第17話 友達の作り方another 2
「育ちゃん、K高の友達紹介して」学校に登校したら、飯島由紀が高揚した面持ちで話しかけてきた。
「おはよう。かずくん?」
「そう、そのかずくん」
「えっと……」何で?
「昨日のお礼を言いたいし」明らかに別の目的あるよね?
どうしよう? 私は少し考える。本当は考えるまでもなく拒否だけど。由紀じゃかずくんに釣り合わない。
見た目だけなら可愛い方かもしれないけど、中身がね……。
「お願い!」顔の前で手を合わせて拝んでくる。あざとくって可愛い。
キモチワル……。
「いいよ」私は由紀に微笑む。
「ありがとー、育ちゃん!」
「由紀ちゃん、かずくんみたいな男の子が良いんだ?」
「頭も良くってケンカも強いなんてサイコーじゃないの!」
「そうだねー」
公太の方がカッコいいけどね!
由紀は善良でもないけど、悪人ではない。
私も自分が好きな人間とだけ付き合っていくわけにもいかない。
公太はまだ教室に来ていなかった。
昨日の事は公太に話していない。言うほど大した事ではないから。
鈴原もまだ来ていなかった。
公太を鈴原から解放してあげたい。
公太が鈴原に付きっきりにならなくて良いようにしたい。それにはクラスの雰囲気を変えないと。
手始めに由紀からこっち側に引き込む。
私の彼氏がクラスで嫌われものなんて、そんなの我慢できない。
放課後、T中カラーギャングに召集をかけた。
理由は言わなかった。
公太が鈴原を送っていく時間は考慮した。
「山下君は塾はないの?」由紀が訊いてくる。
山下はかずくんの名字だ。
「知らない」
かずくんからはOKの返事があった。塾は初めから無かったのか、サボるのかはわからない。
連れていくのは由紀一人だ。
由紀もライバルが少ない方が都合いいのだろう。昨日一緒にいた二人には黙っていた。
ちなみに、由紀にはかずくんを紹介するとしか言っていない。後の幼馴染三人も来ることは黙っておいた。
由紀とコンビニのイートインで時間を潰したあと、いつもの近所の公園に向かう。
既に全員集合していた。みんな近所なので私服に着替えていた。
「お待たせ」私は声をかける。
「いくちゃん、やっほー!」たまちゃんが真っ先に返事を返す。「いくちゃんのお友達?」由紀に笑いかける。
由紀はかずくんだけだと思っていたので面食らう。「……、こんにちは」
「ああ、昨日の」かずくんが由紀の顔を覚えていたらしく声をかける。
「はい。昨日はありがとうございました」由紀が顔を赤らめて上ずった声でお礼を言った。
公太が驚いた顔をしている。
そして不機嫌な顔で私をにらみつけてきた。
まあ、だました様なものだからね。
由紀も公太に気づいて固まった。
言葉を失っている由紀に構わずにみんなを紹介する。
「由紀ちゃん、紹介するね。名前は由紀ちゃんも知ってるよね? T中カラーギャングのメンバーね」
固まっている由紀が驚いた顔をする。言葉は出ないようだ。
「変な名前つけんな」公太が不機嫌に吐き捨てた。
「私がつけたんじゃないよ? みんながそう言ってるだけ。だよね、由紀ちゃん?」
「……え?」由紀がやっと反応する。
「いくちゃんはT中じゃ無いから、A小カラーギャングだよね?」たまちゃんが訂正してくる。
「いや、カラーギャングじゃ無いから」公太が律儀に突っ込みを入れる。
「彼女がたまちゃん。こっちがけいくん。M工業の狂犬カップルて知ってる?」
由紀が驚いた顔をする。
「狂犬はヒドイなー」けいくんが苦笑した。「そもそもカップルじゃないし」
え? そうなの?
けいくんとたまちゃんは付き合ってるのかと思ってた。だってすごく仲良しだし、いつも一緒にいるみたいだから。
この間のケンカなんて、二人は息ピッタリだったし。
「育、飯島を連れてくるとは聞いてない」公太が怒ったように言う。
いや、怒ってるか。
由紀ちゃんが怯えたように私を見る。
私は冷めた目を返した。
「私はね! 公太が悪く言われるのが我慢できないの!」私は公太と由紀に叫んだ。
後の三人は何を言っているかわからないという顔をしていた。
「7年だよ! 7年待って、やっと公太に会えたんだよ! これからは美男美女のカップルって、ちやほやされる高校生活を送れると思っていたのに。何よこれ!」私は感情を爆発させていた。もう止まらない!
「いや、育が美女なのはいいとして……、美男って誰?」公太が覚めた顔で訊いてきた。
美男って、公太の事に決まってるよね? 少なくとも、話の流れから公太の事だってわかってるよね?
あと、私が美少女ってところは良いんだ。うん、ありがとう。
「美男って、公太の事に決まってるでしょ! 公太は前からカッコ良かったけど、もっとカッコ良くなってる! 公太、大好き!」
「お、おう……。ありがとう」
「なのに鈴原って何よ! 私というものがありながら、他の女と付き合ってるて何? 公太の浮気者!」
「いや、育と付き合ってないだろ」
「あなた達も何で止めなかったのよ!」幼馴染三人にも詰問する。
「いや、こうたくんが付き合ってるの知らなかったし」けいくんが反論してくる。
三人とも唖然としている。
「公太。鈴原と別れて!」
「いや、別れない」
「どうして?! 私の方が美少女だよね? 可愛いよね?!」
「そうだよ。育の方が可愛いよ。でも別れない」
「自分で美少女って言うんだ……。流石いくちゃん……」たまちゃんが感心したように呟く。
いらない茶々を入れないで!
たまちゃんをにらむと、怯えたように目をそらした。
「何であんな大して可愛くもない女なんかと付き合ってるの!」
「育! いい加減にしろ!」
公太に怒鳴られた……。
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