表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カレー力(ぢから)  作者: 御子柴 志恭
第五章 舞台は東京へ! リベンジマッチの生んだ挫折
25/41

第五章 舞台は東京へ! リベンジマッチの生んだ挫折-4

「ここみたいだけど……本当かなあ?」


 周りを見渡しながら歩く新輝の様子は、ひどく不安そうだった。


「確かに。ホテルとかがありそうには……見えないね」


 隣に並んで歩く真咲良は、周りの建物に目を凝らしていた。


 『ジャンキーカリー』日本本社から、地下鉄で数駅離れた地域。


 地図に示された場所に向かう真咲良たちだったが、そこはホテルなどありそうにない、一般的な住宅と低層ビルが混在する地域だった。


「地図だと、ここみたいだけど……ええ、これって……」


 二人がたどり着いた場所は、中層マンションの前だった。


 見た目はきれいであり、それほど築年数の経っていない、新しめなものに見えたが、てっきりホテルだと思っていた二人にとっては、驚きの方が大きかった。


「なんだよ。世界的大企業の社長のくせに、妙にこういうところはケチなんだな」


 真咲良は、口をとがらせて悪態をついた。


「そうだね……とにかく、部屋に入ってみようよ。ここの3階らしいよ」


 新輝は、真咲良の腕を引っ張って、中へと入っていった。



   *    *    *



 エレベーターに乗って到着した二人の部屋は、ごく一般的な作りのワンルームマンションだった。


 その広さや、ベッドなどの備え付けの家具の数等が、今の真咲良たちと同じ二人が暮らせる規模の部屋になっていた。


「本当に、家具も最低限のものだけ。ここで対決まで、自分たちで生活しろってことか」


 ため息をつきながら、新輝はどさっと荷物を置いた。


 対する真咲良は、玄関に寸胴鍋を早々に置いて、部屋や風呂場などを無言できょろきょろ見ていた。


「姉ちゃん。そんなに色々見たって、普通のマンションだよ。一定期間借りられる、ウィークリーマンションってやつかな」


 新輝は、ベランダに続く窓を見ながら、真咲良を見ずに言った。


「新輝、前言撤回だ。あの社長が、ここをウチらの宿に指定したのには、ちゃんと意味があるんだよ」


 先ほどとは打って変わって、真咲良のうきうきした反応が返ってきた。


 それに意表を突かれた新輝は、目を丸くして、彼女の声の方へと小走りで向かった。


 彼女がいたのは、キッチンだった。


「どういうこと? ここが宿なのに、意味があるって……」


 不思議そうに訊く新輝を前に、真咲良は、少しニヤニヤしながら、無言でシステムキッチンを指さした。


 そこには、コンロの口が5個もあり、広々としたシンクはピカピカに磨かれ、壁には包丁などのあらゆる調理器具がひっかけられていた。


 そして脇には、新輝の身長と同じくらいの高さの、大型冷蔵庫が設置されていた。


 二人暮らしで数週間滞在するだけという想定にしては、あまりにも造りが豪華すぎる。


「あれだけいろんなものがあれば、対決の日まで、カレーを作って研究することができるよな」


 真咲良は、新輝に気づきを与えるような口ぶりで言った。


「そうか! 社長がここを、僕らの宿に指定したのって……」


 新輝は、ようやく合点がいった様子で、晴れやかな表情になった。


「あの社長も、なかなか優しいところあるじゃん。ちったあ見直したよ」


 笑いながら、真咲良はシステムキッチンをなでるように触っていた。


 一方の新輝は、冷蔵庫を開けて中を確認し始めた。


 しかし――。


「さすがに、食材までは入ってないか」


 中身が空の庫内をじろじろと見て、新輝は落胆した。


「それは仕方ないね。近くにスーパーがあったから、そこで買い込んで来よう」


 システムキッチンの壁や戸棚にある、ピカピカの調理器具を確認した真咲良は、新輝を元気づけるように声をかけた。


「だね。そうしよう」


 しゃがんで野菜室を覗きこんでいた彼は、扉を閉めて立ち上がった。

読んでいただいたご感想や反応等いただけると、励みになります。


お待ちしておりますので、どしどしよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ