超大型キメラとの対峙
ニノンは父の不在に不安を感じていたものの、オノレやユベール、ガエルやサラの慰めもありなんとか気力を保っていた。
「ニノン、今日もバラが咲き誇っているね」
「ここの庭のバラは綺麗だよな」
ユベールとオノレがそう話しかければ、ニノンは頷いた。
「うん、綺麗だね」
明らかに落ち込んだ様子のニノン。情緒不安定になっているが、それでも父の帰りを健気に待つニノンにオノレとユベールはなんとか元気付けてあげたいと一生懸命になる。それはガエルとサラも一緒だ。
「ニノン、猫達がニノンを心配しているよ。ほら、足元でニノンにじゃれついてる」
「ニノンちゃんの家の猫ちゃんはみんな可愛いね」
「あ、ママン…ミケにパンダ、シロにマダラ、トラも…ありがとう。私は大丈夫だよ」
猫達もニノンの様子を心配していた。みーみー鳴きながらニノンに擦り寄る。ニノンはそんな猫達に少し元気を分けて貰えた気分になった。
「さあ、せっかく東屋で休憩しているのだし今日は薔薇茶でも飲もうか!僕のお気に入りを特別に用意してあげよう!」
「やったね!ニノン、お茶菓子はマドレーヌでどう?この間美味しそうなのを街で買ってきたんだけど」
「うん、じゃあ…それにしようかな」
いつもよりテンションは低いが、美味しそうな薔薇茶とマドレーヌに少し顔色が良くなるニノン。ニノンが少し元気を取り戻した様子に、サラはホッと胸を撫で下ろす。その時だった。
ばさっばさっと、大きな羽を羽ばたかせる音。ドスンと、着地した時のあまりにも大きな音。
ニノンは目を見開いた。けむくじゃらの身体に、大きな羽。似合わない可愛い尻尾。熊と鷹と狸の超大型キメラだった。思わず固まるニノンとサラ。オノレとユベールはぞっとしながらも、ニノンとサラを背中に隠す。平然としているのはガエルだけだった。
「シャーッ!」
猫達はニノンを守るようにニノンの周りを固めて、必死に威嚇する。キメラはそれに対して、特に何も感じていない様子だ。
のしのしと歩いて、ニノン達の方に寄ってくるキメラ。あまりの緊張感の中、キメラの動きに釘付けになる。
「…」
オノレとユベールは最悪、ニノンとサラだけを逃し自分が犠牲になる覚悟を決めた。オノレとユベールはキメラに攻撃魔法を放とうとした。それを察知したのか、キメラも一気に走ってきて襲いかかろうとする。
しかしキメラの攻撃が届くことはなかった。




