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第7話 巨乳の集い

のぞみの過去回想

「巨乳が前の社会を壊しました。このことを重く受け止めましょう」


 巨乳の集い。

 新規に巨乳判定を受けた女の子たちを集めて行う講習会。

 ちなみに強制参加。正当な理由なしに欠席したら処罰されてしまう。


 私はあのとき、家から電車に乗って30分前に会場入りし。

 集まっている女の子たちの不安な顔を見て、私も不安になった。


 規定時間になると、女性用スーツでビシッと決めた典型的キャリアウーマンって感じの女性が。

 自己紹介した後にパワポを使って講習をはじめた。


 それは「巨乳の危険性について」


 前の社会では巨乳が野放しになっていて、大変なことになっていたそうだ。


 巨乳は悪堕ちすると性的に手が付けられない存在になり。


 相思相愛の出来上がったカップルから、男を寝取ってカップルを破壊する。

 サークルクラッシュ件数を自分のトロフィーのように誇るようになる。

 中学生の男の子の勉強の邪魔をして、高校受験を失敗させる。

 高収入男性に散々貢がせて、破産させる。


 数え挙げるとキリがないほどの害悪。

 それをまき散らす。


「このグラフを見てください。これが前の社会での巨乳の悪行の結果です」


 年間3億件ほどの悪行が観測されたらしい。

 そして、前の社会が壊れた。


「ですが、このプログラムを開始した結果がこれです」


 講師はパワポの画面を切り替えた。

 そこには……


 年間1万件程度の悪行。


 ……激減している!


 そっか……そこまで効果があるのか……


 私はそのことについては、納得できるようになった。

 そのとき


 手を挙げた子が居た。


「なんですか? 質問タイムは後で設けますが?」


 講師の人は暗に黙っていろという声音でそう返したんだけど。

 その子は、強気なのか


「今、言わせてください」


 そう言って、席を立った。

 ……眼鏡を掛けた子だった。三つ編みの委員長タイプ。


 その子は眼鏡の位置を直しながら


「一部の人間の悪行を理由に、その属性の人間全てに制限を加えるのは差別じゃないですか? 何で巨乳だからと言って18才までの結婚を強制されなければいけないのか納得できません!」


 ……すごい度胸のある子だな。

 私はそう思った。この場で政府の人相手に堂々と意見を言うなんて。


 すると


「ええ。合理的差別も立派な差別ですね。ですが、巨乳は例外です。法律には何でも例外というものがあります」


 講師の人は彼女の主張を認めつつも、これは例外だから差別ではないと言ってのけた。

 だけど、委員長風の子はそれでは黙らなくて


「結婚するということは、子供を持つこととほぼ同義ですよ? その……セックスすることが努力義務になるんですから!」


 セックス、という言葉を言うときに、少しだけ恥ずかしそうにする。

 その恥じらいを、私はちょっとだけ可愛いと思ってしまった。この状況で。


「ええ。そうですね。ですから、皆さんにお配りした巨乳認定証には……」


①結婚における年齢制限の撤廃

②婚姻相手との妊娠出産時に発生する、金銭、処分等のあらゆる不利益の免除


「そういう効果もありますから、全然問題ありません」


 だけど。そんな少女の主張を、講師の人は真顔で「それの何が問題なの?」と返してきた。

 少女はなおも食い下がる。


「子供を持たない人生だってありますよね!? 巨乳はそれを剝奪されるんですか!?」


「前の社会が壊れたせいで、人口が激減しましたから。巨乳はその責任を負うべきです」


 講師はそう、全く動じずに言って。

 そこで一拍置き


 こう言ったのだ。


「……この制度の発起人は大老閣下なんですが、貴女は大老閣下に不満があるのですか?」


 その瞬間、委員長風の子の顔が青ざめる。


 大老……この国で、総理大臣より偉い人。

 陛下の直属の側近……!


「別に良いんですよ? この国には言論の自由がありますし。ただ、救国の英雄たる大老閣下に不満があるなら、この国に居るべきではないのではないでしょうか?」


 そう、講師の人は淡々と少女の発言を評価した。

 すると、言われた少女……委員長風の子はガクガク震えて


「いえ……いいです。私が全面的に間違っていました。大老閣下の決めたことに間違いなんてあろうはずがないですしね。失礼しました……」


 そう言って、席に着いた。


 ……この国は、巨乳に厳しすぎる!

とても巨乳が生きづらい国

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