持って帰る許可を下さいやし」
「なんだ、庭師は、それでいいのか。いいぞ。持って帰れ。ただし、生態系を乱さぬ程度にな」
イカロスは、ちょっと呆気にとられていた。ガイは、植物を、私のお祖父様のお土産にするつもりかな。
「その、その願いは、私達も聞いて貰えるんだろうか」
ジョンブルが、小さいままのイカロスを真剣な目で見つめながら言った。
「まあ、いいぞ。今回は、お前達にも特別にやろう。何が欲しいんだ?」
「ドワーフの英雄、ドリグワー様のハンマーを、いただけないか」
ジョンブルは、縋る様な目をイカロスに向けて、土下座した。
「私には、同じくドリグワー様の金床を、いただけないでしょうか」
イグナートは、ボヤ~っとしたいつもとは違う、真剣な目でイカロスを見て、土下座した。
「話によっては、やらぬことは、ないな。理由を話してみろ」
イカロスは、ギョロリと2人をね目付けた。ジョンブルは、顔を上げてイカロスを見て話し始めた。
ジョンブルとイグナートの住んでいたドワーフの里は昨今、どんどん閉鎖的になっていたらしい。
山の鉱石を掘り出し、美しい鎧や剣、数々の宝飾品や調度品等を作っては、酒を呑んで、お互いで自分の作った物の何処が素晴らしいか語り合い、宝物殿に飾っていった。ただ、愛でるだけ。
我らが作った素晴らしい品々は、その素晴らしさがわからぬ他種族の者に見せるのも勿体ない。これを作れ、あれを作ってくれとうるさい他種族に邪魔をされない様に、ついには、里全体をバリアーで覆い、隠してしまった。
ただ飾るだけの物を作る。その様な行為に嫌気が差したジョンブルは、父である族長に。
「他の種族に、我らの作った素晴らしい物を使って貰いたい。物は、飾るだけでなく、使ってこそ価値がある。外交を復活すべきだ。英雄ドリグワー様を見習え」
と、意見した。父や相談役達は怒り、ジョンブルを、跡目候補から外して里から放り出した。
「ジョンブル1人では、生きていけないからね~。幼馴染みの俺が一緒に付いてきたんだよ」
イグナートは、そう言ってジョンブルの頭をペシペシ叩いた。
「途中で、茶々を入れるな。追い出された時に引っ掴んで来た祖先の記録を元に、ここに辿り着いた。ドリグワーは、ここを最後の地として、自分の最後の作品を龍に託し、自分の最愛のハンマーと金床を龍に預けたと、書いてあった」
一息ついたジョンブルは、再びイカロスに土下座をした。イグナートも、慌てて頭を垂れた。
「あれは、面倒臭い奴だった。いきなりやって来て、我に自分の最後の作品を託して、すぐに死んでしまいおった。捧げ物も貰ったし、仕方がないから、やつの書いた本をやつの故郷の里に放り投げて入れておいた。その代わりに牛を一頭いただいたがな。まあ、手間賃ってやつだな」
それが、今回掘り出された鎧や剣、穴の空いたバケツやカエル等のミスリル製品の由来らしい。
「ハンマーと金床を我らにいただけるのなら、龍殿の主が欲しがっている、ミスリルの針金とやらを、作らせていただこう」
「よし、ドワーフ共。その話にのった!ハンマーと金床を持って帰るが良い」
その日は、暗くなるまで、部長のネズミを使って、再び皆で宝探しをした。イカロスは、宝探しが気に入ってるらしく、ご満悦だった。勿論、宝を分けて貰った私達も。
そして、時々洞窟の外からガイの嬉しそうな雄叫びが聞こえたが、気にしない気にしない。
ガイには、私が作った『てるてるぼうず』を持たせてあるので、死ぬ事は、ないと思うし。
晩ごはんは、ガイが作っていたパンケーキの種の残りに野菜やハムを加え、前世でじいやが教えてくれた『お好み焼き』っぽい物を部長に教えて、作ってもらって皆で食べた。
うん。ウマウマ。
こうして、私達の、龍の巣穴探検は、幕を閉じた。
「ガイ~ご飯だよ~!いい加減にして、戻ってらっしゃい~」
「へい。只今戻りやした。お嬢様。おっ、パンケーキに野菜やハムを入れたんでやすか?ソースもかかって、旨そうでやすね」
「私が部長に教えて、作って貰ったの。で、収穫は、どうだった?」
「バッチリでやす。これで、魔法薬剤師局の奴らも暫くは大人しく寝ずに実験してると思いやす」
「いや、寝なきゃダメでしょ」
「いや何、普段、あっし達をこき使ってる仕返しでやすよ。ガハハハハ」
魔法薬剤師局の中で何が起こっているのかわかりませんが、常に水面下の戦いが催されている様です。