妖精王が興味を持つ
「げ、サンティユモン」
「サンティユモン…妖精王様!?」
サンティユモン。メザリンド帝国の神話に出てくる神の友。妖精達を束ねる王とされる、神格級の存在だ。慌てて頭を下げるニノンに妖精王は首をかしげる。
「ん?私を知っているのか?」
「知っているも何も…」
「ニノン、悪いな。サンティユモンは俗世のことをあまり知らない。ずっと聖域にいる上に、俺と違って俗世をたまに見守るようなこともないからな。だから俺達が俗世の人間達にどう言い伝えられているかも知らないし、そもそも神話というモノすら知らないんだ。あと、頭を上げていいぞ。サンティユモンに挨拶してやってくれ」
「そうなのですね…妖精王様、お初にお目にかかります。ニノン・ロール・ウジェーヌと申します。妖精王様のことは、神話という形で伝え聞いております」
妖精王は頷いた。
「ニノンだな。君の存在を知った頃から、クリニョタンが楽しそうにしているから気になってはいた。私は特別俗世を覗き見ることはしなかったが」
「そうなのですね…ところで、クリニョタン様って…」
「なんだ、名乗っていなかったのか?クリニョタン。ダメじゃないか」
「うるさい。お前は俺の保護者じゃない」
叱られて、途端に拗ねたような表情になる神。神は少年、妖精王はその成長した姿のような見た目なので年の離れた兄弟のようにも見える。
「ああ、すまない。私も挨拶が遅れたな。妖精王サンティユモンだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」
「ところで、神話?では我々はどんな風に伝わっているんだ?」
「えっと…神様はこの国の建国を手ずから指揮された、国を守る神様だと」
「ふむ、クリニョタンの名前は伝わっていないのか?性格は?」
興味津々な様子の妖精王。俗世は覗き込まないんじゃなかったのかとニノンが目をパチクリさせると、それに気づいた神が答えた。
「場合によっては人のプライバシーに関わるかもしれないから俗世を覗き見ることはしないがな、それでも俗世には興味津々なのがサンティユモンだ」
「なるほど…神様は俗世について教えて差し上げないんですか?」
「面倒くさい」
「ええ…」
「ニノン、それでどうなんだ?」
神と会話していたニノンを自分との会話に引き戻す妖精王。
「あ、すみません。えっと、神様の名前は伝わっていません。性格は…優しくて寛容な人を愛する神だと」
「…クリニョタンが優しくて寛容?」
こてりと首をかしげる妖精王に、神がその辺の石を投げつけた。ひょいと躱す妖精王。
「俺はいつだって優しいだろう?」
「どこがだ?」
「喧嘩売ってるのか?」
二柱のいつものやりとりにホワイトドラゴンはニノンにごめんねとアイコンタクトを送り、ニノンも黙って頷いた。




