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第5話 新学期DAY2

 

 朝だ。

 私はカーテンを開ける。目の前の公太の部屋のカーテンは閉まっていた。スマホで公太を呼び出す。


 公太がカーテンと窓を開けた。スマホの呼び出しを止める。


「おはよう。公太」

「おはよう。育。毎朝電話すんな」

「一緒に学校行こ?」

「やだよ」

「何で? いいじゃん」

「……俺の彼女さん、嫉妬深いからダメ」

 嘘だよね。それで押し通すつもり?


「せっかく帰ってきたのに……、遊ぼうよ」

「はいはい、学校終わってからね」

「ぶー」

「可愛く拗ねてもダメだ」

 あ、これ可愛いいと思えるんだ。


「学校で知り合いとバレるようなことしたら、マジで怒るからな」

 (かたく)なだなー。



 公太と別々に登校した。

「おはよー。えーっと……」

「おはよう、秋山さん。飯島由紀ね」隣の親切っぽい人はフルネームを教えてくれた。

「おはよう、由紀。私は育ね」

 由紀は笑った。「よろしく、育」

 うん、やっぱり良い人そう。


 しばらく話をする。前にこっちで住んでいたことも話した。公太に関連することは除いて。

「小学校はどこ?」

「A小」あれ? これまずかったかな? 公太と同じ小学校だってバレる?


「A小って、T中の学校区?」

「そうだね」T中には行かなかったけど。

「宮野って、T中らしいよ。何か小学生のときからチーム組んでて、暴れてたらしい」


 公太、不良だったの?

「チームって何?」

「不良グループって言ったらいいのかな? 小学校のときの4人でそのまま中学校もしめたらしいよ」

「……詳しいのね、由紀」

「有名だからね。よその中学校もしめてたらしいから」

「へー、小学校のときの幼馴染4人なんだ……。男4人?」

「女の子も1人いたって聞いたなー」

 ……何か心当たりがあるんだけど……。



「おはよー、育ちゃん。今日も可愛いねー」

「俺さー、髪型変えてみたんだけどどうかなー」

「昨日ウケる動画見っけたんだけどさー」


 チャラ男三人組がやってきた。

 由紀と話してたのにブツ切ってくる。私が可愛いのはわかりきってるから一々言わなくてもいい。

 適当にあしらってたら、由紀はすでに興味なくして他人モード。えー、ヒドクない?

 こうして私の学園生活の一日は始まった。



 午前の授業が終わり昼休みになった瞬間を狙って、例の公太の彼女に凸する。休み時間のたびにポップする男子に囲まれる前に。


「こんにちは、鈴原さん」私はとても素敵な笑顔で話しかける。秘技、美少女スマイル。大体は男女問わずこれで落とせる。大体と言うのは、例外があって、落とせないときもある。

 相手がコミュ障で、こっちを見ていないときだ。この鈴原みたいに。


「っ! ……え、……コンニチハ」声ちっさ!

 初手からイラッとした。

 いや、公太の彼女って時点で好感度なんてないけど。

「鈴原さんって、宮野君と付き合ってるの?」いきなり核心から入る。回りくどいのは苦手だ。

「っ! ……えっと……」

 どうして一々ビクッとするの? イラつく。

 ずっとビクビクして怖がっている。私、そんなに怖い?

 一応は、敵意を隠してにこやかに話してるんだけど……。

「鈴原さんって可愛いよねー。お友だちになりたいかな」

「っ!」あからさまに怯えた表情。

 え? 何それ?

 これって……。


「育ちゃん。何、鈴原なんかと話しんの? 俺とランチしようぜ」

 また、人が話してんのお構いなしにチャラバカ三人組がやってきた。

「こんな陰キャと、話ししてもつまんないでしよ?」

「鈴原、お前、自分より育ちゃんが可愛いからって、嫉妬してんのか? 態度悪いぞ」

「陰キャがでしゃばんなよ、育ちゃんが迷惑だろ」

 いやいや、私から話しかけたんだけど。でしゃばってんのはあんたたちよね?


 ガシャッ!!


 大きい音がした。


 教室じゅうの視線が音の方を向く。騒がしかった教室が息を飲んだように静まる。

 音の発生したところに公太がいた。

 私たちの真近くの机を蹴飛ばしたようだ。蹴られた机が三チャラの一人、加藤だったかに当たった。


「何しやがる!」加藤が公太に怒鳴った。

「ぁあ?」語尾が上げる、分かりやすい威嚇をした。ケンカ売ってるね。

 三人と睨み合う。鈴原は震えて下を向いている。


「うるせえ。俺の女に話しかけんな」公太がメンチ切ってる。

「んぁあ?」加藤も語尾が上げて威嚇し返す。

 メンチの切り合いになる。


「誰がネクラ女なんかと話しするかよ。育ちゃんに迷惑かけんなって注意してただけだろ」

「バカが移るから鈴原に話しかけんな。クズ」

「なんだとコラァ。セフレにも優しいこったな!」


 巻き舌大会かな? 3対1だけど公太は引かないね。


「奴隷じゃないの? 脅してヤッテるって噂だけど」

「陰気臭いけど、顔だけはいいもんな」

 チャラ男のあと二人、斉木と藤原も加藤に加勢する。

 数が多いからって調子に乗ってない?


「黙らないと、あご砕いて喋れなくすっぞ」公太は数にビビってない。

「おお、やってみ……」

 やってみやがれ、とでも言いたかったのかな?

 公太がいきなり、加藤のあごを拳で撃ち抜いたから、最後まで言えなかったけど。


 殴られた加藤が吹き飛ぶ。フックぎみに殴られて、誰もいない方向に倒れた。

 ストレートで殴ったら加藤の後ろの二人に当たって、さらにその後ろの鈴原に当たるから?

 倒れる方向をコントロールした?


「まだ、喋るか?」公太は、言葉を失って突っ立っている斉木と藤原に、見下すような目で圧をかける。


 三人は無言で逃げるように教室から出ていった。


 昼休みの教室は地獄のような静寂に包まれた。


 公太が私を不機嫌そうに睨んでくる。

 いや、私のせいじゃないよ?


「来い」公太は鈴原に声をかける。

 鈴原は慌てて袋をとって立ち上がる。

 公太に連れられて鈴原も教室から出ていった。

 あの袋はお弁当だね。単に二人でお弁当するだけか?


 私は机に戻る。

 由紀が非難するような目で私を見る。

「だから、関わっちゃダメって言ったのに……」

「私のせいじゃないよ」




読んでくれてありがとうございます。


ヒロイン視点はバイオレンス。


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― 新着の感想 ―
[一言] 少女漫画。。。 なかなかディープな世界ですねー。 ただ、育ちゃんが暴力があまり嫌いな性格じゃなさそうで、読んでる側の方がドキドキします。
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