神の愛し方
「その許して愛する、というのが難しいんじゃないのか?」
「難しいと思います。でも、無意識の私の気持ちを知った今ならきっと変われると思うんです。時間はかかると思います。けれど、それでも私は私のことを許して愛したい。もう、あんな風に傷ついて欲しくないんです」
「…ふぅん、なるほどな」
神はニノンの徹底したお人好しぶりに嫌そうな顔を見せる。
「ああ、やだやだ。自分自身にまでお人好しを発揮するのか。人間のくせに。もっと醜い姿が見たかったんだがな」
「え」
「無意識のお前の方が何千倍も愛おしかったよ。その子もお前の変化でこれから変わっていってしまうだろうけれど」
神はニノンから視線を外す。
「人間なんて大抵醜い生き物だ。その醜さをこそ見守り慈しむのが俺という神だ。なのに何故お前はそうも綺麗なんだ?ムカつく」
「え…ええ…?」
神の一方的な言い分にニノンは困り果てる。
「ああ、だがそれでもお前にも可愛いところはある。そう。甘い顔の裏で、人を許したフリをして根に持っていたりとか」
「…うーん、それは可愛いんでしょうか」
「とても可愛いさ。醜悪でまさに人間らしい」
「ぐるる」
ホワイトドラゴンが神に文句を言うが、神は御構い無しである。
「で、結局無意識のうちに自分をあそこまで憎んでいたと知った感想は?」
「無意識の自分に申し訳ない気持ちでいっぱいです。あの子が私を傷つけて文句を言うたび、私の心はむしろ軽くなった。それだけ色々な思いを溜め込んでいたってことですよね。本当に酷いことをしてしまったと思っています」
「相手を馬鹿にして、嘲笑して、わざと傷つけるために古傷に塩を塗る。本当のお前はそんなことが出来る人間だ。それこそがお前の本質だ。それでもなお、優しさの仮面を被り続けるのか?」
神はもう一度ニノンの瞳を見つめた。ニノンは誠実に、自分の気持ちを伝える。
「私は周りの人達と一緒に、みんなで幸せでいたいんです。そのための努力なら惜しみません」
「自分を傷つけてでも?」
「もう自分も傷つけないよう努力します。傷つけてしまったらちゃんとケアするようにします」
「…ふん。白けた、もういい」
神は白けたと言いつつどちらかというと拗ねたようにそっぽを向いた。
「ぐるる」
ホワイトドラゴンは神を窘めるが神は聞く耳を持たない。
「ぐるるるる…」
ホワイトドラゴンは主人の勝手をニノンに謝る。ニノンにはホワイトドラゴンの言葉は通じないが、その気持ちは伝わった。
「お気になさらないでください、ホワイトドラゴン様」
「ぐるる」
「すっかり仲良しだな」
そこで、ニノンでも神でもない誰かの声が響いた。




