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第11話 幼馴染の彼女round3


河川敷に着いた。

たまちゃんの予測通り河川敷に公太達がいた。


公太は橋台を背に立っている。ヤンキー達が公太を半円形に囲んでいる。

橋の下に続く道はない。土手を降りるしかない。

つまり誰も通らない。


公太はケンカが強いって言っても7人は相手にできないだろう。


どうしよう?


加勢する?


ムリムリ!


たまちゃん早く着て!


……、そんな早く来れるわけがない。


やはりここは通報するべきだろうか?

いや、そんなことしたらなめられる……。


公太とヤンキー達がメンチの切り合いをしている。様式美だろうか?


公太の目の前の男が殴りかかる。

それより早く公太が殴り返す。男は大振りだったから、公太の最短のストレートが男の顎を強打して、ぶっ飛ばす。


そこから乱闘が始まった。

公太は強かった。

最初に公太に殴られた男は立ち上がれない。立て続けに何人か倒す。


ケンカの格が違った。

ヤンキー達が大振りのパンチを繰り出す間に、公太は最短のパンチと蹴りを叩き込む。


だが、多勢に無勢なのはどうしようもない。公太は最初は橋台を背にしていたが、いつの間にか囲まれる。背後の攻撃もさばいていたが、何発か入れられて公太の動きが鈍くなる。


ついに公太が橋台を背に膝をついた。


しゃがんで動きが止まった公太に、ヤクザキックが襲う。


もう無理だ。


私は土手をかけ降りていた。


何やってんの、私!?


勝てるわけ無いよ?

そもそも私はケンカなんかできない。


ヤンキー達は公太を見ていて私に気づいていない。


「うおっ!」

私は公太を蹴っていた男を後ろから突き飛ばした。


そして、公太をかばうように、立ちふさがる。


「あなた達、一人相手に寄ってたかって卑怯じゃないの!」

啖呵を切っていた。


いやいや、どうすんのこれ!


ヤンキー達は呆気にとられて私を見ている。

二人は公太にやられて倒れたままだったので、私を見ているのは五人。


うん、勝てない。


「……、何にしてんのお前?」ヤンキーの一人が不思議そうに言った。


「せっかく逃がしてやったのに、何で戻ってんの?」


ほんとにさー!


口の中が渇く。足がガクガクする。

それでもにらみつける。


「後で遊んでやるから、どけよ」

退くくらいならはじめから来ない。


「誰か捕まえとけ」私が突き飛ばした男がめんどくさそうに、困惑混じりに言った。多分リーダーらしい。


一人の男が私に近付く。

私は拳を構える。

殴り付けようと思ったが手が出なかった。怖くて動けなかった。

あっさりと腕をつかまれて公太の前から引き剥がされる。そして後ろから羽交い締めにされる。


「離してよ!」

離すはずはない。


「おい、女を離せ!」公太が声を出す。顔を上げている。まだ目は死んでいない。


公太は橋台に背を預けて立ち上がった。


「まだ動けんのか?」リーダーらしい男が呆れたように言って、一歩公太に近付く。


公太はまだやる気だ。でも、体をまともに動かせない。


その時、バイクのエキゾーストノイズが響いた。


土手をタンデムのロードバイクが降りてくる。


土手をロードバイクでダウンヒル?


バイクはヤンキーの集団に突っ込んでくる。

ヤンキーは蜘蛛の子を散らすように散会した。私をつかんでいた男も、私から手を離す。


バイクは少しはなれたところで、リアをスライドさせて停止した。

黒のネイキッド。高校の制服を着た二人が乗っていた。工業高校の制服だ。後ろに乗っていた高校生がタンデムシートから飛び降りる。スカートを穿いた女子だ。

フルフェイスをとる。


たまちゃんだ。


「やっほー、いくちゃん。お待たせー」にっこりと笑った。


バイクを運転していた男子がバイクから降りてサイドスタンドを立てる。

ヘルメットをとる。


けいくんだった。


たまちゃんがメットをけいくんに渡す。けいくんはのんびりと二つのメットをバックミラーにかけた。


「M工業の狂犬カップル……」誰かが呟いた。その声は恐れを含んでいた。

「さ、やろうか!」たまちゃんは笑って駆け寄った。


一方的だった。

たまちゃんとけいくんのコンビは完璧だった。お互いの背中を守るように立ち位置を変えていく。攻守のスイッチもまるで打ち合わせた舞踏のようだった。


ケリは一瞬でついた。

ヤンキーは全員地べたに這いつくばっていた。

たまちゃんは笑いながら、這いつくばっているヤンキーに蹴りを入れている。


「たまちゃん、もうやめて!」

私が言うまでたまちゃんは蹴り続けていた。


「いくちゃん、大丈夫?」けいくんが心配そうに私に声をかける。

「私は大丈夫」一発も殴られていない。


「こうたくん、生きてるー?」

たまちゃんが座り込んでいる公太の前にしゃがむ。「ケンカ弱いのに、いくちゃん守ったんだね。えらかったね!」そう言って公太の頭をなでた。


公太は動きたくないって感じで、撫でられたまま苦笑した。


「このバイク、けいくんの?」

「そう。カッコいいだろ?」

「うるさい」排気音がうるさかった。

「マフラーとか排気まわり変えてるから」けいくんは自慢げに言った。「たまちゃんが、調子にのってインジェクションコンピユーター変更したから、むっちゃピーキー」


「えー、けいくんが調子にのって、ギア比もサスも排気も変更するから、まともに動くようにプログラム変えるのに苦労したよー」たまちゃんが笑いながら抗議した。


「何でそんなことできるの?!」

「工業高校だから!」

何言ってるのかわかんなかったけど、絶対違う。


そして、遅れてかずくんがチャリで来た。


「遅いよ、かずくん」たまちゃんがかずくんに言う。

「バイクに勝てるわけないよ。あと、免許取って1年は2人乗り禁止だから」そう言って笑った。


「ちょと位、残しといてよ」




読んでくれてありがとうございます。


ケンカシーン、少年マンガにならないように、自重した。

少女マンガも結構ケンカしてる。


感想欲しいです……。

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