第五章 舞台は東京へ! リベンジマッチの生んだ挫折-5
一度出掛けた二人が、ウィークリーマンションに帰ってきたのは、約2時間後のことだった。
カレー対決の日も迫っていることから、最低限のものだけ購入後しようとした彼女らだったが、思ったよりもスーパーの品揃えが良く、あれこれ目移りしてる間に時間がどんどん過ぎていったのだ。
結局二人は、食材やスパイスを中心に、大きなレジ袋四つ分の量を買い込んでしまっていた。
「さすが東京だねえ。街からちょっと離れたスーパーでも、あれだけいろんな物が充実してるなんて!」
満足げな真咲良は、ウィークリーマンションに帰ってきてそのまま冷蔵庫へと直行し、興奮しながらどんどん食材を詰めていった。
「あの品揃えには僕もびっくりしたけどさ、だからってこれだけ買い込むのは……」
対する新輝は、半ば呆れ気味に、システムキッチンの戸棚に瓶詰めスパイスを置いていった。
「そう言うなって。余ったら、ウチに持って帰って店で使えばいいんだよ」
先に詰め終わった真咲良は、直後新輝の背後に立った。
「スパイスって、空港の手荷物検査に通るのかなあ」
戸棚に瓶詰めスパイスを置き続けながら、新輝はぼやいた。
「もしダメだったら、宅配便か何かで送ればいいじゃん」
「そりゃあ、そうだけど……」
「さあ、それが終わって少し経ったら、カレー作りを始めるよ。一度勝ってる相手にだけど、油断はできないからね」
真咲良は、そう言い残して立ち去ってしまった。
「……姉ちゃんらしいや」
新輝は、彼女の姿を目で追いながらつぶやき、自分の作業へと戻った。
* * *
買い物から帰ってきて、約1時間後。
二人は予定通り、カレー作りの練習を始めた。
前回、頼香との対決で勝利している彼女らは、油断は禁物と思いながらも、以前蕃のもとで修業をしていたときに比べれば、かなり余裕があるように感じられた。
「こんな感じで……はい、出来上がり!」
ご飯が盛られた皿に、真咲良は寸胴鍋からカレールウをすくってかけた。
「姉ちゃん、そんな見せつけるようにかけなくてもいいよ。料理対決の番組、やってるんじゃないんだからさ」
新輝は、真咲良を呆れながら見ていたが、カレーに視線を移した途端、その表情が晴れやかになった。
「カレールウの色も、そしてカレー全体の見た目も、この前のカレー対決のときとほぼ同じ。僕らのカレー作りも、だいぶ安定してきたね」
中腰になって、カレーをまじまじと見ながら、新輝は嬉しそうに言った。
机に置かれたカレーは、二人が以前から作るのを得意としていたチキンカレーであり、カレールウの艶や色は、新輝の言葉の通り、頼香とのカレー対決で作ったものとほぼ同じだった。
真咲良は、「そうだろう、そうだろう」と言いながら、スプーンを手に取って、一口カレーを食べた。
「うん。味の方も、この前のカレーとほぼ同じね。クオリティもカレー力も、かなり安定してるんじゃない?」
彼女に続いて、新輝もスプーンを手に取って、一口カレーを食べた。
「おいしい! 確かに、これなら『ジャンキーカリー』のカレーに、もう1回勝てるだろうね」
彼は、顔をほころばせた。
「あの支店長とカレー対決から、1週間ちょっと。いくら『ジャンキーカリー』でも、そんなすぐに、大きくカレーの改良はできないでしょ。ウチらは動じずに、自分のカレーを作ればいいよね」
真咲良は、真面目な顔になって、自分に言い聞かせるように言った。
「姉ちゃん、珍しく真面目なこと言ってる。こりゃ明後日の対決は、ひょっとすると、ひょっとするかもね」
新輝は、茶化すように笑った。
「なんだよそれ、どういう意味だよ」
「冗談だよ、冗談」
二人は、カレーの前で笑いながら、たわいもない会話をし続けていた。
すっかり、ガラムとのカレー対決に、ある程度の勝算があると確信していた。
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