第8話 ガチピュアのメンバー
ヘッドハンティングのために、唯音は後輩バンド『ガチピュア』のバンドメンバーについて調べる。
僕はすでにエントリーしているバンド、ガチピュアについて調べた。ふざけた名前だし、名前の可愛らしさとは異なり、メンバーはよく言えば実力主義、悪く言えば陰キャ集団だった。
ギタリストの男は子供の頃からアコギを嗜んでいて、去年の文化祭ではクラシックギターを披露していたのを覚えている。だがクラシックギターは高尚で、音楽の趣きが容姿至上主義一色である中学生にはウケなかった。
今回のバンドに参加したのはその反省だろう。きっと彼らは、人気ロックバンドの曲でも演奏しようとしているのだろうと、僕は睨んだ。お母さん曰く、フォークギターやアコースティックギターを弾けるなら、その技術はエレキギターにも応用できるようだ。弦を押さえる力の強さや使うコードの難易度から、逆は不可らしい。
ベーシストの男は、父親が元ジャズプレーヤーであり、子供のころからその影響でベースを嗜んできた男らしい。ジャズはギターよりベースが花形になりやすいジャンルだし、ジャズを演奏できるなら、より難易度が低いロックやポップもお手の物だろう。
2年生への聞きこみ調査を終えて僕は、同じく聞き込みをしていた永と合流した。
「どちらも実力に申し分ない。だがな……こいつらは見た目がダメだ、芋臭い。僕が目指すのは容姿も実力も申し分ないバンドだ。そう……Almeloのような!」
「唯音、みかさちゃんも俺も、ガチピュアのその二人に実力では劣るかもしれんけど、決して下手ではないと思う。その泰造とかいうガチピュアのドラムの男がウチに入ってくれたら、よりサイコーステージに出来ると思うぜ俺は」
「だな……永。泰造くんの実力も文句のつけ所がない。実家が和太鼓屋で、リズム感覚に定評があるらしいよ」
「志賀泰造、みかさちゃんも知ってたよ。ライブハウスで演奏したりしてるんだってさ」
「引き入れたい逸材だな……てか、それってつまりみかささんもライブハウスに出入りしとるってこと?」
「見る専らしいけどね。よく見てる分パフォーマンスにも詳しいし、あと知り合いの手伝いで音響の手伝いもしてるらしかけん、そっち方面でも役に立てるって意気込んどったばい。管楽器は幼少期から嗜んでたみたいで、吹奏楽部との音合わせでも活躍してくれるかもしらんね」
みかささんは、バンドの中心、いや文化祭でのオーケストラを含めたステージの中心となるバンドマスターになりうる逸材だ。そんな人が僕たちの側にいるんだ。これはきっと、泰造くんを引きいれる大きな材料となる。
2年生たちには悪いが、僕は彼との接触を図った。
ガチピュア……2年生が中心メンバーである実力主義のバンド。
名前のモデル……筆者の学生時代、バイト先の大学生が組んでいたバンド。