いじめを受ける少女の声
今日のニノンはオノレとユベールとサラと共に、ガエルの引率で森に生えている薬草を探していた。いくつか持ち帰り、薬の生成も行う予定だ。
「お師匠様、これって薬草ですか？」
「ああ、それは火炎草だね。毒を生成するのに適していて、これで作る毒は強力だよ。でも、作り方次第ではなんと！冷え症に効く薬にもなる。今日、持ち帰って作ってみようか」
「え、でも毒になるんですよね？」
「作るのは冷え症に効く薬だから大丈夫。ただ、扱いには気をつけてね」
「は、はい！」
ニノンとサラはヒヤヒヤしていたが、オノレとユベールはさらっと採取していく。
「オノレとユベールはすごいね、怖くないの？」
「使い方は師匠に教わって熟知してるつもり。危ない薬草だけど、必要になる場面もあるから覚えて損はないぞ？」
「ニノンもサラも、そんなに怖いなら俺が持っていてあげようか？」
ニノンとサラは顔を見合わせる。
「…ううん、大丈夫！」
「私も自分で持ちます！お薬も頑張って作ります！」
「…うん、偉いね。二人とも」
ガエルがニノンとサラの頭を撫でる。元々好奇心旺盛なニノンはともかく、引っ込み思案で繊細なサラとしてはものすごい成長だと言えた。そしてそれを引き出したのはニノンだ。愛弟子達の成長に、ガエルも鼻が高い。
「師匠、熱取り草見つけましたよー」
「ニノン、サラ、見てごらん。これが熱取り草。煎じて飲めば熱を下げられるよ」
「へえ！すごい！」
「ユベール、他の草との見分け方教えて！」
「はいはい、この草はこの青くて小さな花が特徴だよ。花さえよく覚えればすぐ見分けがつく。花がまだ咲いていない熱取り草はどうせ煎じても意味がないから採取する必要もないし、花だけ覚えちゃいな」
「うん！」
ニノンとサラは楽しそうにユベールの話を聞く。その時だった。
「やめて！やめてよぅ…！」
「この卑しい商人の娘め！」
「お父さんは卑しくなんかないもん！」
「俺たちから金を巻き上げるのが商人だろ！」
「みんなのために必要なものを用意して、それを買ってもらってるだけだもん！」
その声と、叩いたり殴ったりするような音にニノンはすぐ動いた。そうなることも察知してオノレとユベールも走り出す。ガエルもそこまでは予想の範囲内だったが、引っ込み思案なサラまで走り出したのには驚いた。
「…子供の成長は早いねぇ」
ガエルもサラの後を追った。
