錬金術師とマジックアイテム
ニノンはこの日、ファルマンと共にある錬金術師と会うことになった。
「お初にお目にかかります。錬金術師のノーマンと申します」
「ファルマン・ゴーチエ・ウジェーヌだ」
「ニノン・ロール・ウジェーヌです!よろしくお願いします!」
錬金術師は挨拶もそこそこに本題に入る。
「今回は、是非とも商売のご許可を頂きたいと思いまして」
「商売の許可?」
「私の作ったマジックアイテムをいくつかと、もう一つ画期的な発明があるのでそちらも見ていただきたいのです。その上で、是非ウジェーヌ領で売り出すことを許可して頂きたく存じます」
「ふむ。しかし何故娘まで?」
「ニノン様のお噂はかねがね伺っております。不法移民を助けてホワイトドラゴン様の怒りを鎮めたり、瘴気の森を開拓したりと素晴らしい功績を積んでいらっしゃるとか。そんなニノン様はきっと、これらのアイテムを気に入ってくださいます」
そして錬金術師は、アイテムを一つ一つ見せる。
「こちらは〝冷蔵庫〟小型の氷室です。食べ物が傷むのを防ぎます。こちらは〝洗濯機〟衣類を洗って綺麗にするものです。こちらは〝乾燥機〟洗った衣類を短時間で乾かすものです。」
「便利だね!」
「使用人がいれば必要ないと思うがな」
「こちらは〝食洗機〟お皿などを洗って綺麗にするものです。こちらは〝全自動掃除機〟床のゴミを吸い取り、床の水拭きもしてくれます。こちらは〝空気調和機〟様々な機能が付いております。冷暖房完備です」
「わー!すごーい!」
ファルマンは首をかしげる。
「どうみても忙しく働く平民達向けの商品ばかりだと思うが、マジックアイテムなんだろう?マジックアイテムは本来、魔力を持つ貴族向けのモノのはず。魔力のない平民達はどう使う?」
「そこでこちらのアイテムです!」
錬金術師はたかだかと魔力の込められた石を掲げた。
「私の開発した魔力石というものです!魔力を石に込めただけですが、これをこれらのマジックアイテムに接続すると何もせずとも使えるようになるのです!魔力石の魔力が切れればまた買えばいいだけ!平民達にも手が届く価格帯にするつもりですので、これで平民達の生活も楽になりますよ!」
「なるほど」
「ウジェーヌ領は年々豊かになっていますから、お金に困って買えないという人も少ないことでしょう。家事にあてる時間が減るので、みんな大喜びだと思いますよ」
「パパ!売り出す許可をあげて、普及させようよ!絶対流行るよ!みんなの役に立つ!」
「ニノンが望むならいいだろう。売り出す許可をやる」
「ありがとうございます!」
ということで、ノーマンは大量に売れてからようやく元が取れる程度の安い値段でマジックアイテム各種と魔力石の抱き合わせ販売を開始した。
するとマジックアイテムが便利なのはもちろんのこと、領内が経済的に豊かで各家庭にそれなりの余裕があることも手伝って爆売れした。評判も良い。大手の新聞社によって、家事にかかる時間が大幅に短縮されたことにより領民達の幸福度が上がった…との記事も掲載された。
ノーマンは錬金術を使い自分で全てのマジックアイテムを作ったことで人件費を節約して、薄利多売を見事に成功させ錬金術師として成り上がりを果たした。
「ニノンの言う通り、許可を出して正解だったな。ノーマンも成金になって、領民達の幸福度も上がった。ノーマンの納める税金を考えれば公爵家としても大儲けだ。誰もが幸せになったな」
「よかったね、パパ!」
「ありがとう、ニノン」
相変わらずニノンには甘いファルマンである。
その後他領でも平民達が販売を求める声が上がり、ファルマンの計らいでノーマンは他領でもマジックアイテムと魔力石の抱き合わせ販売を開始した。マジックアイテムは一気に国中の平民達に普及した。平民達の生活は今までの家事にかかっていた時間の分、余暇の時間が増えて大きく変わることになった。




