ウジェーヌ家の家宝
「ふうむ…これは…」
「師匠、秘宝にはどのような価値がありますか?」
ファルマンに急かされて、ガエルは口を開く。
「…超級ダンジョンの秘宝だけあって、かなり希少な物だね。まず、見た目で分かるように芸術品としての価値がかなり高い。ホワイトドラゴンをモデルにした芸術品は数多くあれど、ホワイトダイヤモンドでここまで大きく、そして精巧な物は作れるはずがない。そもそも人の手でここまでのサイズのホワイトダイヤモンドは採掘できないだろうし」
「…人の手によるものではないのですか?師匠」
「ああ。これが何よりもこの秘宝の価値を高める根拠になるが…神の手による秘宝だよ」
ガエルの言葉に、その場にいる全員が固まる。
「え」
「神様の手で作られた…?」
「さすがは大陸、俺には思いもよらぬ摩訶不思議があるものだ。とはいえ幾ら何でもスケールが大き過ぎないだろうか。冒険者をやっていて、それなりに名の知れた俺でもここまでのものは初めてだ」
「いや、蓮太郎様はそれなりどころか伝説級ですから」
「でも、そんな蓮太郎様でも神様の手で作られた秘宝は初めてなんですよね…?凄過ぎませんか?」
全員が呆然とホワイトダイヤモンドで作られた手乗りサイズのホワイトドラゴンの像を見つめる。
「まあ、この国で信仰される神の手にかかれば、こんなにも価値ある芸術品ですらチョチョイのチョイ。本当に暇つぶしに作った程度のものなんだろうけどねぇ」
そう呟くガエルはちょっと引き気味だ。そして続けた。
「みんなして驚いているところ悪いけど、さらにこの秘宝には超大規模のエリアヒールが常時展開される性能がついてるよ。つまりは、この公爵領内であればちょっとした風邪や怪我程度なら速攻で治る。やばいね」
ガエルの言葉に、全員今度こそ言葉を失う。いくらなんでも秘宝の効果が凄すぎる。
「いくら超級ダンジョンの秘宝とはいえ、ここまでのものが出てくるとは。さすがに怖くなってくるねぇ。まるで、神様がこちらに興味があるようにすら感じるよ。…もし、神様が興味を抱くとするなら心当たりはあるけどね」
ちらりとニノンに視線を送るガエル。そんなガエルに小首を傾げるニノン。
「…まあ、とりあえず。これは家宝にして大事に保管しなきゃだめだね。ファルマン。宝物庫に案内して。魔法で厳重に保護して保存してロックも掛けよう。これは本来なら国宝物だからね」
「女帝陛下に献上するという選択肢はありませんか?師匠」
ファルマンに言われてガエルは宙で手をひらひらさせた。
「ナイナイ。だってあの子、こんなもの押し付けたらびびってひっくり返るでしょ。女帝として頑張ってはいるけれど、本来なら可憐な女の子だよ?こんなもの重荷にしかならないよ」
「女の子なんて歳じゃないでしょう」
「お馬鹿。女の子はいくつになっても女の子だよ。おばあちゃんでもね」
ガエルが冗談めかして言えば、秘宝のあまりの価値に重苦しくなっていた空気がやっと和らいだ。




