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第9話 幼馴染の彼女round1

 

 教室で由紀ちゃんとその友だち達と仲良く話をしている。

 女の子と話でもしていないと、面倒な男どもが寄ってくるから。


「ねえねえ、育ちゃん。今日放課後暇?」

 話してても寄ってくる。

「ダメー。育ちゃんは私たちと帰るから」由紀ちゃんが私の代わりに断る。そんな約束はしてないけど、そう言うことにしておく。


 公太を視界の端で探す。

 鈴原の机の上に座ってスマホをいじっていた。こっちを見ないけど、私を気に掛けてこっちの話を聞いている。……と思いたい。


 鈴原は公太を気にするでもなく本を読んでいる。耳にはイヤホン。

 鈴原もホントに音楽を聴きながら本を読んでいるのだろうか?


 私が由紀と話をすることで、余計な奴に声をかけられる事を拒絶しているのと同じだろうか?


 一度鈴原と話をしてみたい。声をかけると公太が嫌がるかも知れない。公太がいないときを狙う。


 この日はそんな機会はなかった。




 翌日、授業の合間の休憩時間。

 公太は教室にいない。


 鈴原は一人教室で机に座っていた。暇そうにスマホをいじっている。


「ちょっとごめん」私は由紀ちゃんに断りを入れて席を立つ。

 由紀ちゃんは特に気にせずに私を見送る。

 鈴原のところに行こうとしている事がわかっていたら止めただろうか?



「鈴原さん、ちょっといいかな?」私は愛想の良い美少女スマイルを顔に張り付けたまま声をかける。

 この間の経験から、彼女は話しかけられた最初の一瞬しか相手の顔を見ないことがわかっていたから。


 鈴原と目が合った。


 綺麗な瞳だった。うん、美少女だ。

 私ほどじゃないけど。


 目が合ったのは一瞬だけ。すぐに彼女は目をそらしうつむく。

 そこまで怯えられると傷つく。いや、誰にたいしてもこうなんだろうな。


 公太が気にかけるほどに、彼女は傷ついているのだろう。


 でもそれは私から公太を奪っていい理由にはならない。

 私は彼女が公太と付き合ってるとは思わない。

 彼女を守るために、付き合っているフリをしているだけだと思う。


 そうに決まっている。


「鈴原さんとちゃんと話したこと無いよね? ちょっとお話ししよ?」

「え……」彼女は何か喋ろうとして戸惑っている。


 イライラスル


「ねえ、宮野くんと付き合ってるの?」

「えっと……」

「……」

「……」

「ねえ、こっち向いたら?」

 私は彼女に手を伸ばす。

 いや、手を出す気はないよ?

 ちょっと肩に手を置こうとしただけ。いや、まあ、ちょっとはきつく言ったかもしれない。


 私が鈴原に触れる直前に、彼女はビクッとする。

 そんなに私が、いや、他人が怖い?


 私は彼女に触れられなかった。私の腕が捕まれたから。


 私の腕が強い力で引っ張られる。

 公太だった。

 いつの間にか公太は教室に戻っていた。


 公太は私の腕をつかんだまま、にらんでくる。

「嫌がってるだろ」公太が私を咎める。

 冷たい声で。冷たい目で。

「」私は公太に抗議しようとした。

 話をするぐらいいいでしょ?


「おい! 育ちゃんに手を出すな!」

 私の声は闖入者にかき消された。

 三バカの一人、加藤だった。

 いつも加藤は公太に突っかかる。

 後ろに三バカの残り二人を引き連れて。


 公太は掴んでいた私の腕を離す。

 そして加藤をにらみ付ける。

 加藤はいきなり殴られることを警戒してか、公太に近づかない。


「おい、女の子に手を出すとはサイテーだな!」

「お前ら育ちゃんに近づくなよ!」

「育ちゃんが可愛いから妬んでんのか? 鈴原!」


 うるさい。鈴原にまでイチャモンつける意味がわからない。


 公太と話してるんだから、じゃますんな。


 彼らは公太の手が届かないところから文句を言っている。

 公太は近くのイスを蹴った。

 蹴られたイスが加藤の足に当たる。

「てめぇ!」加藤が怒鳴る。

 でも、怒鳴っただけだった。三バカは公太ににらまれて動けない。


 私は不機嫌に公太をにらみつけてから踵を返した。


 自席に戻る。

 由紀ちゃんが、「鈴原に関わったらダメよ。宮野が何するかわかんないよ?」と、私を心配して忠告してきた。

 由紀ちゃんは親切だね……。


「育ちゃん、大丈夫だった?」

「鈴原に何かされた?」

「鈴原、育ちゃんが可愛いからって嫌がらせとかサイテーだよな」

「育ちゃんは俺たちが守ってやるから、心配要らないよ」

 三バカが私のところにやって来て、何か言っている。


 ホントクダラナイ




 夕方、育が家に押しかけてきた。

 まあ、いつも通り。

 今日も制服のままやって来た。


 俺は寄り道してから帰宅したが、それよりも育の方が帰りが遅かった。


「遅かったな」

「友達とスイーツ食べてきた」

「そう、旨かったか?」

「美味しかった」

「良かったな」

 彼女は、あまり良かったって顔をしていない。


「お菓子作って」

「えー、食べてきたんだろ?」

「公太の手作り食べさせて」


 仕方ない。今日は育に悪いことをした。


 育をダイニングのテーブルに座らせる。

「たまには育も作れよ」

「……」

「作ったことないのか?」

「……」

 作ったことないらしい。

 俺も彼女の対面の席に座った。


「……作ってくれないの?」育が不満そうに言う。

「どうせ来ると思ってたから、もう作ってる。焼き上がるまで待て」

 既にチーズケーキをオーブンで焼いている。後10分位で焼き上がる。



「今日の公太、……怖かった」

「ごめん。でも育が鈴原に手を出そうとしたからだろ?」

「肩に手を置こうとしただけだよ?」

「それだけでも怖いと思う奴もいるんだよ」

「むぅ……」

「機嫌直せよ。もうちょっとでお菓子焼けるから」

「……なぐさめて」


 俺はイスから立ち上がり手を伸ばした。


 育の頭をなでた。




読んでくれてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れ様です。少女漫画って結構ケンカシーンはいるんですねー。 育ちゃんの心境はまあ、わからなくもないけど人それぞれ人生があるから難しいところですよね。 これからどういう展開になるかわから…
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