表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

11

父と母もまもなく食堂にやって来て、レティシアに一瞥もすることなく席につく。

 

食事を開始しても、会話は父とディオンのみ。

予算案や橋の改修工事についての議論を交わすばかりであったが、父はいつものしかめっ面よりは幾分機嫌が良さそうであった。


「あの議案書の違和感に気づくとはな、流石だ。

ディオンは今年高等部1年か。  

学園での成績もトップを譲ったこともないそうではないか。


そろそろ学園の合間に私の補佐で勉強するのも良いかもしれんな」


「ありがとうございます。

伯父上からは学ぶことが色々ありますから、何でも勉強と思い経験させて頂ければ嬉しいです」



「はは、頼もしいな」



ディオンが来てからというもの、父が家族との夕食の席に着くことも増えた。 

といっても会話はディオンのみで、娘など興味の対象外であるが。


この国では、女性は爵位を受け継げずいくら優秀であっても意味がない。


娘はいかに優秀な婿を迎えるかの道具に過ぎない。一族筋から魔力の高い子など能力が高い子がいれば養子にすることも考えているだろう。



レティシアは魔力こそ平均より少し多めぐらいであるが、珍しい治癒魔法が使える。

そのため、漫画では王家から王太子の婚約者候補の1人に収まっていた。


父としては、一族から優秀な養子を迎えることが出来れば王家との繋がりが出来るため、政略結婚としては最適の相手だ。


逆に養子に迎えるような子がいなければ、候補は3人程いるので候補を辞退し、父の見繕った相手を婿に迎える予定だったのであろう。





漫画のレティシアはディオンの命令通りに全て動いていたこともあり、全て流されるままの性格だったのではないだろうか。


両親から無視され続けていれば無理も無いのかもしれない。

母としては、男子を希望していたのだろうし。  

自分の娘より、甥を可愛がっていることからも伺える。


それに、レティシアが生まれる前に亡くなった父の母、つまりレティシアの祖母の容姿はレティシアにとても似ていたそうだ。


綺麗な顔に似合わず、家の中では苛烈な性格をしており母は随分いびられていたと聞く。

それもレティシアを可愛がれない理由なのかもしれない。



ちなみに、レティシアは両親を攻略しようと、可愛く甘える作戦をしたことがある。


まーったく効果なしであったが。

全く、とんでもない両親だ。




そんなことを考えていると、「レティシア」と

珍しく、母から声をかけられる。


「は、はい」




「あなた、明日のことはわかってますね」




「明日?ですか・・・」



急に話しかけられ、口に入れていた肉を思わず丸呑みしてしまう。

また、言われた内容に心当たりもなく不思議そうに母を見つめると、母はあからさまにため息をつく。





「随分前に言ったでしょう。ドレスも新しく作ったばかりなのに。


明日は王妃様のお茶会です。殿下方も参加するのですから粗相のないように」





急に爆弾を落とす母






全然、ぜんっぜん聞いてないけどな!


そういえば、少し前に贔屓のデザイナーがやたらと気合いの入ったドレスを作ろうとしてたな。


これか。





「殿下方といえば、王太子殿下は今年10歳とレティと同じ年だね。第二王子も8歳か。


同年代の貴族子息や子女達も集まるだろうから、レティの友達も出来るといいね」



朗らかな笑みで言うディオンであるが、レティシアの頭はかなり混乱していた。





王太子・・・




全く存在を忘れていた、メインヒーローではないか。


この人を害そうとしたことで、結果レティシアが死ぬんだから、死の要因ではないか!




とにかく、計画を練らなければ。


レティシアは詳細を全く知らせなかった母に心の中で悪態をつきながら、優雅に食事のスピードを2倍に早めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ