新しいお友達の母の体力をつける
「ということで、まずは手始めに商会の中庭をお散歩しよっか!」
「中庭のお散歩?」
「陽の光を浴びて気分もリフレッシュ!落ちた筋肉も体力も少しは戻るよ!」
「でも、その散歩も辛いのですが…」
「最初はちょっとずつでもいいんです。少しずつ筋肉も体力も付けて行きましょう!」
あまり乗り気ではなかったルナだが、ニノンの勧めでタバサに引っ張られて結局体力のギリギリ限界まで散歩をすることにした。途中途中庭の花を愛でながら、そう広くはない中庭を一周する。
「お母さん、このお花可愛いね!お母さんと見られて嬉しいよ!」
「タバサ…ありがとう。愛しているわ」
「私もお母さんが大好きだよ!」
結局、ルナはヘトヘトにはなったもののタバサとの散歩自体は気に入ったらしい。無理のない範囲で日課にするとタバサに約束した。そしてルナは自室に戻ると、今度はサラの監修のもとタバサからマッサージを受ける。筋肉痛が来るだろうから、少しでも軽減するためである。
「お母さん、気持ち良い?」
「ええ、ちょうど良い心地よ。ありがとう、タバサ」
「えへへ。もっと頑張るね!」
筋力と体力を取り戻すために、散歩とマッサージを頑張れば次は食欲である。
「うーん。栄養価が高くてたくさん食べられるご飯…」
「ニノンちゃん、思いつく?」
「…うーん、全然。サラちゃんは?」
「栄養価が高いといえばお野菜かなぁ」
「お野菜をたくさん食べられるご飯…」
ニノンとサラがうんうんと唸っている横で、タバサが手を挙げる。
「お母さん、フルーツなら食べられるよ!フルーツと野菜で何か作れる?」
「フルーツと野菜かぁ」
「師匠、なんかないの?」
「これも授業だから、まずは自分達で考えてみなさい」
「はーい」
タバサの言葉にオノレとユベールも頭を捻る。そこでオノレが思いつく。
「あ、野菜とフルーツのジュースを作って、それでとりあえずの水分補給と栄養補給するとか。ジュースならお腹いっぱいにならないから、その分朝昼晩と肉や魚やパンも多めに食べられるだろ」
「いいね!そうしよう!」
「さすがオノレさん!」
「たしか、東の国に青汁とかいう飲み物なかったっけ。それを参考に、飲みやすい味に改良してみようか」
オノレの提案にニノンとサラが同意して、参考になるレシピをユベールが思い起こす。早速みんなでキッチンを借りて、ああでもないこうでもないと栄養価が高くて飲みやすい味の青汁を探求した。
タバサはお母さんが元気になるならと張り切ってお手伝いをする。そして完成した青汁を母の元へ運び、それ以後毎朝その青汁を率先して作って母に飲ませるようになった。
タバサの努力の結果、長い時間はかかったがルナはやがて筋力と体力と食欲を取り戻した。ニノン達には良い勉強になった。そしてタバサ一家は心配ごとが無くなり、ニノン達に心から感謝した。
ニノン達は商会との縁も出来たため、いじめを助けるところからのスタートとはいえ良い出会いであったと言えるだろう。
「みんなありがとう!お医者様ももうお母さん大丈夫だって!でも、またいつでも遊びに来て欲しいな」
「うん!また来るね!」
「わーい!」
またタバサは自分の努力で母が元気になったことで自信を持って、いじめっ子達に真っ向から立ち向かえるようになっていた。もう、ニノン達の助けも必要ないだろう。だが、友達としての縁はこれからも続く。タバサの両親も、この出会いに感謝した。




