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思い出してもヤバイやつだよ。
レティシアは扉がノックする音を聞きながら、恐怖で震えた。
「どうぞ」
返事をし、扉が開きゆっくりと聞こえて来る足音が、レティシアには破滅への音に聞こえてきた。
「具合はどうかな?どうしても心配だったから、迷惑かと思ったけど、待たせてもらったんだ」
困った様に微笑み、心配そうにレティシアの顔を覗くディオンに心臓が止まるかと思う衝撃を受ける。
やっぱりくっそカッコイイな、ディオン!!
漫画開始時には22歳のディオンも、まだ12歳である。
将来は時期宰相と称される程の頭脳を持ち、物腰柔らかく、親切に振る舞う反面、裏では銀色眼鏡から鋭い目線と歪んだ笑みをこぼすこととなる。
しかも、裏の顔が色気がありカッコいいと、毎回人気投票ではヒーローを抑え、1位というラスボスの鑑である。
レティシアもかなりの美少女だが、このディオンも類稀なる美貌の持ち主である。
しかも、まだ眼鏡なしバージョンというレアさ。
死への足音が遠のき、思わずだらし無い顔つきでディオンを見つめてしまう。
「心配してくださりありがとうございます。
せっかく挨拶に来てくださったのに」
「身体を大切に。
それに、これから暫くは一緒に暮らすことになるからね。本当の妹のように大切にしたいんだ」
は?
暮らす?
あれ、そんな描写ありましたっけ?いや、ない。
レティシアとディオンの関係を適当に書きやがったな!あの作者!
口をパッカリと開け放心している隣で
「あれ?聞いてなかった?
両親が領地から離れられないから、学園にはこの王都の公爵家から通うように伯母様がご配慮くださったんだよ」
あれー?なんてディオンが、はにかんだような照れ笑いを浮かべるのも、それもそれで美味しいな。
なんて思えない程、レティシアの頭は混乱していた。
まさかの
黒幕と距離をとるという選択肢は、はなから存在していなかった。