悪口
ニノンの提案により、国中の不法移民達を正規の手続きで難民として認定し領内に集め保護したファルマン。空き家と耕作放棄地を貸し出して彼らを救ったことで、不法移民の問題もとりあえず収束し領内の社会問題も解決した。しかし新たな問題が起こっていた。
元からいる領民達が、元不法移民であり今は難民として認定された彼らを蔑んでいるらしい。対立が深まるとまた社会問題になるだろう。
ファルマンが頭を悩ませていたが、ニノンはそんなことなど露知らず。今日はお勉強がお休みの日なのでローズを連れて街に出ていた。
「ローズ、いっぱいポーション買えたね!また領内のみんなに配ろうね!」
「はい、ニノン様!可愛らしいアザラシのぬいぐるみも買えてよかったですね!」
「よかった!」
買い物も終わり、ニノンは公爵邸に戻るため馬車に乗ろうとしていたがその時だった。
「不法移民のくせに!」
「今は国の認定を受けた難民です…!」
「だとしても貴方達のせいでホワイトドラゴン様が心を乱されていたのよ!許せない!」
ニノンは難民を虐める若者達を見つけた。ニノンは馬車を待たせてその輪に近づいた。
「ねえ、なにしてるの?」
「!」
「ニノン様!」
領民達はニノンに跪いた。難民達は自分達を救ったファルマンの娘だと気付き慌てて頭を下げる。
「なにしてるの?難民さんはもうちゃんと正規の手続きをしたんだからいじめちゃダメだよ」
「し、しかし彼らはホワイトドラゴン様の心を乱した狼藉者で…」
「あのね?私、領民のみんなが好きだよ。それは難民として一生懸命生きて、領内の農業を支えてくれるみんなも一緒。いじめちゃダメ」
「…!」
幼いニノンの真っ直ぐな言葉に、領民達は難民達に頭を下げた。
「…悪かった」
「こちらこそ、難民認定されるまでたくさんご迷惑をおかけしました。農業に従事して恩返しをしていきます!」
とりあえず仲直りをする彼らにニノンは笑顔を見せて馬車に戻った。
その後、ニノンの言葉は瞬く間に領内に広がった。幼いニノンが難民達も大切な領民として認識しているのなら、不用意に対立するのは避けようという動きが広がって対立は少し収まった。しかしニノンは、それだけでは満足しなかった。




