料理教室
ニノンは、ファルマンに思いつきを提案する。
「領内の希望者を募って、難民達とお料理教室したらどうかな」
「…領民達と難民達の対立を解消するために、ということか?」
「そう。みんなで仲良く簡単な料理を作るの!あくまでメインは交流会!」
「なるほど、やってみるか」
「私も参加する!」
ニノンの言葉に、ファルマンが頷いた。
「ニノンが参加した方が円満に解決しそうだ。頼むぞ」
「うん!」
ということで、第一回お料理教室が開かれた。場所は屋外、領内の大きな広場である。設備はかなり充実している。
「では第一回お料理教室、始まるよ」
ニノンがそう告げれば、領民達も難民達も優しく微笑んだ。そしてニノンも参加して早速スタート。
「今日は公爵家のシェフ見習いの私が講師を務めます!よろしくお願いします!簡単なサンドイッチを作ってみんなでワイワイ食べようと思います!」
「おー!」
まずは野菜を切る。
「みんな、このお野菜難民のみんなが作ってくれたんだよ!みんな、ありがとう!」
「えへへ、はい!」
ニノンの何気ない言葉に難民達は笑顔になる。領民達も、そんな難民達とニノンを見て差別的になっていた自らを恥ずかしく思う。
「次にパンの生地を作りますね!」
難民達は食文化の違いから、パンの生地作りは苦手なようだった。だが、そこに領民達が助け舟を出す。
「こうやってこねるといいですよ!」
「慣れると意外と楽しいですよ!」
「ありがとうございます!」
領民達の優しい対応に難民達は微笑んだ。少しずつ、優しい雰囲気が広がる。
「では、お肉を焼きましょう!その間にこっちでパンも焼いちゃいましょう!」
巨大なお肉を直火焼きにする。その間にパンもオーブンで焼く。お肉の直火焼きは難民達が火加減を調節する。彼らの得意分野である。
「わあ!美味しそうに焼くの上手ですね!すごいなぁ」
「ふふ、ありがとうございます!」
この頃には領民達と難民達の溝は埋まってきていた。
「そして焼きあがったパンに野菜と焼きあがったお肉の切り落としを挟めば完成です!」
「おー!」
こうしてサンドイッチは完成した。広場に作られた食事用のスペースでみんなで食べる。
「みんな、美味しいね!」
「美味しいですね、ニノン様!」
もはや領民も難民も無く、その垣根を超えて楽しい食事の時間を共有する。ニノンの作戦は、かくして無事成功した。この後も第二回第三回と数を重ねて多くの領民と難民との交流を深めた。気付いた時には対立はほぼ無くなっていた。




