女帝陛下と聖王猊下への報告
ニノンがホワイトドラゴンに連れられて屋敷に戻る。すると、何故かそこで女帝と聖王に出迎えられた。
「え、女帝陛下?聖王猊下?」
きょとんとするニノン。ホワイトドラゴンはそんなニノンを下ろすと聖域に帰っていく。
「久しいのぅ、ニノン」
「元気じゃったかの?」
「は、はい!お久しぶりです!元気です!」
「それは良かった」
「して、ニノン。たっぷり話を聞かせてもらうぞ?」
ニノンは二人の圧に負けた。
「は、はい…」
「そんな怯えんでもとって食ったりはせんよ」
「さあさあ、とりあえず庭で紅茶でも飲みながらお話をしようかのぅ」
二人に連れられて、自分の屋敷の庭で二人に質問責めにされるニノン。
「それで?何から聞こうかのぅ?」
「まず、聖域はどんな場所じゃった?」
「聖域は、初めての光景なのにどこか懐かしさを感じる場所でした。不思議だとは思うのですが、とても心地が良いのです。木々の緑、差し込む日の光。泉は美しく空を写し、生まれて初めてみる妖精達は光を放って美しく舞い踊る。素敵な光景でした」
「ふむふむ」
女帝と聖王は興味深そうに何度も頷いた。
「懐かしさの理由はどこにあると思う?」
「あ、神様が言うには聖域に降り立った人間はみんなそう言うそうですよ。多分、魂の在処。私達の信仰する神様の、お父様の治める根源の底の空気を思い出すんだろうなとのことです」
「魂の在処?」
「はい。人間も、それ以外の生き物も。生を与えられる際は、必ず根源の底から掬い上げられた魂を元に作られる。そして、腹や卵や種に宿るんだ。そう神様は仰っていました。」
「根源の底…」
女帝と聖王は腕を組み考え込む。
「〝父〟と神様が呼んだその方から魂を分け与えられたのは、神様達だけだそうです。他の生き物の根源は、みんなそこなのだとか。だから、懐かしくて当たり前なのだそうです」
「なるほど…」
「そして、根源から魂を得た生き物達はやがて終わりを必ず迎える。その際には、肉体は土に還り魂は根源の底へと還る。そして溶けて混ざり、また新たな形を与えられて生きる。その繰り返しだ。…神様はそう仰っていました」
「新しい情報が目白押しじゃのう…」
「さて、これらの話をどう教会の記録に残したものか…」
女帝も聖王も、やっと神秘に触れられた喜びを噛み締めつつ後世にどう伝えるか頭を悩ませた。




