聖女
「はじめまして!ニノン・ロール・ウジェーヌです!よろしくお願いします!」
「ふふ、元気な方。はじめまして、シュゼットと申します」
シュゼットは手を差し出す。ニノンはその手を取って握手した。
「ニノン様、貴女のご活躍は私の耳にも入っております。よろしければ、貴女のこれまでのお話を聞いてもよろしいでしょうか?」
「これまでのお話…では、覚えている限りの昔からお話しますね」
「ありがとうございます、楽しみです」
ニノンは語り出す。孤児院の前に捨てられていた、親もわからないニノンという名の天涯孤独の少女だったこと。身代金目的で誘拐され、ファルマンから金が払われると親元には返されず孤児院に棄てられたこと。
「まあ、大変でしたね」
「そうなんです。それから…」
手がかりはニノンの服に刺繍されていたニノンの名前のみだったが、それでもようやく植民地の孤児院で見つかった奇跡を得たこと。初めて会う、憧れの〝パパ〟。抱き上げられ、その腕に身を委ねた時の安心感。にんまりと笑えばその表情を見て、パパと呼ばれたその人は柔らかく微笑んだこと。
「本当に見つかったのが奇跡的ですね」
「本当に!でも、その奇跡のおかげで私は幸せになりました」
父はドレスをいくつも仕立て、装飾品や靴もたくさん与えてくれたこと。そして、家庭教師も付けてくれたことも話す。
「結果、同年代の誰よりも知識を吸収されたのですね」
「いえいえ、それほどでも…えへへ」
傷んでいた髪も切って揃え、栄養ある食事を摂ることで肉もつき、大変身したこと。そんな中で、父から与えられたお小遣いの一部を使って高いポーションを買って病人や怪我人に無償で与えたりしてさらに領民達からの信頼を勝ち取ったこと。
「まあ、ポーションを与えた話は聞いていませんでした。ニノン様にはきっと、神様が更なるご加護をくださいますよ」
「ありがとうございます、聖女様!」
父が勧めてくる縁談を、実際に会って自分の目で相手を確かめ選び抜いたことも話す。
「エドはとってもかっこいいんですよ!」
「まあ、私も会ってみたいです」
お話はまだまだ続く。




