表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【長編版】公爵閣下のご息女は、華麗に変身する  作者: 下菊みこと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/87

聖域に招かれる

空中フライトももうすぐ終わる。聖域に近付いたホワイトドラゴン。ニノンは、その清廉な空気に緊張が和らぐのを感じた。言葉にするのは酷く難しいが…懐かしさと温かさ、それに安らぎを感じるのだ。遠い昔、〝ニノン〟として目覚める前。同じような空気のところに居たような気がした。それがどこかなんて、彼女にはわからないけれど。


「ぐるる」


ホワイトドラゴンは着地を告げるように喉を鳴らし、聖域に降り立った。その大きな手をそっと地面に差し出して、優しくニノンを下ろした。


「…ここが聖域」


ニノンは、初めての光景なのに懐かしさを感じた。不思議だとは思うが、とても心地が良い。木々の緑、差し込む日の光。泉は美しく空を写し、生まれて初めてみる妖精達は光を放って美しく舞い踊る。


「なんだか…とても…」


「懐かしさを覚えるんだろう?」


ニノンはその、鈴の鳴るような清廉な声に振り向いた。そこには幼い少年の姿。しかし、何故かわかる。この方が…自らが信仰する、神様だと。


「…あ」


挨拶をしなければと思うが、ニノンはどうしてか声が出ない。それどころか、指先一つ動かない。


「聖域に降り立った人間はみんなそう言うんだ。多分、魂の在処。俺達の父の治める根源の底の空気を思い出すんだろうな」


「…」


「人間も、それ以外の生き物も。生を与えられる際は、必ず根源の底から掬い上げられた魂を元に作られる。そして、腹や卵や種に宿るんだよ。面白いだろう?」


にっこりと笑う神に、どこか違和感を覚えるニノン。この方は、どちらかといえば。生き物を…侮蔑しているように感じる。


「父から魂を分け与えられたのは、我ら神だけ。他の生き物の根源は、みんなあそこだ。だから、懐かしくて当たり前だろうな。」


「…」


「そして、根源から魂を得た生き物達はやがて終わりを必ず迎える。その際には、肉体は土に還り魂は根源の底へと還る。そして溶けて混ざり、また新たな形を与えられて生きる。その繰り返しだ。…俺には、父上が何を思ってそんなサイクルを繰り返すのかはわからないが」


神の瞳が一瞬、憎悪に染まった。


「…父は、お前達人間を心底愛していらっしゃるよ。魂を分け与えた俺達神よりも、脆弱で醜悪なお前達人間の方がよっぽど可愛いらしい。よかったな、人間」


しかし、その後は何もなかったかのように笑う。


「父上は相当に悪趣味でいらっしゃるだろう?まあだが。そんな父上だからこそ俺達は心から仕えることが出来るのさ。お前もそう思うだろう?」


ニノンにそう言って、それからぽんと手を叩いた神。


「ああ、そうか。お前達は俺の許可なしには、俺の前で言葉すら発せないんだよな。これはうっかりしていた。喋っていいぞ。動いてもいい。お前はお前の思うままに振る舞え。俺はそれを見たい」


その神の言葉に、ニノンはやっと自由を得た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ