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その少女が、王宮の豪華な庭園に現れた時、その場にいた皆の視線がそこに集中した。

花々を背景に微笑む少女は、まるでお伽話の妖精が絵本から出てきたかのようであった。



そんな少女の心情は

非常に面倒臭い。王子たちに会いたくない。

であるが、その場にいた皆はこの可憐な少女を眺めるのに夢中であった。




「あなた・・・ちょっとあなた!聞いているの!?」


ふとレティシアが会場の隅で目立たないように思案していると、隣から声が聞こえてきたので振り返る。

そこにいたのは、真っ赤に燃えるような赤髪をキツめにカールさせてツインテールにしている猫目の少女だった。

年の頃は同じぐらいであろうか。どこかで見たような顔だけど、どこだったかしら。

うーん、覚えてないわ。


「あら、ごきげんよう」

「ごきげんよう・・・って違いますわ!」

「あら」

「あなた、変な考えはやめておきなさいね!」

「変な考え?」

「王太子殿下の婚約者を狙ってるのでしょう?」


ぷりぷりと苛立っている様子の少女に首を傾げる。

なぜ私が婚約者を狙わないといけないのかしら?

すると、少女も少し冷静になったのか不安気な顔をし始めた。


「違うの?」

「えぇ、その様には考えておりませんわ」

「だって王太子殿下の婚約者候補でしょ?」

「いいえ」


その答えにびっくりしたように目を丸くする姿も驚いた猫みたいで可愛らしい。

しかし、すぐさま目を吊り上げてビシッとレティシアに向かって指を差す。


「なら良いのよ!だったら今日は大人しくしていることね!」


そう言いながら、去っていく姿を見ながらレティシアは懐かない猫みたいね、などと感じていた。



それにしても、彼女は誰だったのかしら?

名乗る暇もなかったし、名乗らずにいってしまわれたわ。

思わず首を傾げてしまう。




そうこう考えているうちに、辺りの騒めきが一瞬で静まりかえる。





ピリッとした空気の中、現れたのは黒い生地に赤い刺繍のドレスを纏った王妃様であった。

後ろを歩くのは黒髪の少年と金髪の少年であった。


あの黒髪!



あれがメインヒーローね!


レティシアは将来の王太子の姿を思い浮かべる。

真っ黒い髪に紅い瞳、先祖返りと言われるほどの魔力の強さ。

常に無表情で近寄りがたい姿であるが、その整った顔立ちと王太子という立場で漫画では婚約者候補たちがライバルとして立ちはだかる。


うん、確かに面影はあるわね。




まぁ!あんなに不機嫌そうに。

一国の王太子があんな態度でいいのかしら?


出掛ける間際にかけられたディオンからの言葉を思い浮かべる。

この空間は戦場・・・。


よしっ!


レティシアは王妃の元へ挨拶をする順番を待つため、母の隣へと移動した。

母は家での様子と違い、レティシアを見遣ると慈愛に満ちた笑みを浮かべた。



「あら、レティシア」

「お母様」

「さぁ、王妃様と殿下方の所へ参りましょう」


ゾクッ


何だこれ。子供を愛しむような母の姿は家での母の姿と一致しない。




これが戦場ってこと・・・ね。




レティシアは背中に冷えたものを感じるが、表情には一切出さずに一歩ずつ前へと歩みを進めた。



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