行き倒れた少年を無償食堂に連れて行く
今日はニノンはオノレとユベール、サラと共に課外学習と銘打って街に出てきている。それぞれガエルからこの授業の為に与えられたお小遣いを片手に「自分で」欲しいものを買ってみようというガエルなりの授業である。
「ええっと、このぬいぐるみがこの値段だから…」
「お釣りが銀貨五枚で…それならこれも買えるかな…」
「お姫様二人は苦戦してらっしゃるなぁ。二人とも計算は早い方なのに、緊張してるのか?それとも欲しいものが多すぎる?」
「まあ、これからも何度かこういう授業も受けるだろうしその内慣れるよ」
ニノンとサラは初めての「自分でのお買い物」に緊張していた。オノレは心配そうにして、世話を焼いてやりたくてそわそわする。それを冷静なユベールが止めていた。ガエルはただ近くで見守っている。
「ニノンちゃん、買いたい物決まった?全部買えそう?」
「チップとかを含めても、多分足りるはずですよ。一個諦めたけど」
「私も!」
「あとでなに買ったか見せ合いっこしましょうね!」
「うん!」
そんなことを話してお会計に行くニノンとサラに、オノレとユベールはホッと胸を撫で下ろした。
「大丈夫そうだな」
「お会計も問題なさそうだね、良かった」
「ユベールも心配してたんじゃん」
「そりゃそうでしょ」
「君たちもそろそろお会計しておいで」
「はい師匠」
「行ってきまーす」
オノレとユベールもお会計を済ませた。全員無事「自分での買い物」を完璧にこなし、課外授業は終了。お店を出たところで、ニノンが突然走り出した。
「…っ!」
「え、ニノン!?」
が、すぐ止まった。ニノンはすぐ近くで倒れていた少年を助け起す。が、少年は目覚めない。
「あ、ボロボロの服の子供…」
「だけど服自体は上等なものだな。どこかの貴族の子供っぽいけど」
オノレとユベールは冷静に観察していた。
「酷い怪我!ニノンちゃん、そのままその子を抱いていて」
サラは光の中級魔法で少年に治癒を施す。とりあえず見た目には怪我は全部治った。しかしそれでも少年は目覚めない。
「どうしよう…」
「なんとかしてあげないと…」
「…とりあえず、無償食堂に連れて行こうか。その子、痩せ細っているし。美味しい匂いで目が覚めるかも」
ユベールがそう言えば、ニノンとサラは縋るようにガエルを見た。
「…はいはい。じゃあ、転移魔法で無償食堂に行こうか」
ということで、ニノンとサラの善意で少年は無償食堂に運ばれた。




