第3話 春休みDAY3&4
朝の日差しが眩しくって目を覚ます。
目の前に育の顔があった。
今日は驚かない。一日で慣れた。
幼馴染みの寝顔はとても綺麗だった。
「おきろ」
声をかけたがやはり起きない。
さて、どんなイタズラをしようか?
昨日は頬を詰まんだので、今日は鼻を摘まんでみる。
育は苦しそうに顔を背けた。指が鼻から外れる。
俺は布団から抜け出す。育に布団の上からダイブする。
「ふくぇっ……」育が呻き声を漏らした。
育が目を覚ます。
「おはよう、育」
「おはよう、公太。重い」
二人で居間に降りる。
平日なので両親は仕事に行っていない。
朝ごはんがおかずだけ用意してあった。
昨日と同様に、二人でご飯と味噌汁を用意する。
「「いただきます」」
「今日はどうする?」
「みんなに久しぶりに会いたい」
「んー、最近会ってないけど……。とりあえず町内の奴らに声かけるか」
「推しかけよう」
おう。小学生の「誰々くん、あそぼー」だな。当時もそんなことしてたか?
小学校の同級生は町内に5人。俺たち2人を除いて後3人いる。
とりあえず着替えてから近所の、かつての友達の家を襲撃する。
「かーずーくん、あーそーぼー!」玄関で育が叫ぶ。
とりあえず俺は玄関のチャイムを鳴らした。
「えー、何……」かずくんは暇をしてた。
「普通に電話ぐらいしろよ」と言うかずくんを連れて次の家に。
「たーまーちゃん、あーそーぼー!」
呆れ返るかずくんの横で俺はピンポンを押す。
「……、え? 親分……?」たまちゃんも暇してた。そういや育は親分とも呼ばれてたな。
たまちゃんは年頃の娘さんだが、部屋着のまま出てきた。今さら、俺たちに着飾る必要は無いよな。
最後の一人。俺は育が大声を出す前にピンポンを押した。
「にげろー!」育が走り出す。
「え?」かずくんとたまちゃんもつられて走り出す。
「はあ?」俺も慌てて走り出した。
「待て待て!」俺は慌ててみんなを止める。「何で逃げんだよ!?」
「ピンポンダッシュ!」育が真面目な顔をして言った。
慌てて戻る。
もう一度ピンポンを押そうとしたら、
「けーいーくん、あーそーぼー!」と3人が叫んだ。
ガキ大将は今でも君臨しているようだ。
「お前ら、ピンポンダッシュすんな。もう小学生じゃないんだから」けいくんが呆れて言った。
みんなヘラヘラ笑っている。
けいくんも、苦笑した。
みんな暇なんだな。
公園に来た。子供の頃にみんなで遊んだ児童公園。
「公太、アイスクリーム」
「はいはい」
近くのコンビニで6本入りの箱アイスを買ってきた。この方が安い。小さいけど。
「お金持ってきてない」まあ、3人は着のみのまま出てきたからな。
「育は後で払えよ」
「ぶー」
一人一本ずつ。一本余る。
「みんなで一口ずつ分けよう」育が言って一口かじる。俺に渡してきた。
一口かじって近くにいたかずくんに渡す。かずくんからたまちゃん。たまちゃんからけいくんへ。
「ほとんど無いじゃねーか!」
けいくんが叫んで、みんな笑った。
「私と一緒のM高いないの?」育が訊いた。
「こうたくんだけだろ。俺とたまちゃんは工業」けいくんとたまちゃんは同じ工業高校だ。
「かずくんはK高」
「嘘! かずくん頭いいんだ!」
「いくちゃん、いつもかずくんに宿題教えたもらってたよね?」たまちゃんが突っ込む。
「いや、答え写していただけだよね」かずくんが楽しそうに被せた。
昼ごはん前に解散した。
「公太、お腹すいた」
「はいはい、何食べたい?」
「たこ焼きー! タコとチーズとウインナーとジャガイモ」
「めんどくさいの言うなー」
「たこ焼きパーティー、久しぶりにしたい!」
「向こうではしなかったの?」
「しなかったね。地域的なもんかな?」
「ふーん」
スーパーに寄ってタコを買う。後は冷蔵庫に入ってる。
「チョコレートも」
「変わったのいれるなー」
家に帰ってたこ焼きを作る。
「なあ、育」
「何?」
「一緒のクラスになるかどうかはわかんないけど……」
「うん」
「学校では俺に話しかけるな」
「……何で?!」
「……」
「彼女いるから? 他の女と話すると嫉妬が激しいとか……」
「……、そんなとこだ」
「……」
「頼む。マジで」
「……わかったけど……」
その日の夜も、育と一緒のベッドで寝た。
次の日の朝は何と育が先に起きた。
体の上に飛び乗られて起こされた。仕返しかよ。
「重い、育」
「おはよう」
「おはよう」
今日は二人で街を探索した。
育にとっては久しぶりの地元だ。
「ここに有ったお店もう無いんだ……」
7年も経てばそれは変わるよ。
俺も、育もな。
夜。今夜も育は俺のベッドに入ってきた。
「明日は自分のベッドで寝ろよ」
「何で?」
「いや、明日は育パパとママが帰ってくるだろ?」
「帰ってくるよ?」
「何でか分からないって顔すんな。親、留守だから預かっただけだろ」
「ちえっ」
「ちえっ、じゃない」
もう子供じゃないからな。
読んでくれてありがとうございます。
たこ焼きにチョコレートはちょっとですよね。
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次回から育視点が入ります。ストーリー運びが少女マンガ風になります。ちょっと緊張する。