表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/59

第13話 幼馴染の彼女round5

 

 育に乱暴な手当てを受けてから、ルームウェアを着た。


 幼馴染達は帰っていった。

 みんな育に遠慮したのだろう。


「7人相手にケンカ勝てるって、あの二人おかしい」育が恐れを抱いたかのように言った。

 お前は、そのたまちゃんを泣かせかけたけどな。


 いや、ケンカしたらたまちゃんの方が強いだろうけど。


「いつもこんなことしてるの?」

「いや、いつもじゃないな。……たまに……」

 幼馴染全員が集まる事はあまり無い。



「何で学校であんなに嫌われてるの?」

「知らないよ」

「1年のときに暴れて何人か学校辞めさせたから?」

「あー、それ聞いたか」

「聞いた」

「それ、間違いだから。俺は辞めさせてない」

「暴れたのは?」

「まあ、そういう事もあったな」

「相手を病院送りにして、そのまま学校辞めたんでしょ?」

「まあ、そうなんだけど……。辞めさせたのは学校。俺はまだ学校にいるだろ。そういう事だ」学校にも警察にも事情を訊かれたけだで何もない。


「……鈴原がらみ?」

 頷く。


 育はうつむいて考え込む。そして、

「鈴原と話させて」

「いや、何話すんだよ?」

「……別れさす」

「いや、何でだよ?」

「絶対嘘じゃん。付き合ってるって」

「嘘じゃない」

「じゃあ、鈴原のいいとこ10個教えて」

「……顔?……」

「それから?」

「……スタイル?」

「それから?」

「……優しいところ?」

「いや、それ普通じゃん」

「残念ながら普通じゃない」

「あー、まっいっか。他には?」

「……一緒にいて楽なところとか?」

「どういう風に?」

「……あんまり喋らなくていいから」

「無口なだけだろ?」

「……そうだな……」


「じゃあ質問変えるね。私とどっちの顔が好み?」

「育」

「私とどっちがスタイルいいと思う?」

「育」

「優しいのは?」

「育?」

「どっちが一緒にいて気を遣わない?」

「……育」


「……どっちが好き?」

「育」

「もう私でいいじゃん!」

「お前、いなかっただろ!」

「そんなの私のせいじゃ無い!」


「……今付き合ってるのは鈴原なんだよ……」


「なら、鈴原は公太の事、好きなの?」

「……多分……」

「自信無いんだ?」

「……」

「本人に訊いてみよう。私、訊いてみるね」

「……、やめてくれ」


 俺たちはどこにも届かない言葉を投げつけあった。




「鈴原さん、話があるんだけど」

 朝の教室、私は席に着いたばかりの鈴原に声をかけた。


 彼女と一緒に登校してきた公太が、ギョッとした顔でこっちを見る。


 鈴原は私を見上げて、そしてすぐに怯えたように顔を伏せた。

 私の顔、そんなに怖い?

 怖いか……。

 今の私はスゴい顔してるんだろうな。


「おい、やめろ」公太が近づいてくる。思い詰めた顔をして。

 私が本気だとわかってビビッてるのかな。


「公太は黙ってて」

 公太は焦った顔をする。名前で呼んだからね。

「黙れ!」公太が手を伸ばす。

「公太が黙って!」


 教室が静まり返る。空気が固まる。

 公太も固まる。

 公太が混乱しているのは見てとれる。私と知り合いであることを隠したがっていたのに、もう無理だとわかったのだろう。


「おい! 育ちゃんに何してんだよ!」いつもの三バカの加藤が、いつものようにちょっかいをかけてくる。

 加藤が公太に近づいて手を伸ばした瞬間に、公太に顔面を殴られて吹っ飛んだ。


 バカな男どもは放っておく。


 私は鈴原の肩をつかんだ。


「公太の優しさにつけ込まないで。これは私の男だから。返して!」


 鈴原が驚いた顔で私を見る。やっとこっちを向いたか。


 公太が三バカと乱闘を始めた。


 公太が三バカを相手にしている間に、私は鈴原の腕をつかんで立ち上がらせる。

「来て」


 彼女は逆らわずに着いてこようとする。


「育!」公太が、鈴原をつかんでいた私の手をつかむ。

 やっと名前で呼んだね。もう隠せないと諦めたか?


 三バカは何してるの? と思ったら既に三人とも倒されていた。

 弱っわ。


「離してよ、公太!」

「嫌がってんだろ!」

「嫌がってないでしょ!」

 鈴原は着いてこようとしていた。戸惑っていても、嫌がってはいない。


 私は距離をとるため、つかまれていない手で公太の胸を押そうとする。

 これがいけなかった。

 公太は反射でカウンターを当ててきた。

 顔面を殴られる。


 公太は力をいれてなかった。単に殴られないように私の体を押そうとしただけだ。身長差があったので顔に当たっただけだ。


 でも、公太に殴られたことがショックで座り込んでしまった。

 鈴原をつかんでいた手を離す。殴られたところを手のひらで押さえる。

 呆然と公太を見上げる。


 公太は鈴原をかばうように背に隠している。


 公太も驚いた顔をして、私を見下ろしていた。


 視界が滲んで公太の顔がよく見えない……。




読んでくれてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ