元魔王な令嬢は、電池切れ
読みに来てくださって、ありがとうございます。
ベルリーナ、ラインハルト殿下の元に、走ります!(実際走るのは、馬車を引く馬だけど)
元魔王な令嬢のベルリーナです。父上に、一緒に馬車に積み込まれ、揺られ揺られて、今、王城です。
馬車の中で、父上から状況説明を受けましたが
「ラインハルト殿下が倒れて、リリアーナがお前を寄越せと言っている」
と、これだけ。
報道規制ってやつでしょうか?情報が少なすぎて、よくわかりません。リリアーナって、お母様の事でしょう?
緊急用の梟が運ぶお手紙では、小さすぎて情報を詰め込めなかった?
もしそうなら、緊急時の情報伝達方法の、改善を求める!ふんすふんす!
王城では、父上に抱っこされてラインハルト殿下の眠る部屋に連れていかれました。
急いでるので、時間の節約なのだそうです。まあ、その分、早く殿下に会えて良いですけれど。父上の、その、言い方!父上は、いつも、話す言葉が少なすぎる!
お部屋で眠るラインハルト殿下は、昨日より更に小さく見えた。特に特徴のない広い部屋の奥、大きなベッドで眠る小さな殿下。
ベッドの脇に座り、殿下の片手を握って、彼を見つめる王妃様。少し離れた壁際に、お母様とお祖父様、そして、ひょろ長いお爺さんが小さな声で話し込んでいた。
お母様は入ってきた私を見ると、私の手を取り、殿下のベッドの側に連れてきました。まずは、王妃様にカーテシーで御挨拶です。
「夜遅くに申し訳ないわね、ベルリーナ。ちょっと色々あって、ラインハルトが倒れてしまったの。ラインハルトは眠りながら魘されて、時々あなたの名前を呼ぶのよ…。ね、リリアーナ?」
「王妃様、殿下のお手をベルリーナに取らせて頂いても宜しいでしょうか?殿下とベルリーナの2人で一緒に魔道具を作った事にかんがみまするに、お互いの魔力の相性が良いようです。ひょっとしたら、ベルリーナと殿下が接触する事で、殿下の乱れた魔力が安定するかと思われます」
「私じゃ駄目なのね?私が、この子の母だというのに」
「王妃様、御身も大事な時期ですので、ご自愛下さいませ」
私のお母様にそう言われると、王妃様は手でお腹を擦りながら、自分のお腹を見た。王妃様は溜め息を吐くと、私の手を取ってラインハルト殿下の手と繋いだ。
殿下の魔力は、彼の身体の中を荒れ狂い渦巻いていた。グルグルごうごう騒めき、やがて、私の魔力に気付いたのか、静かに凪いで収まった。
「……ベルリーナ、居た」
「はい、ラインハルト殿下に会いに来ました」
「もう朝なのか、ベルリーナ?」
「まだ、朝じゃないですよ、殿下」
「ああ、母上も居た。母上、お腹に赤ちゃんが居るんだから、泣いてないで、もう寝なきゃダメです」
ラインハルト殿下はそう言って、王妃様を見上げた。王妃様は、確かに泣いていた。笑顔で、泣いていた。
ラインハルト殿下の意識が戻ったので、ちょっと安心したのかも。
「ベルリーナ、眠そうだよ。私も、まだ眠い。朝まで一緒に寝よう。このベッドは大きいから、一緒に寝ても、だいじょう…ぶ…」
確かに私も、もうムリかも…目がショボショボする。
5歳児に夜更かしはムリなんだってば
こんな時、魔界では『電池が切れた』って、言ってた気が…する…
私は、立ったまま、目の前の布団に顔を突っ伏した。
ちびっこって、いきなり電池が切れた様に寝ますよね。
例の野菜の話を書こうかと思いましたが、ベルリーナの元に未だ届いてません。朝にならないと収穫出来なかったようです。出番は次回に持ち越しです。野菜については、番外編『元魔王なちび令嬢は、今日も元気です』の『元魔王なちび令嬢、初めての家庭菜園』をご覧ください。