怪我で引退した元伝説の冒険者も来たらしい
薬湯温泉を期間限定から常時開放に切り替えてからしばらくが経つと、ある噂が流れた。
「ねえニノンちゃん、聞いた?薬湯温泉に怪我で引退した元伝説の冒険者も来たらしいよ」
「聞きました!どんな方なんでしょう?怪我は治ったんでしょうか?」
「そりゃあ、あの薬湯温泉に入ったんだから治ったでしょ。呪いでも受けてない限り」
「どんな人なんだろうな。会ってみたいよな」
「これまでの冒険の話を聞くのも、授業としては良いかもしれないねぇ」
元伝説の冒険者。ニノン達は興味津々だった。
「なんでも、当時出現していたダンジョンを全部制覇したとかなんとか」
「ダンジョンって、何故か突然自然の溢れる場所に現れる特別な建造物?だよね」
「そうだよ、ニノン。ニノンはまだ見たことないんだね。サラ殿下もかな?」
「はい、見たことがありません」
「これは益々元伝説の冒険者殿の話をニノンとサラに聞かせてあげたいところだねぇ。会いに来てくれたらいいのに。むしろこちらからコンタクトを取るべきか…」
ニノンとサラはダンジョンについてある程度知っていそうなオノレとユベールに聞く。
「なんで現れるかはわからないんだよね?」
「まだ解明されてないね」
「ダンジョンの最奥にある『秘宝』を手に入れればダンジョン制覇になって、ダンジョンは消滅するんですよね?」
「そうだね。秘宝は様々な効果効能があるから、特に貴族は喉から手が出るほど欲しがる。冒険者はそんな連中に秘宝やその他のダンジョンのアイテムを売りつけて一攫千金を狙うのさ」
ユベールがニノンとサラに解説する。
「ダンジョンには、お宝を守るようにモンスターが存在するとか」
「そうそう。『秘宝』はもちろん、ダンジョンには様々な『アイテム』がある。どれも優れものでレアだから価値がある。それを手に入れるための障害、とでもいうのか…モンスターがダンジョン内に蔓延り、冒険者達を襲う。特にアイテムの前にはたくさんのモンスターが潜むな」
「秘宝の前にはボスモンスターがいるんだよね?」
「そうそう。ボスモンスターはかなり強い。ボス部屋で力尽きる冒険者達も多いよ。遺体は何故かダンジョンの外に弾き出されるから、家族の元には一応最期の最期には帰れるけどな」
オノレもニノンとサラの質問に答える。
「冒険者って、本当に大変なんだね」
「それを生業にしていたんだから、その元伝説の冒険者さんは本当にすごいですよね」
ニノンとサラはまだ見ぬ元伝説の冒険者に憧れを抱く。そんな時に、ガエルは客人の気配を察知した。




