妖精達にも気に入られる
二柱が一通りわちゃわちゃ戯れあった後、また妖精王がニノンに向き直る。
「それで?私のことはどう伝わっているんだ?」
「サンティユモン様は、メザリンド帝国の神話に出てくる神様の友とされています。妖精達を束ねる王とされる、神格級の存在とされていますね」
「ふむ。大体合っていると思うが、いくつか訂正しておこう。私は神格級といえる存在ではあると思うが、正確にはクリニョタンの眷属だ。ホワイトドラゴンであるブロンと同じ立場だな」
「ホワイトドラゴン様はブロン様とおっしゃるのですね」
「ぐるる」
名前を呼べばホワイトドラゴンは上機嫌に喉を鳴らした。
「それにしても、妖精王様は神様の眷属だったのですね。びっくりです」
「私はブロンと同じく、クリニョタンに作り出された。私はクリニョタンの血、ブロンはクリニョタンの涙から生まれたんだ」
「そうなのですね」
「私は妖精達を統べろとクリニョタンの意思で生み出された。ブロンは私の生まれたすぐ後に、クリニョタンが戦争で犠牲になる子供達を見て涙を流しそこから自然に生まれたんだ。そのブロンが大きな声で鳴いたら戦争が止まって、クリニョタンはその時に二つの国を一つにまとめるよう神託を下し聖域を作って私達の今の生活が始まったんだ」
「え」
ニノンは神が子供達のために泣いたと聞いて少し驚く。
「あの頃のクリニョタンは今よりうんと素直で優しかったからな。スレてなかったんだ。俗世を覗き見ることで、人間達の醜さを知ってねじ曲がってしまったが」
「そうなのですね」
「サンティユモン、お前人間のプライバシーは尊重するくせに…」
そういう神はしかしさほど気にしていないらしく嫌そうな顔はしない。
「クリニョタンも人間の私生活を覗き見るんだ、人間にもクリニョタンの話をしてやるべきだ」
「なんだそれ。理由になってるか?」
「なってるなってる」
なんだかんだで二柱は仲が良さそうだ。作り出したのは神なのに、妖精王の方が保護者っぽいのがなんとも言えないところだが。
「人間、人間!」
「妖精王様と仲良し?」
そうして妖精王と話をしていたからだろうか。妖精達もニノンの周りに集まってきた。
「ああ、仲良しだ。君達もこの人間…ニノンと仲良くするといい」
「わーい!ニノン、ニノンだね!」
「ニノン、仲良くなろー!」
「はい、もちろんです!」
「なにして遊ぶー?」
妖精達はあっという間にニノンに懐いた。そしてニノンは妖精達に少し付き合って一緒に遊ぶ。
「…ニノンは妖精達にもお人好しだな」
「ニノンはとても良い子だな」
神は露骨に嫌そうな顔をして、妖精王は嬉しそうに微笑んだ。




