第4話 不登校の女の子
20分漬けをしてテストを迎えようとしていた唯音だったが、教室に不登校の女の子が入ってきて。
中間テストが始まろうとしていた。僕は集中し、教師が教室に入ってくるのを待っていた。だが驚いたことに、入ってきたのは教師ではなかった。入ってきた制服姿の女の子は虚ろな顔をしていて、誰とも目を合わせず、トコトコと僕の方へと近づいてきた。
「誰だ……この子」
クラス中が彼女を目で追っていた。彼女は、僕の隣に座った。僕の隣の席は不登校児のもので、ずっと誰も座っていなかった。
「君は……黒木みかささん……なの?」
「おん。はじめまして」
これが僕たちの初めての挨拶だった。この根暗そうな雰囲気の女の子は、絵に書いたような不登校児だなと思った。肌もやけに白いが、引きこもりなのだろうか。
「はーいお待たせみんなぁ。さぁテストをやるから着席してくださいねぇ」
教師の一声で生徒は全員着席した。テスト前の緊張感が教室中を包んだ。国語のテストが始まり、僕はスラスラと回答を記入していく。机に鉛筆が当たる音が心地いいなと感じながら、僕はそれなりに時間を残して、記入を終えた。
周囲からは、未だ鉛筆が机の上で跳ねる音が響いている。耳をすませば、隣席のみかささんからも音が聞こえてきた。
不登校児の彼女でも、意外とテストが解けるものなのだろうか。僕はそう疑問を抱いて、こっそり彼女の方を見た。
彼女のテストは白紙だった。空欄というレベルではない。問題文すらなにもなかった。
彼女は裏面を向けていたのだ。そしてまっ白な裏面に、なにか言葉を綴っていた。
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暗闇の中を彷徨う 明ける日の光が見えない
遠い向こう側に あなたの姿
誰も知らない
分かっちゃくれない
ふわふわぐるぐる 結局朝までだるいままここで
誰か早く見つけて
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それは歌詞のような書き方をしていた。貧乏ゆすりかと思ったが、足で刻んでいるのは、この曲のテンポなのだろうか。
それにしてもこの子は、病んでいるなと感じた。きっと胸の中になにか大きなストレスを抱えているんだ。こういうミステリアスで触れがたい雰囲気の人に初めて会って、僕はなんとも言えない、切ない気持ちになった。
テストが終わったら、声をかけてみようと僕は思った。
「はいそこまでぇ。テスト用紙裏返してください」
教師の一言で、教室中のテスト用紙が一斉に裏返された。それから教師はテスト用紙を回収して、教室を出ていった。
「あの……みかささん。さっき歌詞書いてたよね」
僕は声をかけてみた。すると彼女は、ギラついた目で僕の方を見た。無言の圧をこれでもかとかけてくる。ハッキリ言って、怖いと感じた。
そのまま彼女はなにも言わずに教室をたち去った。僕はただそのうしろ姿を眺めることしか、できなかった。
黒木みかさ……初めて学校に現れた不登校の女の子。
モデル……みゆな。