伝説の冒険者がお礼をしたいとおしかけてくる
「おや…?噂をすれば、だね」
「どうしました?お師匠様」
「ニノン、君にお客様だよ」
ガエルの言葉にニノンはきょとんとする。その時一人の使用人がニノンの元へ慌ててやってきた。
「お嬢様。SSSランクの冒険者を名乗る方が現れて、お嬢様に薬湯温泉の件でお礼を言いたいと仰られて…冒険者カードを確認したのですが、どうやら本物のようです。カードの情報を見るに、もう何年も前から活動は停止されているようなのですが…」
「SSSランクの!?」
冒険者にはランク付けがあり、SSSランクといえばその最上位。そして、何年も前から活動を停止している。薬湯温泉の件でお礼を言いたいとのこと。ニノンはすぐに例の怪我で引退していた元伝説の冒険者だとわかった。
「わあ!わあ…!お師匠様、会ってもいいですよね!?」
「もちろん」
「すぐに応接間にお通しして!」
「かしこまりました!」
使用人はすぐに客人を迎える準備を始める。ニノン達も応接間に急いだ。
「失礼します」
応接間のドアがノックされ、元伝説の冒険者が現れた。長い髪をポニーテールにして、ひげが生えっぱなしの大柄な男だ。
「俺は東国 蓮太郎と申す者だ。この度は薬湯温泉のおかげで大変に助かったので、礼を言いに参った」
子供には慣れていない彼は、ニノン達を怖がらせないようにと優しく微笑んだ。
「お初にお目にかかります、ニノン・ロール・ウジェーヌです!」
「オノレです。ニノンと一緒に薬湯温泉を作りました」
「ユベールです。SSSランクの冒険者なんて、世界でも一握りなのにお会い出来て光栄です」
「サラです。みんなと一緒に薬湯温泉を作るお手伝いをしました」
「三愚者のガエル。よろしくねぇ」
ニノン達は元気に自己紹介する。その様子を見てやはり子供は元気が一番だと蓮太郎は頷いた。
「しかし、まさか三愚者殿と出会えるとは。三愚者殿の手助けあっての薬湯温泉だったか」
「薬草を手に入れたり、薬湯温泉を考え付いたりしたのはニノンだけどね。僕の弟子は優秀だろう?」
「なんと。やはり、公女殿は噂に違わず優秀であるな」
「いえいえ、それほどでも!」
謙遜しながらも嬉しそうなニノン。
「ともかく、貴殿らの始めた薬湯温泉での湯治のおかげで俺はまた冒険者業に復帰できる。心から感謝している」
大きな身体を揺らし、深々と頭を下げる蓮太郎。ニノン達は慌てて頭を上げさせた。
「そんな、そう言っていただけるだけで充分嬉しいです!頭を上げてください!」
頭を上げた蓮太郎に、ニノンはソファーに座るよう促し自分達も向かいのソファーに座った。




