聖王猊下
「聖王猊下が、私とノーマンさんに会いたい?」
「そうだ。ニノンとあの錬金術師のおかげで聖女が目が見えるようになったから、お礼を言いたいそうだ」
「お礼なんていいのに!」
びっくりしているニノン。ファルマンはその頭を撫でる。
「悪いが、聖王猊下にお断りをするわけにはいかない。頼めるか?」
「…また一人で行くの?」
「あの錬金術師も一緒だが」
「パパは?」
「…すまない」
ニノンはちょっと不満そうに頬を膨らませた。
「むー…一週間、またお清めの儀?」
「そうだな」
「…パパと最近なかなか一緒にいられない」
可愛いことを言う娘に、ファルマンはぎゅっと抱きしめた。
「離れていても、心はずっと一緒だ。わかってくれるか?」
「…わかった。なるべく早く帰るね」
「ああ、待っている」
こうしてニノンは、またも中央教会に足を運んだ。
ノーマンとはそれぞれ別々にお清めの儀を執り行い、謁見室で久し振りに顔を見合わせる。
「ノーマンさん、緊張するね」
「そうですね、ニノン様」
そして聖王猊下が登場した。ニノンとノーマンは深く頭を下げる。
「面をあげよ」
二人は顔を上げた。
「ニノンとノーマンじゃな。この度は良く聖女に尽くしてくれた。心から礼を言う」
「恐縮です」
「こちらこそ、そんな風に言ってくださってありがとうございます!」
ニノンの満面の笑みに、聖王は微笑む。
「うむ。我々教会の人間は、聖女に生かされているようなものじゃ。その聖女を助けてくれたのだから、お主らは我々の大恩人。なにか謝礼をしたい。受け取ってくれるか?」
「え」
「謝礼だなんてそんな!悪いです!」
「わしがしたいんじゃよ。ということで、お礼の表彰状じゃ。聖王直筆の表彰状なんぞなかなかないぞぉ?家宝にでもするとよい。ほら、近うよれ。受け取るがよい」
「…は、はい!」
ニノンは逃げられないと観念し、聖王の側により表彰状を受け取る。
「此度は本当に良くやってくれた。聖王として、心からの感謝をここに示す」
「ありがとうございます!」
ニノンが受け取った以上、ノーマンも受け取らない訳にはいかない。ノーマンも聖王の側により、表彰状を受け取った。
「お主の錬金術師としての腕は天晴じゃ。これからも何かあれば、よろしく頼むぞ」
「はい!」
こうしてニノンとノーマンは、聖王から直接感謝の言葉を頂戴して直筆の表彰状を受け取ったのだった。これは、中央教会の長い歴史、その中でも類を見ない非常に大きな出来事だった。




