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「はい」


慌てて机の上のノートを引き出しの奥深くに入れ、ベッドへと戻り、ひと呼吸おいてから返事をする。


すると、扉から侍女のエミリーが水差しとコップの乗ったトレイを手に入ってきた。



「レティシア様、お目覚めになられましたか!

お水をお持ちしましたのでどうぞ」



「エミリーありがとう。冷たくて気持ちいいわ」



15歳になる侍女のエミリーは、昨年よりレティシアの専属侍女となった。


まだ小さい天使の様な容貌のレティシアは使用人の名前を覚え、よく声をかけるので屋敷のなかでとても人気が高かった。

故に、大事なお嬢様が倒れたということに、使用人たちはやきもきしていた。


このエミリーもまた然り、倒れた時の青白い顔色から、普段の血色の良い顔色へと戻り、安堵していた。





「奥様にもお声をかけたのですが・・・」



気まずそうに視線をそらしながら言うエミリーに、レティシアは苦笑いする。



「いいのよ。お母様は公爵夫人としてのお仕事でお忙しいのでしょう」



そう、レティシアはこの国の公爵令嬢である。

貴族の中でも、なかなかに古い歴史と地位を持ち、父である公爵は国の宰相という責任ある立場にある。


そんなレティシアの両親は所謂、政略結婚というもので、身近で見ていても仲が良いとはいえない。

顔を合わせることもほとんどなく、レティシアが生まれてからは寝室も別であるとか。


父は仕事が忙しいともう1ヶ月は顔を合わせてないし、母もレティシアと話すより、領地の視察や夫人たちとのお茶会の方が好きらしい。





今までのレティシアであれば、落ち込むところである。ずっと寂しい想いをしており、両親に好かれようと頑張っていた。

全く報われなかったが。



ところが、今や大人の事情もわかるレティシアである。


まぁ、仮面夫婦、冷めた家庭っていうのもあるものよね。





「ところで、ディオン様はどうされたかしら?

急に倒れて驚かれたでしょうね」



ディオンという存在を忘れたいが、そうも出来ないことに思わず沈んだ声が出てしまう。


その様子に、エミリーは(お嬢様は倒れたのに、他の方々を思いやれるなんて優しい方なのかしら!

とても6歳には見えないこの聡明さ。天使かしら)

なんていう斜め上の考えをし、感動で震えていた。




「ディオン様は別室でお待ちしております。

お嬢様が倒れられた時、ディオン様が抱きとめられまして。まるで劇の様で、私感動してしまいました!


かなり心配しておいでで、負担にならないようであれば、目が覚めたら少しでもお顔を見たいとのことで」




もう帰ってるかな、なんて甘い考えは通用していなかった。

しかも、倒れた時に抱きとめてくれていたとは。



「えぇ、もう何ともないからお呼びしてくれるかしら」




断りたい。

全力で断りたい。



将来の黒幕との対面に、レティシアは顔が引きつりながらも、元々が小心者である少女は否を伝えられなかった。

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