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第15話 intermission

 

 日曜日の朝。かずくんに呼び出された。

 朝ごはんを食べて出掛けようとしたところを、育に襲撃される。


「これから、かずくんと会うんだけど」

「私もかずくんに呼び出されたよ?」

 ということは、いつものメンバーが集合か。


 俺が朝ごはんを食べている間、育は俺の母親から紅茶とクッキーを出されて、それを頬張っていた。

「公太ママのクッキー美味しい!」

「公太が作ったんだけどね」

 最近、作り置いたおやつの消費量が激しい。育が引っ越して来てからな。


「育ちゃん、今度は何を食べたい?」

「んー、マカロン」


 おまっ、何てレベルの高いおやつをリクエストするんだ!

 一度作ってみたが、味はともかく食感が……。

「今度、用意しておくわね」

 母親が調子の良いことを言っている。よし、作ってもらおう。



 育と二人で少しはなれた一級河川に来た。育は俺のチャリの後ろで楽しそうだった。


 2人乗りの自転車は暑かった。もう暑い季節だ。二人分の体重を自転車で運ぶのはちょっと辛い。暑いし。

 育がくっついてくるのも暑苦しい。

 育の胸が、意外と大きい、当たってくるのも暑苦しい。

 わざと当ててるのはわかっていたので、スルーしておく。



 河川敷にいつもの三人が来ていた。

 バイクが2台。

 けいくんとたまちゃんが魔改造したバイクと、もう1台。小さめのバイク。

 特徴的なフォルムだが見たこと無い。小さいから原付一種か?


「おはよー!」育が元気に挨拶する。

 みんながめいめいに挨拶をかわす。


「で、今日は何?」俺はみんなに訪ねる。

「バイク、買ったんだ」かずくんが得意気に言った。

「おー」あ、いいな。「免許持ってたか?」

「原付だからすぐ取れた」筆記試験だけで、合格後、講習があるだけだからな。


「これ、なんてバイク? 見たこと無い」スクーターにも見えるけど何か違う。カウルがないし、フラットステップではない。


「スーパーカブだよー」たまちゃんが楽しそうに言った。

「「え?」」俺と育が被る。

「ぜんぜん違うよ?」

「改造してあるから」けいくんが得意気に言う。

 ああ、この二人か。

「けいくんと私で改造しましたー!」たまちゃんも得意そう。


「カウルか。カウルがないんだ」

「倒したときにカウルとステップが擦るからね。カウル外して、ステップも小さくしてバックステップにした」と、けいくん。

「もちろんリミッターカットして、ギア比変えて、排気も噴射タイミングも変更済み」

 コンピューターいじったのはたまちゃんか。原付で時速100キロ越えるのか?


「ボアアップもしたの?」

「それはしてない。原付免許で乗れなくなるから」真顔でけいくんが答えた。

 細かいとこで真面目だな。排気量増やして、50cc越えると原付免許で乗れない。


「ロータリーミッションだから、クラッチ系は触れなかった」たまちゃんが悔しそうに言う。「私たちのバイクはパワークラッチ入れてあるけど」

 パワークラッチ入れたかったんだな。駆動ロス無くなるけど、腕力いるよな。


「たまちゃんも免許持ってるの?」育が訊ねる。

 この前、運転してただろ。

「中型持ってるよ」400ccまで乗れる。二人のバイクは250ccだけど。


「公太も免許取ったら?」

「ん? 持ってるよ。中型」

「! 何でバイク無いの?!」

「いや、バイトしてるんだけどね。お金足りない」

「保険も未成年は高いしねー」と、たまちゃん。

「原付はファミリーバイク特約で保険料が安いから、原付にしたんだ」これはかずくん。

 流石かずくん、堅実だ。

「125ccにしたら? ファミリーバイク特約使えるし」けいくんが俺に言った。確かに125ccも特約使えるけど。

「そんなに高いの?」育は詳しくないらしい。

「10万超える。保険料だけで」バイクはけいくんが安い中古を動くように整備すると言ってくれてるんだけどな。


「公太、バイク買おうよ。2人乗り出来るやつ。で、乗せて!」育がキラキラした目で見てくる。

「育、マスコットやりたいの?」

「おー、いくちゃんなら私たちのチームのマスコットにピッタリ!」たまちゃんものってくる。

「マスコットって?」

「チームのアイドルみたいなもの?」

「タンデムシートの飾り物の事だよ」俺が釘を刺す。

「違う違う! 親分が初代総長ねー!」

「たまちゃん、それじゃ暴走族だよ」

「違うよかずくん! 爆走族だよ!あんな遅いのと一緒にしないで!」

 暴走族は遅滞運転で迷惑かけるけど、たまちゃんはスピード狂かな?


「待って、原付じゃついてけないよ」かずくんが抗議する。

「峠のダウンヒルなら行けるよ。軽量でリミッター切ってあるし、タイヤの扁平率もコーナーリング重視に変えてあるから」けいくんが言った。はじめからそのつもりで改造したみたいだ。

「じゃあ、ローリング族だね!」

 結局、族、かよ。たまちゃん、族が好きだな。


「ねえ、公太、バイク運転できるの?」育が期待する目で見てくる。

「出来るよ」法律上はね。「もしかして、腕を疑ってる?」

「ペーパードライバーでしょ?」

 まあ、そうなんだけどな。

「乗って見せてやれば?」けいくんがバイクのシートを叩いた。

「え? いいの?」乗りたい。


 けいくんからメットとグラブを借りた。

 魔改造されたバイクに股がる。

 250ccのフォーストローク。カウルの無いネイキッドバイク。

 スターターを押すとマルチのエンジン音が朝の河川敷に響いた。


 免許を取ったばかりのときにも一度乗せてもらっている。そのときはパワークラッチがいきなり繋がってエンジンストールした。


 育が見ているので、そんな恥ずかしいとこは見せたくない。

 重たいクラッチを握りこんで、シフトをダウン。アクセルを多めに開ける。

 半クラッチ。の、つもりがすぐに繋がる。回転数を上げていたのでエンストはしなかったが、ロケットスタートになった。

 前傾でフロントを押さえ込む。

 後付けのタコメーターがレッドゾーンを指す前にクラッチを切ってギアをセカンドにアップ。クラッチを繋げる。


 フロントが浮いた。


 慌ててスロットルを戻す。

 みっともない!


 河川敷の直線道路をトップギアまで上げる。後付けのスピードメーターはちょっと人に言えない数字を指していた。

 純正デジタルスピードメーターなら、数字が表示されないレベル。


 体を起こしてブレーキをかける。

 体を起こしただけでエアブレーキがかかる。

 1速まで落としてUターンした。もたつく。


 再度フルスロットルで育のところまで戻った。


「凄い凄い!」育が手をたたいて素敵な笑顔を俺に向ける。

 やめて。恥ずかしい。


 けいくんとたまちゃんは苦笑いをしていた。この二人には、俺が下手なのがわかってる。


 ニュートラルにしてからエンジンストップして、メットを脱ぐ。

「2速でフロントアップするとは思わなかった」

「クラッチ使うからだよ」たまちゃんが言う。

「いや、クラッチ切らないとギアチェンジできないだろ」

「シフトアップはスロットルフラットでギア入るよ?」

「え?」いや、教習所で習ってない。


「あと、旋回ふらついてたよね?」

「低速で体重移動しにくい」

「ハンドル切らないからだよ」

「いや、バイクは体重移動で曲がるもんだろ」

「ハンドル切るよ?」

「え? 右に曲がるときインド人を右に?」

 レースゲーム用語でインド人を右には、ハンドルを右にの意味だ。

「左に切るよ?」たまちゃんはネタをスルーする。

「え?」俺は意味がわからない。これも教習所で習ってない。

「ハンドルを左に切ると、遠心力でバイクが右に傾くんだ」けいくんが補足する。「気持ち左に当てる程度な」


 そうなんだ……。


「……、公太、やっぱりペーパードライバーなんだ……」育ががっかりした顔で俺を見る。


 ……バイク買お。練習する。




読んでくれてありがとうございます。

公道では道路交通法を遵守し、安全運転を心掛けましょう。

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