表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/59

第21話 友達の作り方return2

 

 日曜日に友達を家によんだ。

 飯島由紀とその友達2人。


 由紀の友達とは何度も遊んでそれなりに仲良くはなった。でも何か違う。

 クラスで一番可愛い子と仲良くしていればトップカーストの仲間入り?

 私が欲しいのは友達であって、太鼓持ちじゃない。


 その二人を誘ったとき、由紀は微妙な顔をした。私が何をしようとしているのか理解したのだろう。由紀には何も言わなかったが、彼女は二人には何も教えなかった。




 お昼前に3人を迎えに行って、その後私の部屋でお菓子を食べながらワイワイしていた。

「育ちゃん、昔もこの家に住んでいたの?」

「うん。昔のまま。でも町はずいぶん変わってたね」

「小学校の友達とかも会った?」

「会ったよ」

 幼馴染みの話題になったとき、由紀ちゃんは微妙な顔をしたが黙っていた。

「ここってT中だよね?」

「そうよ?」

「育ちゃん、中学校違うから知らないだろうけど、宮野ってT中でヤバかったらしいよ」

「そうそう、T中カラーギャングね」

「育ちゃん、小学校は宮野と同じよね? 昔知ってたからって関わらないようにね」

「M工業の狂犬カップルってT中カラーギャングだよね?」

「改造バイク乗り回してるの。今時暴走族って笑えるー」


 由紀ちゃん、なんか冷や汗かいてない? 何でずっと黙ってるかな?


「あ! 育ちゃんこのマンガ持ってるんだ! 懐かしー」

 と思ったら、由紀ちゃんはあからさまに話題を変えてきた。


「あ、小学校のときに読んでた。男の子が不良なんだけどカッコいいのよね」

「不良なのに優しいってギャップが良いのよね」

 由紀の友達もこの少女マンガ知ってるみたい。


 ホントに優しいなら不良じゃないよね?


 由紀ちゃんは更に顔を青ざめさせた。話題のごまかし方を間違えたね。


「そろそろお昼にする?」

 マンガの話が一段落した頃を見計らって昼御飯を提案した。

「どこか行く?」

「ううん。作ってもらう」

「? 育ちゃん、お母さん出かけてるよね?」

「大丈夫、お母さんはいないけど、ちゃんと作ってくれる人いるから」

 そう言って立ち上がり窓を開ける。スマホで電話をかけた。


 窓の外からコール音がする。

 隣の家の向かいの窓のカーテンが開いた。

「何?」公太が窓から顔を出した


「え?」由紀が驚いて立ち上がる。

 窓の棧まで高さがあるので、座っていると外が見えない。公太からも座っている人は見えていないはずだ。


「あ、由紀も来てたの?」公太は微笑み軽く片手を上げて挨拶した。

 由紀は戸惑いながらも会釈を返した。

 由紀の友達も立ち上がって窓の外を覗く。そして窓の外の公太を見て固まった。


 公太も二人を見て固まる。非難するような目でにらんできた。

 由紀がバツが悪そうに私たちを見比べた。


「公太、ご飯作って。四人分!」

 公太は絶句し、充分な時間悩んでからため息をついた。



 私たちは公太の家におじゃました。

 先に公太が玄関のカギを開けてくれていたのかドアが開く。

「おじゃましまーす」公太のお出迎えはないが勝手に上がる。

「あがって、遠慮しないで」戸惑っている由紀とその友達に声をかける。


「育が遠慮しろよ!」奥から公太の怒鳴り声が聞こえた。不機嫌らしい。

 居間に入るとすでに公太は居間と一体になった台所で料理を始めていた。


 ローテーブルの前のカーペットの上に座る。

「座ろ?」

 由紀が私の横に座る。

「近所って……隣だったの?」

「そうよ」

 T中カラーギャングと引き合わせたときは、由紀は家には来ていない。


 由紀の友達の二人は真っ青な顔をしてローテーブルの反対側に座る。無言のまま下を見ている。


 そんなに怖がらなくてもよくない?


「友達の川野 浩子ちゃんと高木 美和ちゃん」二人を公太に紹介する。

「同じクラスだから知ってるよ」公太は不機嫌に答えた。それでも調理の手は止めない。


「スパゲッティー作るけど嫌いな人はいないよな? カルボナーラと野菜のトマトソースの二種類でいいか?」

「大丈夫よね?」

「ええ」

 由紀ちゃんは返事したが、後の二人は無言で下を向いていた。


「大丈夫」代表して私が公太に返事する。

「育、手伝う?」

「いやー、ジャマするだけだから……」

「料理練習しろよ。教えてやるから」

「あー、また今度ね」


「あ、私手伝います」由紀が立ち上がって台所に入る。

「何で敬語?」

「あ、いえ……」

 由紀はまだ公太が怖いのかな?


「ありがとう。由紀は野菜切ってくれる?」

 野菜を用意してテーブルに並べる。

 公太は先に切っておいた野菜をフライパンで炒める。

 大きなスパゲッティー鍋は既にコンロにかけてあったがまだ湯は沸いていない。五人分のスパゲッティーを茹でるだけの大量のお湯は直ぐには沸かない。


「公太、まだー?」

「お湯が直ぐに沸かないから待ってろ」

 公太は由紀を見る。

「育がうるさいからお茶でも淹れてあげて。由紀はコーヒーと紅茶、どっちがいい?」

「えっと……紅茶です」

「……由紀、敬語やめてくれない?」公太は困ったように、そして怖がらせないように優しく微笑んだ。


 みんな一度友達認定すると、直ぐに距離縮めるよね……。



 大皿に2品。取り皿とフォークを並べる。公太と由紀ちゃんが。

 私はのんびりと見ている。

 由紀ちゃんの友達は無言のまま。


「いただきます」誰も料理に手をつけないので率先して食事を始める。

「いただきます」公太も食事を始める。

「由紀も食べなよ」公太は由紀には話しかけている。

 由紀の友達とは話をしない。由紀の友達は無言のままだから。

「……いただきます」由紀も食事に手をつける。そして「……美味しい……」と驚いたように言った。

「いや、由紀もつくっただろ?」

「え……、味付けは宮野くんがしたから。私は手伝っただけだし……」

「……公太」

「?」

「公太でいいよ」

「……公太……くん」

 公太は嬉しそうに微笑んだ。


 ……。

 ナンカイヤ。


「二人とも食べて」

 私は固まったままの由紀の友達にスパゲッティーを取り分けてあげる。

 公太が怖くないのは見てわかっただろうに……。

 自分の目で見たものより、噂の方を信じるの?

 自分の目すら信じられないの?

 呆れる。


「育、ピーマンよけるな。子供か?」

「よけてないよ?」

 公太が呆れた目で見てくる。

 しらばっくれる。

 公太がトマトソースの野菜スパゲッティーからピーマンをとって皿に入れてきた。

「むー」

 私がむくれると公太は楽しそうに声を出して笑った。




読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] OK理解しました。 このお話は漫画だと結構面白いと思う。 ちょっと怖めな主人公。 小説だからかなぁ、雰囲気がわからないからちょっと殺伐とした雰囲気に感じるんだと思いました。 今回のお話…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ