伝説の冒険者への褒美
「それに、ファルマン。お前はレーヌとの距離があまりにも近すぎる。公爵でありながら、女帝の兄弟子。何かにつけては頼られるお前が、ここまでの価値を持つ秘宝をレーヌに…国に献上してみなさい。今までお前の力で無理矢理抑えつけていた他の貴族達からの嫉妬が暴走するよ」
ガエルがそう言えば、ファルマンは納得した。
「…それもそうですね。ますます女帝陛下のお気に入りになったと言い出して、何かと難癖を付けてくる連中もいるでしょう」
「それよりかはそれこそ〝女帝陛下のお気に入りだから〟と権力を行使して秘宝を手元に置いておくくらいの傲慢さを見せて、アイツも所詮その程度の俗物、なんて思わせておいた方がいいのさ。〝女帝陛下もきっと良くは思われないだろう〟なんて勝手に勘違いしてくれるよ。実際にはレーヌはさして秘宝には興味ない子だけどね」
「わかりました。では、宝物庫にご案内します。蓮太郎殿は少し待っていてくれ。宝物庫に行ってきて今回の褒美も用意するから」
褒美と聞いて蓮太郎は目を見開いた。
「いやいや、俺は薬湯温泉での湯治の礼に参ったのだ。褒美など受け取れぬ」
「いやいやはこちらのセリフだ。超級ダンジョンを攻略してもらって命知らずの冒険者どもの被害を食い止めてくれた上、ここまで価値のある秘宝を我が家の家宝にさせてくれたんだ。ここで褒美を与えなければ家名に傷が付く」
食い下がるファルマンに、蓮太郎はなるほどと頷いた。
「貴族とは本当にままならないものだな。礼として受け取ったものに褒美を与えなければならぬとは。承知した。では、受け取ろう。だが、俺には冒険者家業で稼いだ貯金がまだまだある。貯金ばかりで散財をしてこなかったので、底を尽きないのだ。だからそこまで金になるような物は要らぬ」
蓮太郎の言葉にファルマンも頷く。
「そうか。蓮太郎殿ほどの方ならたしかに金になる物より実用的な物がいいだろうな。探してくる」
そしてファルマンはガエルと共に宝物庫に行き、秘宝を大切に保護して保存してロックも掛けた。ガエルの血筋の者でなければロックは解除できなくなる。それを見届けてどこかホッとした様子のファルマンに、ガエルは聞く。
「で?ファルマン。実用的なものって、何を渡すの?」
「万一の時のために買って、宝物庫に放り込んでおいた超級ポーションをありったけセットで。それとどんな状態異常をも治す超級状態異常ポーションもありったけセットで。あと彼本人には要らないでしょうけど、一応何かの時の為に魔力回復ポーションもありったけセットで」
「めちゃくちゃ感謝してるじゃん」
「蓮太郎殿のおかげでこれ以上ない秘宝を得られましたから」
「まあねえ…」
そして戻ったガエルが蓮太郎に様々なポーションの詰め合わせを渡し、蓮太郎は冒険者としてはこれが一番有り難いと何度も頭を下げた。




