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ブックマーク、評価ありがとうございます。

「お初にお目にかかります。

コルネイユ公爵の長女、レティシア・コルネイユです。

王妃様、王太子殿下、第二王子殿下、本日はお会いでき大変光栄です。」


ドレスの両端を摘んで、礼をする姿に王妃は柔かにうなずく。


「今日は会えて嬉しいわ。噂通り、可憐なお嬢様だわ。さすがコルネイユ公爵夫人のご息女ね」

「お褒めの言葉ありがとう存じます。しかし、まだまだ足りない所ばかりでして」

「いえいえ、この歳でこんなに素敵な挨拶を出来る子はいないわ」

「まぁ!王妃様はお上手ですわ。

殿下方も益々凛々しくなりまして」


王妃と母が微笑みながらも言葉の裏に色々隠されていそうで、思わず顔が引きつってしまう。



じーっと視線が貫くのを感じ、王妃の横に目をやると黒髪の王子は視線をパッと逸らした。

その隣の金髪の王子はキラキラと碧色の瞳を輝かしてこちらを見ている。



「僕はユリウス!君、とっても綺麗だね!

ほら、兄上も挨拶!」


興味津々といった表情を現したユリウス殿下はふわふわの煌めいておる金髪を揺らしながら、にっこりと笑う。そして、隣の黒髪王子の服の裾を軽く引っ張る。

うーん、何だかこの王子様は頭の上に犬の耳が見える気がする。



「あぁ、ジークハルトだ」


視線を逸らしたまま、しかめっ面で言い放つ王太子殿下。

あまりな態度にイラッとしてしまうが、心の中で沢山の悪態をついて逆に表面上は綺麗に微笑んだ。なんて子供っぽいのだろう、王太子もこの第二王子も。



「お目にかかれて光栄です」


とりあえず、目一杯の愛想を振りまいておくか。

メインヒーローにも媚を売る方がいいだろう。

私は悪事に手は染めないですからね!敵ではありませんよー!



「あぁ」

「僕もだよ!あとでいっぱい話そうね」



うわー、見事に真逆な反応だ。

片や仏頂面、片やフワフワわんこ。



チラッと隣を見ると、王妃様と母の会話も終わったらしい。

再度礼をしてその場を辞する。



「レティシア、あとは好きにしなさい。

ただし、公爵家として正しい姿でありなさいね」

「はい、お母様」





いつもと違う柔かな母は、表情だけは笑っているが瞳の奥は随分と冷めている。

私に一言だけ声をかけると、夫人たちの集まる方向へと歩みを進めていった。



さて、どうしよう?



とりあえず、殿下方とは会えた。

それにしても、何故王太子殿下はあんなにも私に対して態度が悪いのだろう?

第二王子は好意的だったのに。


今だって、他の貴族たちには仏頂面ではあるが視線を逸らしたりはしていない。





えっ!既に何かやらかした!?




強制力ってやつ?

いや、でも漫画のレティシアは途中までは王太子の婚約者候補として仲良くしていたはず。

では、何故?




急に心配になり、ソワソワしてくる。





「お手洗いでもお探しで?」



急に後ろから声をかけられてビクッとしてしまう。

恐る恐る振り返ると、同じぐらいか少し年上の美少女が立っていた。




「いえ、王宮が初めてで緊張してしまって」

「そうなの」


真っ直ぐな深い青髪の彼女は、人形のように整った顔をニコリともしない。


「あの、私レティシア・コルネイルです」

「私はリーリエ・バリエよ。コルネイユ公爵令嬢」

「バリエ公爵家の?」

「えぇ、長女よ」


愛想は全くないが、嫌な感じはしない。

多分彼女の通常はこうなのだろう。



「嫌になるわよね。こんな面倒臭い茶会なんて」

「いえいえ」

「私は早く家に帰って本でも読みたいわ」

「バリエ公爵令嬢は本がお好きなのですね」

「リーリエで結構よ」

「ありがとうございます。リーリエ様、私もレティシアと」

「えぇ、レティシア様」



思ったより話しやすい子だな。

その後も趣味の話や最近読んだ本など会話に困ることはなかった。



淡々と話す割りに意外とポンポン話題を振ってくるリーリエにつられ、気づいたら随分長く話し込んでいたようだ。

遠巻きに同じ年頃の子たちから視線を感じるが、公爵令嬢2人という話しかけにくい状況の為誰も話しかけては来ない。





そんな時


「何を話しているの?入れてよ!」


招待客からの挨拶が終わったのか、ユリウス殿下が駆け寄ってきた。



「あら、ユリウス殿下このような場で走るなど」

「リーリエ嬢は厳しいからね」

「まぁ!」

「ごめんごめん、ちゃんと気をつけるよ」

「ところで、王太子殿下は?」



このユリウスとリーリエは随分気軽に話している。

きっと今までに何度も顔を合わせているのだろう。



「兄上はあそこ」

「あぁ、グリエッド嬢に捕まったのね。それなら暫く離して貰えないわね」



2人の言う王太子とグリエッド嬢とやらの言う方向を見る。

そこには



さっきの赤髪プンプン猫ちゃん!



グリエッド嬢ということは、彼女はシュザンヌ・グリエッド侯爵令嬢か。

王太子殿下の婚約者候補ね。だから、公爵令嬢である私を気にかけていたのね。


あの様子をみるに、グリエッド嬢はとても王太子を気に入っているようだ。

対して、王太子は彼女に掴まれた腕を嫌そうに見ている。


あんなに嫌がられているのに。

グリエッド嬢、なんてメンタルが強い子なのかしら!





あのメンタル、何とも羨ましい!



「ねぇねぇ、レティシア嬢はさ」

「はい?」


私がつい王太子たちをガン見していると、急にユリウス殿下に声をかけられて振り返る。


「レティシア嬢は兄上の婚約者候補じゃないよね?」

「えぇ、我が家は今のところ私しか子供がいないですから。婿を取るのが一番かと」

「そっか、なら僕が仲良くしてもいいよね!」


突拍子もない発言に思わず目を丸くしまう。

ニコニコしながら「今度遊ぼうよー」なんて軽く言ってくる殿下に頭がフラフラする。


確かに、このワンコ殿下は漫画にもあまり出てこないし、仲良くしても問題ない気がする。

でも、あの王太子の弟だし。


ひとり微笑みながらも、頭の中ではどうするべきなのか、と混乱してしまう。



それを聞いていたリーリエが「なら、私とも仲良くお茶しましょうね。本の趣味も合いそうだし」なんて、やっぱり表情が変わらない顔で「楽しみね」と付け足す。






ディオン兄様、親しくなれっていうのはこういうことでいいのでしょうか?

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[一言] 続き! 続きをお待ち申し上げます。
2019/12/12 13:38 退会済み
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