冒険者のお話
「さて、そういうわけで俺は貴殿らになにかお礼をしたい。言葉だけではこの恩を返しきれない。何か望みはないか?俺のできることであれば、なんでもしよう」
蓮太郎の言葉に、ガエルが答える。
「それなら、蓮太郎殿のこれまでの人生のお話をぜひ我が弟子達に聞かせてあげて欲しいな」
蓮太郎は驚く。
「そんなことでいいのか?」
「SSSランクの冒険者の生きたお話だ。これもこの子達の勉強になるだろう。どうかな?」
ガエルが問えば、蓮太郎は頷いた。
「なるほど、そういうことであれば。俺なんかの話で、何か子供達の役に立てるのなら嬉しい」
蓮太郎の言葉にニノン達は目を輝かせる。ガエルと蓮太郎はその無邪気な様子に心が癒されるのを感じた。そして、蓮太郎は話を始める。
「まずは何から話したものか…とりあえず、俺の今日までの来歴から語ろうか」
「よろしくお願いします!」
「俺は幼い頃に極東の島国から、親に連れられこの大陸にやってきた。それまでは島国で特有の剣術、剣道というものを学んでいて、その教えを大陸に渡ってから忘れずに鍛錬を重ねていた」
「剣道…?それって最近冒険者を志す人達がこぞって入門しているあの剣道?」
そのニノンの言葉に、蓮太郎は笑った。
「ああ。冒険者業を引退して隠居生活のついでに弟子を取ったら、思った以上に志願者が多くちょっと大きな道場になってしまった」
「SSSランクの冒険者から教われるなんて、みんなやる気が出ただろうな」
オノレとユベールはうんうん頷いた。
「まあ、その話はあとでするとして…そんな俺は、大人になってからは冒険者としてあちこちを旅して来た。様々なダンジョンに単身で挑み、モンスターをバッサバッサと相棒の打刀と共に倒し、様々なボスモンスターと何度も対峙した」
「わあ…!」
「しかしある時、ボスモンスターの毒を足に受けた。命は助かったが、足が思うように動かなくなり冒険者業を引退して隠居生活を送ってきた。この国のとある田舎で隠居生活を送るその片手間で、剣道の道場を開いたんだ」
「そうだったんだ…」
ニノン達は蓮太郎の話に夢中になる。
「しかし、薬湯温泉の噂を聞き湯治に訪れると本当に足が動くようになった。これでまた冒険者業に復帰できる。とはいえ、一度始めたことは投げ出せない。道場も続けながら、兼業冒険者として新たな一歩を踏み出そうと思う」
「すごいです!蓮太郎様、頑張ってください!」
「ははは。公女殿に様付けされると落ち着かん。蓮太郎、でいいぞ」
「なら、私もニノンとお呼びください」
「わかった。ニノン殿、この度は本当に助かった。改めてお礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
蓮太郎の言葉に、ニノンも笑顔で返す。
「お役に立てて、本当に良かったです。蓮太郎さんのこれからのご活躍、すごくすごく楽しみにして応援していますね」
「ニノン殿からの応援さえあれば、百人力だな」
蓮太郎はご機嫌に笑った。




